概要
ウイルス性出血熱とは、エボラ出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱などの病気を指します。いずれも発熱や出血傾向を示し、致死率の高い重篤なウイルス性疾患です。ウイルス性出血熱は、主にアフリカを中心に流行をみる疾患であり、日本における流行はありません。日本ではその致死率の高さ、重篤さから、これらは1類感染症に指定されています。
ウイルス性出血熱は、感染した方との接触による感染の危険性がある病気です。日本における流行はないとはいえ、今後、流行地域からの持ち込みは起こりえます。事実、2014年1月には西アフリカに端を発したエボラ出血熱の流行があり、アメリカやイギリスなどにおいても輸入感染症としての発症例をみました。
国際化が進む現在の世界において、日本で同様の現象が生じることも考えられ、有事に備えての対策を行うことが重要であるとされています。
原因
エボラ出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱はそれぞれ、エボラウイルス(Ebola virus)、マールブルグウイルス(Marburg virus)、ラッサウイルス(Lassa virus)、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス(Crimean-Congo hemorrhagic fever virus)に感染することが原因となります。流行地域は、主にアフリカですが、クリミア・コンゴ出血熱はアフリカから中央アジア、東欧、中近東、中国西部でもみられます。
ウイルスを媒介する動物や虫としては、エボラ出血熱であればサルやコウモリなどが疑われています。ラッサ熱はネズミ、クリミア・コンゴ出血熱では、ダニ、家畜であると考えられています。マールブルグ病については正確にはわかっていません。
ウイルスを持つ媒介動物や虫に接触することから人に対しての感染が成立します。また感染管理上、人から人への感染があり得るという点が重要です。アフリカの一部では、死者に対して敬意を払う意味を込めて、死体に素手で触れたり口づけをしたりする風習がある地域もあります。こうした接触はウイルス性出血熱の感染拡大のきっかけになることが指摘されています。その他、医療従事者や家族は看病を通してウイルス性出血熱を発症することがあります。
症状
ウイルス性出血熱は、エボラ出血熱を筆頭として高い致死率を示すことが特徴です。ウイルスの種類によって感染後数日から3週間ほどの経過で症状が出現し始めます。初発症状としては、発熱や筋肉痛、倦怠感などが現れます。経過中に皮疹がでることもあります。
ウイルス性出血熱の名前から想定されるように、経過中に出血傾向を示すことも特徴のひとつです。具体的には皮下出血や消化管出血、目や口などの粘膜出血などが認められます。さらに、重症の場合には血圧低下や意識障害などを呈することもあり、最悪の場合には死に至るリスクもあります。
検査・診断
ウイルス性出血熱の診断の基本は、原因ウイルスが体内に侵入していることを証明することです。一般的には血液や尿などの体液を用いて下記のような検査が行われます。
(1)原因ウイルスの分離検出
(2)原因ウイルスに対する抗体の検出
(3)原因ウイルスに特異的な遺伝子の検出(PCR法)
初期症状として、マラリアを始めとする風土病に類似するものもあるため、ウイルス性出血熱以外の疾患を除外するための検査も検討されます。
治療
ウイルス性出血熱のなかでも、ラッサ熱に対してはリバビリンと呼ばれる薬剤が有効であると考えられています。クリミア・コンゴ出血熱もリバビリンが使用されますが、効果は明らかではありません。エボラ出血熱は試験的に使用された薬剤がいくつかあり、マールブルグ病は動物実験での薬剤はありますが、ウイルスに対して承認された治療薬はありません。
予防
原因ウイルスに汚染された体液に触れることで感染が成立するため、患者さんに接触する際には手袋やガウン、ゴーグル等を使用することが重要です。また、手洗いを行うことも重要な感染予防策のひとつです。
ウイルス性出血熱は地域性がある疾患であり、アフリカなどを中心に流行をみます。そのため、流行が疑われる地域では媒介動物や虫への接触を避けることが必要です。また、地域によっては風習として葬儀の折に死体に接触することがあります。死体がウイルスで汚染されているとこうした行為も感染リスクとなるため、注意が必要です。
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