春日井市民病院は、名古屋市の北東部に位置する春日井市立の公立病院です。地域の医療機関と密接な連携がある同院は、人と人との直接的なつながりを大切にしています。医療でも経営でも地域の方のためにさまざまな面から努力する同院について、院長の成瀬 友彦先生にお話を伺いました。
春日井市民病院は愛知県春日井市の公立病院であり、昭和26年に42床の病院としてスタートしました。
現在は、550床22診療科を有する地域基幹病院として、地域の皆様一人ひとりの健康維持に尽力しています。超高齢化社会となった現在、治療だけでなくその後の“支える医療”もニーズとしてあり、それぞれの診療科での高度で専門的な医療の提供とともに様々な面で工夫した病院サービスを提供しています。
また、公立病院は感染症やへき地医療などといった政策医療を受け持つ特性があることから、経営面でも一層の努力が必要になります。当院が地域医療を支える一員として十二分に力を発揮できるよう、地域のつながりや経営面においても力を尽くしています。
当院は救命救急センターを持つ3次救急医療機関として、一般の救急医療機関では対応が難しい重篤な救急患者さんを受け入れています。近隣の市町村や岐阜県といった遠方からの搬送もあり、昼夜を問わず高度な医療を提供できる体制です。
当院は“断らない救急”をモットーとし、その応需率は最大99%以上、年間約9,000~10,000件の受け入れ数です。
また、病院に到着する前の救護体制の強化にも力を入れていおり、救急隊員との症例研究会や救命救急士への技術指導などを定期的に行っています。
当院の特徴の1つとして、小児アレルギーセンターの開設があります。
近年、アレルギーを持つお子さんが大変増えてきました。春日井市の“子はかすがい(鎹)、子育てはかすがい(春日井)”という取り組みに当院も賛同し、尾張地区では初の専門センターとして2023年に開設しました。
当センターはアレルギー専門医の他、アレルギー専門の知識・資格を持つ看護師や管理栄養士によるチーム制で診療をしています。とくに食物アレルギーに対して重点的に組んでおり、日帰り入院での経口負荷試験など日々多くの診療を行っています。
また、当センターは愛知県でも数少ない日本アレルギー学会専門医教育研修施設として認定され、専門医の育成にも力を入れています。
地域の皆様が住み慣れた土地で安心した生活を送れるようにするために、地域のかかりつけ医の先生方と連携して地域完結型の医療を提供することが重要と考えています。そのため当院は“顔の見える連携”を柱にし、地域連携スタッフがご挨拶に伺ったり、地域の先生方との交流会を開催したりしています。
交流会は前院長・渡邊有三先生の時代から毎年開催しており、大変ご好評いただいています。コロナ禍時期は開催できませんでしたが、年々参加者数も増え、2023年は130人もの方にご参加いただきました。
先生同士で高校の先輩・後輩だったり同郷だったりと、盛り上がることもあるようです。当院からも医師が60人ほど参加し、地域の先生方へご挨拶をさせていただいています。
どういったことができるのか、どんな考えで医療を提供しているのか、大切な患者さんを託せる存在なのかどうか、お互いを直接知ることができるよい機会となればと考えています。
当院の前期研修医枠は10名で、しっかりとサポートをして実りある研修になるようみんなで育てていく文化があります。
また、当院は救急をおろそかにしないというポリシーのもと、たくさんの症例にあたることができます。2年間の研修期間でめきめきと経験と力をつけ、その後の本格的な医師活動では自信をもって取り組むことができると考えています。
医師も人間ですから、新卒最初の仕事は大変に感じることと思います。しかし研修期間が終わるころには、救急車が来ると勝手に体が動くような百戦錬磨の研修医へと育つでしょう。
生の現場を数多くこなすことにより、教科書では学べないことが身につくこともできます。それは経験値となり医師の技量にもつながります。もちろんそれなりに忙しい病院ですが、経験においてもつながりにおいても、これからの医師人生において益の多い研修現場であると自負しています。その分オンオフをはっきりさせた勤務体制で、忙しい時は忙しい、オフはしっかり休むという切り替えがしやすいのも当院の特徴です。
患者さんや地域への貢献につながる人材育成において、当院ではスタッフへの投資を惜しみません。
“いい医師”、“いい医療従事者”とはどういう人を言うのか。それぞれの立場で受けとり方も違うため、一面だけで見るのは難しい職業です。基本的には、私が医師全員とお話しするようにし、直接現場を見、直接知るようにしています。
働き方改革の施行や男性医師が育休取得するなどの社会変化でも、現場が円滑に回るよう院長として心を砕いています。立場的に大変なこともありますが、現場の皆さんに気持ちよく働いてもらえるよう力を尽くしています。
医療とは直接は関係ないですが、当院が力を入れている部分として病院経営もその1つです。
地域の医療インフラとしての公立病院は、採算の合わない分野を引き受ける必要があるため赤字経営に陥ることも珍しくありません。経営的に不採算でも部門をなくすことはできませんから、他で稼ぐ方法をなんとか見つけるしかありません。
当院もかつては赤字でしたが、DPC(病名や治療内容に応じて分類し費用を定めた医療費の計算方式)を導入して日々の診療をデータで可視化し、無駄な費用がかかっているところはやり方を変え、節約できるところは節約をし、公立病院としてはあまりみられない黒字化に成功しました。これは医師だけではなく、コメディカルや事務職員も含め病院全体で努力した結果だと考えています。
また、浮いた費用で必要なことには惜しまず使うつもりです。特に重視したいのは人への投資です。こういった経営の取り組みが注目されたのか、数年前から他地域の公立病院との経営の勉強会を開くことになり、お互いに切磋琢磨して実を結んでいることは当事者の1人として大変うれしいです。
努力をして改善できるところはしっかり取り組み、1組織としても地域に貢献したいと考えています。
当院は、患者さんやご家族の笑顔のために力を尽くし寄り添う、そんな病院でありたいと願っています。
また、当院には強い連携で協力関係にある医療機関がたくさんあります。おかしいなと思ったら、まず当院に相談してもらえれば、最適な病院をご紹介することも可能です。病院同士のネットワークで、患者さんの状態にあった最適な医師へ直接紹介できるのは患者さんにとっても簡単でメリットが大きいと思います。そのような、地域の方の第一想起になれる病院でありたいと考えています。
これからも地域医療の向上にスタッフ一同力を尽くしてまいります。
春日井市民病院 腎臓内科 院長
成瀬 友彦 先生の所属医療機関
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。