概要
カルベ扁平椎とは、ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)によって扁平化した椎骨のことを指します。ランゲルハンス細胞組織球症は、組織球などが骨に浸潤することで、さまざまな部位の骨に破壊を引き起こす病気です。
脊椎は、7個の頚椎、12個の胸椎、5個の腰椎で構成されており、一つの椎骨は体の支柱のようなはたらきをする丸く厚みのある椎体と脊髄が通る脊柱管、関節突起などから形成されています。椎体は年齢によって厚みは異なりますが、カルベ扁平椎は、この椎体がLCHの浸潤によって破壊され、薄く平らな状態となったものです。
原因
カルベ扁平椎は、ランゲルハンス細胞組織球症により好酸球や組織球が椎体に浸潤し、骨破壊を生じることが原因です。
LCHを発症するメカニズムは明確には解明されていませんが、免疫調節の異常が原因との説や腫瘍の一種であるなどの説があります。その他にも、外傷やアレルギー、寄生虫感染など、さまざまな原因が考えられてきましたが、未だ確実な原因は不明であり、今後の解明に期待が持たれています。
症状
首から腰にかけては24個の椎体がありますが、カルベ扁平椎はどの椎体でも発症する可能性があります。多くは一か所のみで発症しますが、いくつもの椎体に発症することも少なくありません。
共通症状としては、病変部に非常に強い痛みを生じ、椎体の扁平化が進行すると病変部位から前のめりに首、背中、腰が曲がるのが特徴です。特に胸椎や腰椎に複数の病変がある場合には痛みのために歩行や体動が困難になり、頚椎に発症した場合には首が前のめりに曲がることで飲食などの日常生活に大きな支障をきたすこともあります。
椎体に連なって存在する脊柱管が扁平化した椎体によって圧迫されると、脊髄やその枝の神経を圧迫して、麻痺やしびれ、痛み、感覚障害などの神経障害を引き起こすこともあります。しかし、扁平化した椎体の多くは成長とともに自然修復されて元の厚みに戻り、後遺症を遺すことは少ないとされています。
さらに、LCHはカルベ扁平椎だけでなく、他部位の骨破壊、発熱、皮疹、肝脾腫などを生じることもあります。
検査・診断
カルベ扁平椎を診断するには種々の画像検査が必要となります。もっとも簡便に行え、椎体の扁平化を明瞭に確認できるのはレントゲン検査です。また、CT検査やMRI検査で病変部を詳細に観察したり、骨シンチグラフィーで全身の骨病変の有無を調べたりすることがあります。
骨肉腫やユーイング肉腫などの悪性腫瘍や骨破壊を呈する他の良性腫瘍(骨巨細胞腫など)との鑑別が必要な場合があり、骨病変の一部を採取して顕微鏡で観察する病理検査によって確定診断が行われるのが一般的です。
治療
一か所の椎体にのみ病変がある場合には、病理検査で確定診断が行われた後、治療をしなくても自然に椎体が修復され、回復することが多いとされています。
しかし、病変が複数か所にわたっている場合や、椎骨以外にも病変がある場合には、ステロイド剤と抗がん剤での治療が行われます。このような治療を行っても症状が改善せず、病状が進行する場合には造血幹細胞移植が検討されます。
また、好酸球や組織球が浸潤することで椎体の強度が低下し、椎体圧迫骨折を生じる可能性がある場合には、椎体の病変部をくり抜いて病状の進行を防ぐ手術が行われることもあります。しかし、手術によって病変部を取り除かれた椎体は自然修復されないため、できる限り手術は避けることが推奨されています。
その他、脊髄の圧迫による神経症状が著しいケースでは、神経障害が残る可能性もあるため脊髄の圧迫を解除する手術が行われます。
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