院長インタビュー

高齢者救急と周産期・小児医療の両輪で、地域に寄り添う病院へ――神戸徳洲会病院の取り組み

高齢者救急と周産期・小児医療の両輪で、地域に寄り添う病院へ――神戸徳洲会病院の取り組み
メディカルノート編集部  [取材]

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神戸市垂水区にある神戸徳洲会病院は、高齢者救急と周産期・小児医療という2本柱で地域医療を支える急性期病院です。高齢化が進む地域で、介護施設などと連携した“プレホスピタルケア搬送”を24時間体制で実施し、医師や救急救命士が自ら現場に出向くなど、顔の見える連携を重ねています。

医療安全を最優先に掲げ、地域完結型医療の実現を目指す同院の取り組みについて、院長の尾野 亘(おの わたる)先生にお話を伺いました。

当院は、神戸市垂水区にある急性期病院です。この地区は神戸市の中でも高齢化が進んでおり、救急で運ばれてくる患者さんの多くが高齢者です。

一方で、垂水区は人口約21万人と大きなエリアですが、分娩ができるのは当院を含めて2施設のみです(2025年10月時点)。“地元で出産をしたい”という地域のニーズに応えられるよう、出産後の小児医療も含めて切れ目なく支えられる体制を整えています。

高齢者と新生児――両端の世代を支えることが、当院の最大の特徴です。地域から求められる医療を、必要なときに提供できる病院でありたいと考えています。

垂水区には介護施設が多くありますが、夜間など人手が少ない時間帯に入所者さんが急変すると、救急車を呼ぶにも同乗者を確保できず困ることが少なくありません。そうした背景を受けて、当院では“プレホスピタルケア搬送”という仕組みを整えました。施設から電話をいただくと、当直医の判断で当院の救急車が直接迎えに行き、必要に応じて当院で診療・治療を行います。

24時間365日対応で動いており、救急救命士は12名在籍中(2025年10月時点)です。連携施設や地域のクリニック、在宅医療の患者さんも受け入れています。患者さんも施設も安心できる仕組みとして、今後もこの搬送体制を守っていきたいです。

介護施設との信頼関係づくりは、制度や契約だけでは成り立ちません。顔の見える関係を築けるよう、私自身も多くの施設へ足を運んでいます。また、当院がこれまでプレホスピタルケア搬送でお迎えした施設を対象に、意見交換会も開催しました。
ソーシャルワーカー、看護部長、事務長らと一緒に「もっとこうしてほしい」という現場の声を直接伺う場です。
単に“患者さんを受け入れる”だけでなく、“お互いの事情を理解し合う”――その積み重ねこそが、地域での信頼を築いていく道だと考えています。

2024年9月から、産科の常勤医師が2名になりました(2025年10月時点)。もう少し増員できればより安定すると思っています。さらに、来年(2026年)からは“和痛分娩(麻酔で痛みを和らげる分娩)”を導入予定です。

新しい医療行為を始める際は慎重さが欠かせません。多職種によるプロジェクトチームを立ち上げ、シミュレーションを何度も繰り返し、記録を残したうえで承認を得るというプロセスを必ず踏んでいます。安全性を担保しながら、新しい試みに挑む姿勢を大切にしています。

また、当院では出産直後から小児科医が赤ちゃんの主治医になる体制を取っています。この連携体制は、産科と小児科の垣根を越えて母子を一体的に支える強みとなっています。“産んで終わり”ではなく、“生まれてからもずっと支えていく”のが当院のモットーです。

当院の助産師が垂水区民センターに出向き、ベビーマッサージ教室や育児相談を開催しています。ここで出産された方はもちろん、他院で出産された方でも参加いただけます。
顔見知りの助産師と再会したり、同じ地域で育児をする仲間と出会えたりする場にもなっています。

また、病院公式ページもありますが、産科では独自にInstagramを開設しており、教室の様子や妊婦さん向けの情報を発信しています。SNSを通じて、病院の“人の顔”が見える発信を今後もっと増やしていければと考えています。

*病院公式 Instagramはこちら

*神戸徳洲会病院レディース病棟(産婦人科)のInstagramはこちら

当院に赴任して最初に感じたのは、“医療安全の意識が更新されていない”ということでした。そのため、着任後はまず行政や看護部の力を借りて医療安全体制を一から見直しました。特に看護部の意識改革が大きな鍵でした。

また、医師の入れ替わりもあり、結果的に現在の神戸徳洲会病院はまったく新しいチームになりました。医療安全や患者さんへの対応など、全員が同じ方向を向いて取り組めるようになり、職員全員が“安全で質の高い医療を提供する”という共通の目標を持っています。

現在、病院機能評価の結果を待っていますが、受審に至るまでの過程こそが成長の証だと思っています。今後は、研修指定病院への復帰も目指していきたいです。

今後は医療と介護の連携をさらに深め、地域で完結する医療を実現したいと思っています。
介護施設や地域の方々が“困ったときはまず神戸徳洲会病院へ”と思えるような関係性を築いていくこと、それが私たちの使命です。

また、現在は病床を段階的に増やしており、2026年1月には180床となり、最終的に224床まで開ける予定です。来年(2026)年には40周年を迎えるので、この節目に“病院祭”の開催なども計画しています。

今の神戸徳洲会病院は、医療安全と質の向上を最優先に取り組む病院です。
“当院でできること”“できないこと”を明確にし、必要な場合は速やかに他院へ紹介できる体制を整えています。

スタッフの雰囲気や病院の空気感を感じていただければ、“ここなら安心して受診できる”ときっと思っていただけるはずです。
地域の皆さまとともに、これからの神戸徳洲会病院をつくっていきたいと考えています。

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