概要
ミトコンドリア異常症とは、細胞が正常に活動するのに重要な役割を担うミトコンドリアが異常を示すことで引き起こされる病気を指します。
遺伝子異常により発症しますが、約40%の患者さんで未だに遺伝子異常が判明していない病気です。発症年齢、病型、重症度すべて非常に多様性に富んでいます。
新生児・乳児期発症の乳児型の病型から、老年発症まで発症時期においても、病型も乳児致死型から軽症型まで臨床的重症度においても、罹患臓器も単臓器から多臓器まで、多様性に富む病気です。
ミトコンドリア異常症は、国の指定難病等医療給付制度に指定されている難病であり、日本では2000人以上の患者さんがいると推定されています。
原因
ミトコンドリア異常症は、遺伝子異常により細胞が生きていくために必須のATPを作るミトコンドリアの機能が異常を示すことで発症します。
ミトコンドリア異常症は、ミトコンドリアや細胞の核に含まれるDNAに異常が生じることで発症します。ミトコンドリアは細胞活動に必要なエネルギーを産生する器官であるため、ミトコンドリアに異常が生じると、エネルギー需要量の多い神経や筋肉に症状が出現しやすくなります。
ミトコンドリア異常症は包括的な名称であり、数多くの病型が含まれています。具体的には、
- MELAS(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes)
- Kearns Sayre症候群
- Leigh脳症
などを例に挙げることができます。
その他にもさまざまなDNA異常が知られており、診断に至っていないお子さんも少なくないと想定されています。
症状
ミトコンドリア異常症では、全身各所に多種多様な症状が出現する可能性があり、特に神経や筋肉に症状がみられます。
たとえば、もっとも多いタイプであるMELASでは、神経症状としてけいれんやてんかん、脳卒中様発作、運動異常、頭痛、精神発達遅滞などがみられることがあります。
また、筋肉症状としては、疲れやすさや筋力の低下、目の運動障害などがみられます。発症時年齢も幼少期であることがある一方、成人期の発症例もあります。
その他、糖尿病や難聴、不整脈、下痢や便秘、発汗障害、腎機能障害、低身長などがみられる可能性があります。症状の出方・重症度はさまざまであり、診断に至っていない方も少なくないことが推定されています。
検査・診断
ミトコンドリア異常症では、筋生検や血液検査を通して、形態的な筋肉の変化、遺伝子異常の有無、生化学的な検査項目を確認します。
また、臓器障害の程度を評価するために、血液検査や髄液検査、頭部CTやMRI、心電図検査、脳波検査などが行われることもあります。
診断の際は、症状を考慮しながら必要な検査を行い、治療につなげていきます。
治療
ミトコンドリア異常症の根本的な治療方法は確立されておらず、出現する症状に応じた対症療法が中心となります。てんかんが生じれば抗てんかん薬、頭痛に対しては鎮痛剤の使用が検討されます。
発達障害や脳卒中様発作が生じた際には、リハビリテーションや装具の使用、療育なども検討されます。
ミトコンドリア異常症の治療成績は必ずしも満足のいくものであるとはいえませんが、早期に診断や治療を受けることは大切です。
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