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歯周膿瘍の治療法とは?~たまった膿を排出する処置のほかに“歯周基本治療”も大切~

歯周膿瘍の治療法とは?~たまった膿を排出する処置のほかに“歯周基本治療”も大切~
中島 純子 先生

東京歯科大学市川総合病院 歯科口腔外科

中島 純子 先生

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歯周膿瘍(ししゅうのうよう)とは、歯周ポケット(歯と歯肉の境目の溝のこと)の入り口が閉鎖されてしまうことで歯肉などの歯周組織にがたまった状態をいいます。これは中等度~重度の歯周炎*患者で見られることがある急性の症状です。主に歯周病などによって歯周ポケットに細菌が侵入し、それらが感染を起こすことで発症します。この状態を放置すると、歯を支える骨などに影響が及ぶこともあり、歯の機能が失われてしまう可能性もあるため、適切な治療を行うことが大切です。

*歯周炎……歯肉炎が進行したもので、歯を支える骨にまで炎症が広がっている状態

歯周膿瘍の治療法としては、たまったを排出する処置と、必要に応じて抗菌薬の使用などが行われます。さらに、細菌感染の原因となっているプラーク(歯の表面についた細菌の塊)や歯石の除去に加えて、歯周病を改善させるための歯周基本治療も行う必要があります。

歯周膿瘍治療では、主にがたまった部分を切開して膿を排出し、洗浄します。また、膿を出す経路が十分に確保できない、または腫れている部分の痛みが強い、発熱があるなどの場合は、抗菌薬を内服する必要性が生じることがあります。一般的に抗菌薬は、ペニシリン系、マクロライド系が使用されることが多いです。これらの中から患者の状態や体質を考慮して適切なものが処方されます。

  • ペニシリン系……細菌が自身の細胞壁を壊す自己溶解酵素(自らを分解する酵素)を活性化することで細菌の増殖が抑えられ、さらに浸透圧の差によって殺菌されると考えられている薬。
  • マクロライド系……たんぱく質の合成を抑制することで、細菌の増殖を抑える効果が期待できる薬。

歯周基本治療では、まず歯磨きの指導が行われます。歯磨きによってプラークを取り除くことができると、歯周組織の炎症が減少し、柔らかく出血しやすい状態になっていた歯肉も引き締まるほか、歯石も見えやすくなるため歯石除去が行いやすくなります。歯石の中には細菌が多く存在しているため、歯石除去によってさらに細菌を減らすことができるとされています。

また、プラークが付きにくく取りやすい良好な口内環境にするために合わない詰め物やかぶせ物などを取り除いたり、歯や歯茎の負担を減らすために異常なかみ合わせを調整したりする必要があります。

これらの治療が終わった後も定期的なメインテナンスを受ける必要があります。メインテナンスでは、歯磨きがきちんとできているかの確認、歯肉や歯周ポケットの状態の確認、歯石やプラークの除去、詰め物やかぶせ物などの状態の確認、かみ合わせの確認などを行います。

歯周膿瘍が生じた場合、まずたまったを排出させたり、抗菌薬を使ったりしますが、根本的な改善や予防のためには、原因に対する治療が必要です。そのため、歯周膿瘍が消えたから治療は終了というわけではなく、ブラッシング指導、歯石やプラークの除去をはじめとした歯周病治療が必要です。また、治療が終わった後も適切な歯磨きや定期的なメインテナンスを心がけ、再発を予防する必要があります。治療や予防に対して不明点があれば、医師に相談するとよいでしょう。

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