要介護状態になる方のうち、整形外科疾患が原因の方が20%を越えていることについて、「ロコモティブシンドロームとは。定義を知って対策しよう」で触れました。また医師の治療が必要な場合は、適切な治療を受けた後、定期的な運動習慣によって要介護状態になることを防ぐことが可能だということを「ロコモティブシンドロームの原因。運動不足やスポーツのしすぎ」でご説明しました。ロコモティブシンドロームに陥っている場合は、できるだけ早く対策を講じることが重要です。
この記事では、ロコモティブシンドロームについて啓蒙を続けておられるNTT東日本関東病院整形外科主任医長・大江隆史先生に、ロコモティブシンドロームをチェックする方法について解説していただきます。
日本ロコモティブシンドローム研究会(現在は活動休止中)は高齢者の運動器についての研究について、整形外科分野、社会科学分野、厚労省の報告書などを精査しました。ロコモティブシンドロームが進行すると、転倒による骨折を起こしやすくなります。その結果介護が必要になるのですが、転倒や要介護になりやすい項目をチェックしたところ、全ての分野の報告書でかなりの一致が見られることがわかりました。
私たちはその研究結果から、次の7つのチェック項目「ロコチェック」を作り、整形外科学会へ報告しました。これは日本整形外科学会公認ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトでも紹介しています。
これによって、バランスが保てるかどうかがチェックできます。
脚がうまく上がらなかったり脚がスムーズに出ないと、ちょっとした段差でつまずくことがあります。この場合、首の付け根にあたる脊椎に問題があると、神経が圧迫されて脚がスムーズに出ないということがよく起こります。
自分の体重を持ち上げるだけの力があるかをチェックします。また、関節が問題なく曲げ伸ばしできるかを見ます。
健康な人は、だいたい15分で1kmほど歩けます。しかし腰部脊柱管狭窄症という疾患にかかると、竹を輪切りにしたような構造をしている腰椎(腰の部分にあたる背骨)の空洞が狭くなります。
その結果、神経が圧迫され、ある程度の距離を歩くと下肢が痛くなって立ち止まらなければいけない。休むとまた歩けるようになる。こういった症状が現れます。
横断報道が青のうちに渡り切れることは、秒速1m以上で歩けているということになります。歩くスピードが遅くなると、転倒したり要介護になる可能性が高くなるという報告があります。
以上のうち、日常的に該当するものが1つでもあれば、ロコモティブシンドロームの可能性が高いとしてきました。2013年からはこれに加えて、ロコモの程度を調べる3つのテストを発表しました。それが以下に示すロコモ度テストです。
10・20・30・40cmの台を用意し、両脚、片脚の順で40cmの台から行っていきます。
【立ち上がりテストの方法】
【結果判定】
<ロコモ度1>どちらかの片脚で40cmの台から立ち上がれないが、両脚で20cmの台から立ち上がれる
<ロコモ度2>両脚で20cmの台から立ち上がれないが、両脚で30cmの台から立ち上がれる
<ロコモ度3>両脚で30cmの台から立ち上がれない
【2ステップテストの方法】
【結果判定】
<ロコモ度1>2ステップ値が1.1以上1.3未満
<ロコモ度2>2ステップ値が0.9以上1.1未満
<ロコモ度3>2ステップ値が0.9未満
ロコモ25(リンク先をご参照ください)
2015年5月、日本整形外科学会はロコモ度テストに臨床判断値を設定し公表しました。この臨床判断値は、予防医学的見地から年齢によらずロコモの程度を判別し、その予防や悪化の防止を図ろうとするものです。
ロコモの始まりである「ロコモ度1」は、「立ち上がりテストで片脚で40cmができない」「2ステップテストが1.3未満」「ロコモ25が7点以上」のどれか1つでも当てはまるものとしました。また移動機能低下が進行した「ロコモ度2」は、「立ち上がりテストで両脚20cmができない」「2ステップテストが1.1未満」「ロコモ25が16点以上」のどれかひとつでも当てはまるものとしました。
NTT東日本関東病院 院長、ロコモ チャレンジ!推進協議会 委員長
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