らっさねつ

ラッサ熱

目次

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概要

ラッサ熱とは、ラッサウイルス(Lassa virus)に感染することで引き起こされる感染症です。エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病と並びウイルス性出血熱のひとつです。

多くの場合は軽症ですが、さまざまな臨床症状をきたし、約2割の感染者で重症化し、ときには死亡することもある疾患です。ナイジェリアやシエラレオネ、ギニアなどの西アフリカを中心にみられます。日本においては1類感染症に指定されていますが、流行はみられません。

ラッサウイルスは、マストミスと呼ばれるネズミに感染し、ラッサウイルスを含むネズミの糞や尿などに接触すること、ラッサウイルスを含む粉塵を吸い込むこと、感染したネズミを食べることで感染します。感染管理上、重要な点は、感染者の血液などの体液に触れることで人から人に拡がることもある点です。日本での流行はありませんが、流行地域から輸入感染症として持ち込まれることも懸念されるため、十分な対応策を講じることが重要です。

原因

ラッサ熱は、ラッサウイルス(Lassa virus)に感染することを原因として発症します。ラッサウイルスはマストミスと呼ばれるネズミの体内に潜んでいることがあります。ラッサウイルスは、マストミスの尿や唾液、糞などに多く含まれており、これらに接触することから人への感染が成立します。マストミスは、シエラレオネやナイジェリアなどのアフリカ地域に生息しており、そのため同地域ではラッサ熱の流行をみます。

感染管理で重要な点は、ラッサウイルスは人から人への感染も起こし、医療施設内の水平伝播もあることです。ラッサ熱に感染した方の血液などの体液、便や尿にはラッサウイルスが含まれており、これらに直接触れることで感染が拡大することがあります。回復してからも精液からウイルスが検出されることがあり、性交渉による感染もあります。

症状

ラッサウイルスに感染すると、1〜3週間ほどの潜伏期間を経た後に病気を発症します。初発症状はインフルエンザに類似したものであり、急激な発熱や全身倦怠感、関節痛、咽頭痛、頭痛、咳などを呈します。随伴症状として、吐き気や腹痛、下痢などの消化器症状をみることも多いです。

重症例では出血傾向を示すようになり、消化管からの出血、口からの出血、皮下出血などをみるようになります。感染者全体の約1%が死亡するといわれています。経過中、難聴をきたすことが特徴のひとつであり、完全に聴力を失うこともあります。妊婦がラッサウイルスに感染した際には、胎児死亡や流産、早産などをもたらすこともあります。

検査・診断

ラッサ熱の診断は、ラッサウイルスに感染したことを証明することでなされます。具体的に行われる検査としては、

(1)ウイルス分離とラッサウイルスの検出

(2)ラッサウイルスに対する抗体検査(ウイルスに感染すると、ウイルスを排除するために抗体と呼ばれるタンパク質が体内で産生されるため、これを検出します)

(3)ラッサウイルスに特異的な遺伝子を検出するためのPCR法(ラッサウイルスは人が持っていない遺伝子を有しており、この特異的な遺伝子を増幅・検出します)

などがあります。血液や咽頭拭い液、尿などの検体を用いて上記の検査を適宜組み合わせ、診断につなげます。
 

治療

ラッサウイルスに対しては、リバビリンと呼ばれる薬剤が効果を示すことが知られており、ラッサ熱はこの薬剤を用いて治療します。早期に使用するほど高い治療効果を期待できます。

予防

ラッサウイルスに対してのワクチンはなく、基本的な感染対策を徹底することが重要です。感染した方の体液、血液などに触れることは感染が拡大するリスクとなります。患者さんを看病する際には、状況に応じて手袋、ガウン、マスクなどを着用し、血液等には触れないようにすることが大切です。手洗いを行うことも重要です。また、感染者の回復期の性交渉でも感染することがあり、注意が必要です。

ラッサ熱は、シエラレオネやナイジェリアなどの一定の流行地域があります。流行地域に赴く際には、ネズミに対しての注意が必要です。具体的には、ネズミを避ける、食べ物はネズミがアクセスできない入れ物で保管する、糞や尿に汚染されそうなところに触れない、一般家屋での長期滞在ではネズミ取りの罠をしかける、ネズミを決して食べないなどの対策を取ることが重要です。

ラッサ熱の初期症状は、マラリアや腸チフスなどの病気に類似するものもあります。感染が疑われる状況においては、早期に医療機関を受診し、正確な診断・適切な治療を受けることが必要です。