歯は、生活の上で欠かせない食生活を担う組織です。前の記事「歯周病とはどんな病気か。食生活やライフスタイルの変化で発症する方が増えている」では、歯を支える歯周組織が歯周病になると、歯だけではなく、全身に病気を引き起こすことをご説明しました。
今回の記事では、引き続き誠敬会クリニック内科・歯科会長の吉野敏明先生、同じく誠敬会クリニック誠敬会クリニック内科・歯科理事長の田中真喜先生に、歯周病の原因や症状、歯周病の検査についてお話をうかがいます。
歯周病の一番の原因は、口の中にいる細菌が歯の表面にくっついて増えてしまうことです(デンタルプラークといいます)。
意外に思われるかもしれませんが、デンタルプラークは半日もあれば繁殖します。朝、歯を磨いた後、お昼ごろに歯の表面をつまようじなどでこすってみてください。おそらく黄色い粘り気のある物質が付着すると思います。これがプラークです。プラークは細菌の塊なので、歯や歯肉の表面に長い時間付着していると、虫歯や歯周病を引き起こします。
プラークによって引き起こされる炎症は、悪い生活習慣などの因子が重なることによって、さらに悪化します。
歯周病は、口腔内に発生した歯周病原菌によって引き起こされる病気(感染症)です。したがって、外部からの唾液感染によって歯周病原菌に感染することは、歯科医師の間で定説になっています。
お母さんが口にしたスプーンなどで、自分の子どもに食べ物をそのまま食べさせたり、幼稚園などでコップを回し使いしたりすることで、感染の可能性が増えることがわかっています。家庭用の消毒薬や薬用石鹸でこまめに消毒する方がいますが、歯周病の原因菌は死滅しません。そのようなことをするよりも、お子さんと食器を分けるほうがよいでしょう。
ただし、幼児期に感染する菌は、歯周組織にあまり影響を及ぼしません。それよりも20歳代前後の性行動が盛んな時期を迎えると、異性との接触などで唾液感染により、悪性の菌種が感染しやすくなるといわれています。
歯周病の直接的な原因は、歯磨きをきちんと行わなかった結果、細菌の塊であるプラークが口の中に増えることにあります。しかしながら、同じように歯磨きをしていても、患者さんの歯周病の重症度が違うことから、遺伝的な要素も原因の一つではないかと考えられ始めました。現在では、遺伝子の異常によって歯周病を発症しやすくなる方がいることがわかっています。したがって、歯周病にかかりやすい体質の方は、歯科医師の定期的な診察を受けながら、日々の歯磨きや口腔ケアを行うことが重要です。
タバコに含まれるニコチンやタールなどの化学物質は、歯肉の血液の循環を妨げるため、口腔内の歯周病原菌が繁殖しやすくなり、歯周病が悪化しやすくなることがわかっています。
タバコ以外に歯周病を引き起こしやすくなる原因としては、特殊な薬を服用している場合があげられます。たとえば、てんかんの薬や血圧降圧剤を服用されている場合、歯磨きをきちんと行わないと、歯周病を引き起こしやすくなることがあります。
歯周病にかかった場合、初期の状態では必ずしも痛いとは限りません。ただし歯肉がかゆかったり、むずむずしたりする感じを引き起こす場合もあります。また、軽く出血はするものの、痛みを伴わない場合も珍しくありません。
病状が進行すると、やがて「歯肉の腫れ」、「物をかんだ時の痛みや違和感」「歯肉からの出血・排膿(膿が出てくること)」「歯のぐらつき」などの症状が現れます。このような口腔内の異変に気づいたら、できるだけ早く歯科医師の診察を受けることが大事です。
歯周病がない健康な方でも口臭は起こりえます。しかし、歯周病に罹った方の口臭が通常よりも強くなることは、多くの歯科医師が実感するところです。口臭の原因物質は主に硫化水素(H2S)・メチルメルカプタン(CH3SH)・ジメチルサルファイド((CH3)2S)ですが、歯周病の患者さんは、このうちメチルメルカプタンの発生量が多くなるとされています。ですから口臭が強くなった際は、歯周病が悪化していないか、歯科医師の診察を受けることが重要です。
歯の黄ばみは、歯周病によって起こるわけではありません。もともと、生まれつき歯が若干黄色みを帯びた方がいます。
ただし、著しい歯の黄ばみは、食べ物や飲み物の色素が着色したもの・抗生物質などの副作用・そしてタバコのヤニの付着などが原因だと考えられます。これに加えてもっとも注意すべきなのは、プラークが唾液などに含まれるカルシウムによって固まった「歯石」です。歯の色が以前より黄色くなったと感じたら、歯科医師の診察を受け、適切な処置を行ってもらうことで、歯周病を予防したり、早期の治療を開始したりすることができます。
口内炎は、ウイルスによって引き起こされるものが大多数です。したがって、歯周病と口内炎は分けて考えるべきです。一般的に、疲労がかさんだりして、体の抵抗力が落ちた時に、口内炎は症状がひどくなりやすいですから、安静にしたり睡眠時間をしっかり取るなど体調を整えるよう努めることが大事です。
ただし、ベーチェット病のように、口腔内以外の原因で口内炎が発生することもあります。口内炎の症状のみで原因が何かを特定することは難しいため、口内炎の症状が続く際は、医師や歯科医師に相談してください。
歯周病が進行すると、腫れや痛みなどの症状が出てきます。歯肉から起こった炎症が歯槽骨や歯根膜を侵食し、最終的には歯の機能が失われてしまいます。歯を支える歯槽骨の働きが弱ってしまうため、入れ歯に頼らざるを得なくなります。ここまで進行すると歯が自然に抜け落ちてしまうこともあるし、抜けていなくてもボロボロになった歯は抜歯しなければならなくなります。
歯科医師は、歯周病の患者さんに対して、以下のような検査を行うことが一般的です。
歯茎がどのくらい腫れているのかを検査します。併せて、歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)の深さを計測し、歯茎からの出血や排膿、歯のぐらつきがないかを調べます。
歯を支えている骨がどのような状態なのか、エックス線写真を撮影して調べます。
歯肉の腫れを確認したり、評価したり、かみ合わせの状態を把握したりするために、口の中の写真撮影や模型製作を行います。
歯周病が起こるのは、歯周ポケットにたまったプラークによる細菌感染です。必要に応じて、歯周ポケットにいる細菌を採集し、どのような菌が繁殖しているのかを調べます。
記事1:歯周病とはどんな病気か。食生活やライフスタイルの変化で発症する方が増えている
記事2:歯周病の原因とは? 歯周病に関する様々な疑問を解明
記事3:歯周病を予防するポイントは? 長く健康な歯を保つための工夫
記事4:どうして歯周病は危険なのか? 歯周病を放っておくと引き起こす可能性がある合併症とは
記事5:歯周病の治療。スケーリングから外科的手術までを解説
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