概要
ビダール苔癬とは、うなじや太ももなど限局した部位に対して、慢性的にこすれる刺激をきっかけとしてかゆみが生じる皮膚疾患を指します。インターネット上では「慢性単純性苔癬」「神経皮膚炎」と検索されていることも多いようです。
成人期以降の女性に多い病気であり、ネックレス、洋服などからの刺激を原因として皮膚炎が誘発されます。また、ビダール苔癬によるかゆみはストレスでも増強することがあります。
ビダール苔癬はひっかくこと、こすれることが誘因となる疾患であり、こうした行為をやめることが治療のうえで重要です。
原因
ネックレスや洋服、皮膚と皮膚の刺激など、慢性的に皮膚に対してこすれるような刺激が加わることが原因です。また、もともと存在する皮膚疾患に続発して発症することもあります。たとえば、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾癬、真菌感染症、虫刺されなどが存在すると皮膚がかゆくなりますが、こうした皮膚に対してかく、ひっかくという動作を繰り返すことでも発症します。
そのほかにも、かゆみやものの刺激を感じ取る神経に異常が存在する場合に、ビダール苔癬を発症する可能性があります。こすれる刺激に対しての感覚異常があると、皮膚に対しての影響を自分自身が適切に認知することができなくなり、皮膚に対しての異常な刺激が常時加わる可能性が出てきます。その結果として、ビダール苔癬に特徴的な皮膚変化が引き起こされることもあります。
ビダール苔癬は小児期にみられることはまれであり、成人期以降に多い病気です。ストレス、肥満なども危険因子であると考えられています。
このようにさまざまな状況と関連して発症しますが、原因について完全に解明されているわけではなく、今後も新たな知見が加わると考えられます。
症状
ビダール苔癬では、首元や太もも、陰部など、皮膚がこすれる刺激を受けやすい部位を中心に限局的な皮膚変化が現れます。正常の皮膚と比較すると丸みを帯びた形で皮膚が赤くなり、やや盛り上がりを見せるようになります。病変部位は乾燥していたり、カサカサした様相で、色素沈着が起こったりすることもあります。
自覚症状としては、非常に強いかゆみが主体です。うなじや太ももなど、毛が生える部分に皮膚病変が生じることもあるため、繰り返しかくことで刺激を受けて毛が抜けたり、かいた痕が残ったりすることもあります。ビダール苔癬によって生じる皮膚変化は、かくという動作に伴って変化し、次第にお互いがくっついて病変部位が広がることもあります。
検査・診断
診断は、皮膚の変化や自覚症状(赤みや色素沈着のするかゆい皮膚病変)を詳細に評価することをもとにしてなされます。
皮膚の症状は真菌感染症、乾癬、アトピー性皮膚炎などのその他の皮膚疾患と類似する症状を呈することもあります。これらの疾患と正確に区別するために、皮膚の表面をこすりとったり、皮膚の一部を採取する生検検査を行ったりすることがあります。このようにして得られた検体を用いて、顕微鏡で真菌が存在していないか確認したり、各種疾患に特徴的な病理学的な変化を確認したりします。また、接触皮膚炎との鑑別が必要になる場合には、パッチテストが行われることもあります。
治療
皮膚症状を引き起こすようになった根本に対しての治療アプローチと、自覚症状であるかゆみに対しての対症療法が治療の中心になります。
ビダール苔癬は、慢性的に皮膚に対してこすれる刺激が加わることを原因として発症する病気です。そのため、慢性的な刺激を避けるための努力が必要です。洋服による刺激が考えられる場合には、柔らかい素材で作られた洋服へと変更します。ネックレスによる軽微な刺激が考えられる場合、装飾品の着用を控えることも必要です。ストレスが原因となってビダール苔癬が引き起こされたり、症状が増悪したりもします。そのため、ストレスを抱え込まないように、規則正しい生活スタイルを心がけることも大切です。
ビダール苔癬では、こうした根本に対しての治療介入に加えて、主要症状であるかゆみに対しての治療介入もされます。治療薬の基本は、皮膚局所に対してのステロイド軟膏の使用です。場合によっては局所に対してのステロイド注射なども考慮されます。また、内服薬として、抗ヒスタミン薬などのかゆみ止めの使用も検討されます。
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