インタビュー

マラリアとはどんな病気?蚊に刺されることでおこる感染症

マラリアとはどんな病気?蚊に刺されることでおこる感染症
青柳 有紀 先生

ダートマス大学 Clinical Assistant Professor of Medicine

青柳 有紀 先生

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この記事の最終更新は2015年05月23日です。

旅行のときに気を付けるべき病気としてよく挙げられるものの一つに、マラリアがあります。日本ではほとんど聞くことのない病気ですが、WHOによれば2013年の1年間で約2億人が感染したと言われています。

マラリア感染の90%近くがアフリカで起こっています。アフリカのルワンダで感染症医として活躍している青柳先生に、マラリアがどのような病気であるかについて教えてもらいました。

マラリアは、マラリア原虫というきわめて小さな寄生虫に感染することで起こる病気です。

マラリアは蚊に刺されることで起こる病気というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、マラリアの原因は「マラリア原虫の感染」で、蚊が果たしているのは「マラリア原虫を人へと運ぶ役割(媒介)」です。

蚊の腸の中にマラリア原虫が潜んでいて、この蚊が人を刺して血を吸うときに、蚊の唾液を介してマラリア原虫が人の体に侵入します。そして人の体の中でマラリア原虫が増殖していくことで、マラリアを発症します。

基本的に、人から人に直接感染することはありませんし、蚊以外の虫に刺されてもマラリアは起こりません。マラリア原虫を運ぶことのできる蚊は「ハマダラカ」という種類の蚊に限られています。

蚊を見ただけで、「ハマダラカ」かどうかを見分けるのは、白黒の斑紋や皮膚に止まっているときの姿勢(お尻を上げて斜めに上げている)といった特徴から判断できないこともないのですが、一般の方にはとても難しいと思います。

マラリアは、ハマダラカに刺されてマラリア原虫に感染することによっておこる病気なので、ハマダラカの生息する地域に行くときには注意が必要です。具体的には、アジア・オセアニア・アフリカおよび中南米の熱帯・亜熱帯地域で流行しています。

特に日本人の旅行先として人気のあるタイ・フィリピン・インドネシア・マレーシアなどへ旅行される方は、注意が必要です。

マラリアを運ぶ蚊はハマダラカですが、マラリアを持ったハマダラカは日本には生息していません。したがって、日本で蚊にさされたからといって、マラリアになることは基本的にはありえません。

非常に珍しいケースとしては、マラリアの流行地(東南アジアやアフリカ)への発着のあるような国際空港の周りで、マラリアにかかった患者さんがいたということがあります。1971年に日本でも1件だけありましたし、1994年にはパリのシャルル・ドゴール空港周辺で6件が報告されています。
ただしこのようなケースはごくごく稀なことなので、基本的に日本でマラリアに感染するということはありえません。

  • 熱帯熱マラリア
  • 四日熱マラリア
  • 三日熱マラリア
  • 卵形マラリア

以上の4種類が、古くから知られているマラリアの種類です。それぞれの種類によって原因となるマラリア原虫が異なっており、流行している地域や、感染することで起こる症状や重症度が異なります。

世界的にもっとも多いのは三日熱マラリアで、重症化しやすいのでもっとも注意しなければならないのは熱帯熱マラリアです。

最近になって「サルマラリア」という新しいタイプのマラリアが東南アジアで見つかってきました。名前の通り以前はサルにしかかからないマラリアだと思われていたのですが、人間にも感染するということが分かっており、注目を集めています。

  • ダートマス大学 Clinical Assistant Professor of Medicine

    青柳 有紀 先生

    国際機関勤務などを経て、群馬大学医学部医学科卒。米国での専門医研修後、アフリカ中部に位置するルワンダにて、現地の医師および医学生の臨床医学教育に従事。現在はニュージーランド北島の教育病院にて内科および感染症科コンサルタントとして勤務している。日本国、米国ニューハンプシャー州、およびニュージランド医師。

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