大阪府堺市北区に位置する大阪ろうさい病院は、2025年1月にグランドオープンを迎えた新病院を拠点に、専門的で高度な医療や、救急を含む急性期医療を提供する病院です。また、がん相談支援センターや緩和ケアなど、患者さんやご家族を支える体制の充実にも力を入れています。
地域の方々に愛され、信頼される同院がよりよい医療提供のために目指す今後の展望について、院長の平松 直樹(ひらまつ なおき)先生に伺いました。
当院は、堺臨海工業地帯の発展に伴い1962年に開設されました。開設当初は512床10診療科という規模でしたが、少しずつ病床や診療科を増やし、現在は678床26診療科の体制となっています。当院は、全国各地にある“労災病院”の1つであり、地域医療支援病院や地域がん診療連携拠点病院などさまざまな認定や指定を受けています。
当院は2022年に新病院へ移転し、新たな病院として生まれ変わりました。新病院では、専門的な医療のさらなる拡充、救急医療を含む急性期医療の充実が図られています。ハイブリッド手術室*を含め、16室を有する広大な手術エリア(3,200m2)では日々、高度な手術や、ロボット支援下手術など低侵襲(ていしんしゅう)手術をはじめとした多種多様な手術が行われています。また、救急センターは2床から6床へ増床し、当直の体制も強化しました。さらに集中治療室が28床へ倍増したことで、患者さんにとってより安心かつ安全な診療を目指せるようになりました。
また、当院は地域がん診療連携拠点病院として、がん医療の提供に力を入れています。がんセンターでは、胃や大腸、肝胆膵領域のがんなど消化器のがんをはじめ、泌尿器や婦人科領域、頭頸部(とうけいぶ)や歯科口腔(しかこうくう)などさまざまな領域のがん診療を行っています。
さらに当院は地域医療支援病院でもあることから、地域医療との連携もより強化しています。
*ハイブリッド手術室:手術台とX線撮影装置を組み合わせた手術室。
当院の特長の1つとして、職員に根付く“大労愛(だいろうあい)”の精神が挙げられます。大労愛とは、文字どおり“大阪ろうさい(労災)病院への愛”という意味ですが、職員をはじめ地域の方々も本当にこの病院を愛して、信頼してくれていると感じることが本当に多いです。
もちろん私自身もこの病院が好きで、8年前に赴任して間もなくより、ずっとこの病院で働きたいと考え今にいたっています。当初は、“ジャイアンツ愛”でもあるまいし、と思っていたのですが……(笑)。
もともとこの堺は地域を愛する気持ちが強く、地域の中核的な病院である当院に対しても「何かあったらろうさいに行く」「ろうさいであかんかったら仕方がない!」とまで思ってくれる患者さんが非常に多くいらっしゃいます。そして、当院で働く多くの職員がこの地で生まれ育った方であり、こうした中で大労愛が生まれています。
大労愛のもと、当院ではこうした職員を中心に多くの人たちが、何のかけひきもなくただただ“患者さんのために頑張ろう”、“この病院をよくしよう”と日々活動してくれています。こうした精神があってはじめて、“本当に患者さん本位のヒューマニズム溢れる医療”が展開できると考えています。
当院が掲げる信条は以下のとおりです。
(大阪ろうさい病院の信条)
・どんな患者さんにも受診を希望していただける病院
・心のこもった患者さんにとって最善の医療を行う病院
・どんなことでも相談できる病院
・不治の病であっても信頼して安心して心と体を預けていただける病院
こうした病院像を目標に掲げ、日々の診療に取り組んでいます。
私たちが目指しているのは、単に病気を治療するだけの病院ではありません。まずは、この病院がどのような医療を行っているのかを患者さんに知っていただき、そのうえで受診していただける病院でありたいと考えています。
また、治療を行うだけでなく、困ったときには患者さんやご家族がいつでも相談できる病院でありたいと思っています。
さらに、がんなどの病気と向き合う場面においても、安心して信頼し、体と心を預けていただける病院であることが私たちの目標です。
当院は開設から今年(2026年)で64年になりますが、その歴史の中で、先人たちの絶え間ない努力により幾多の古き良き伝統が築き上げられてきました。こうした伝統を基盤とし、さらなる発展のために、“病院革命 Hospital Innovation”をスローガンに、特任院長(西野 雅巳先生)の協力を仰ぎながら、患者さんによりよい医療を提供できるよう、スピード感をもって改革を進めています。
改革を進めるうえで大切にしているのは、職員全員が病院の現況と目指す方向性を共有することです。当院では、職種や部署を越えて情報共有を行い、病院全体が同じ目標に向かって力を発揮できる組織づくりに取り組んでいます。
また、患者さんへよりよい医療を提供するためには、職員がやりがいを持って働ける環境も欠かせません。私自身もできる限り現場へ足を運び、職員とのコミュニケーションを大切にしながら病院づくりを進めています。
私たちが大切にしているのはがんの治療だけではありません。
患者さんやご家族は、診断を受けたときや治療方針を考えるとき、あるいは治療中や治療後の生活の中でさまざまな不安や悩みを抱えていらっしゃいます。そのようなときに気軽に相談できる環境を整えることも、地域がん診療連携拠点病院の重要な役割です。
当院のがん相談支援センターは、治療や療養生活に関するさまざまな相談を受けています。また、緩和ケアについても早い段階から介入し、患者さんやご家族の身体的・精神的な負担の軽減に努めています。
これからも当院は、がん治療の内容だけでなく、治療と仕事の両立や療養生活に関する悩みまで含めて支援できる体制を整え、患者さんとご家族に寄り添った医療を提供してまいります。
また、がん啓発の一環として年に一度“ろうさい市民がんフォーラム”を開催しています。コロナ禍でも努力と工夫をしながら開催を続け、2026年で10回目の開催となります。 このフォーラムは、当院の近くにある大阪労災看護専門学校の講堂を借りて開催するのですが、準備から片付けまで全て職員が担当して行っています。この準備の際にも私は職員の大きな“大労愛”を感じたのですが、みんな“市民の皆さんにがんの啓発をする”という目的に向かって生き生きと活動し、こうした大きな目標に向かってみんながワンチームになれることをとても誇りに思っています。

私の座右の銘は、イギリスの詩人オーデンの言葉 “見る前に跳べ leap before you look”です。新しいことに挑戦するとき、最初が非常に重要です。もう少し様子を見てからやろう、ゆっくり落ち着いて調べてからやろうなどと、悠長に考えていたら、いつまでたっても前に進みません。そのうちに跳ぶことがおっくうになり、チャンスを逃し、時代に乗り遅れてしまいます。
したがって、限られた時間で準備をし、リスクを怖れず跳ぶことを職員のみんなにすすめています。もちろん、それでけがをすることや失敗することもあるでしょうが、そこから学び、改善し、再び挑戦することが大切です。そうした積み重ねが、新たな発展につながると考えています。
このように、この激動の時代に、患者さんによりよい医療を提供するためには、“見る前に跳べ”を実践し続けることが必要だと考えています。
一方で、私たちが目指しているのは、単に病気を治療するだけの病院ではありません。新病院への移転を経て診療体制や設備はさらに充実しましたが、それ以上に大切なのは、患者さん一人ひとりに寄り添う姿勢です。これからも“大労愛”の精神のもと、職員がワンチームとなって、地域の皆さんに必要とされる病院であり続けたいと思います。
病床数や診療科、医師、提供する医療の内容などについての情報は全て2026年6月時点のものです。
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