インタビュー

ロコモティブシンドロームとは。定義を知って対策しよう

ロコモティブシンドロームとは。定義を知って対策しよう
大江 隆史 先生

NTT東日本関東病院 整形外科部長・手術部長/ロコモ チャレンジ!推進協議会 委員長

大江 隆史 先生

医療の発達や、家電製品などの発達による肉体への負担軽減、公衆衛生や栄養状態の改善によって、多くの方が感染症や外傷などのトラブルに見舞われる機会が減りました。我が国は平均寿命が延びて、世界有数の長寿国となっています。とはいえ、年齢を経ても快活に過ごせるかと問われると、疑問を呈せざるをえません。近年特に問題視されているのが、ご高齢の方をはじめとした運動器の機能低下によるトラブルです。

ここでは、「ロコモティブシンドローム」について啓蒙を続けておられるNTT東日本関東病院整形外科主任医長・大江隆史先生に、ロコモティブシンドロームについて解説していただきます。

ロコモティブシンドロームとは

私たちは、ふだん意識することは少ないですが、日常のすべての動作を運動器に頼っています。たとえば、家の中を移動したり、どこかへ出かけたりするときは、必ず足を動かします。
 
この場合、足の筋肉や骨、関節、軟骨といった組織が働くことによって、歩くことが可能になります。実際にはこれらに加えて、脊椎を支える筋肉、椎骨とよばれる脊椎を構成する小さな骨をつなぐクッションの役割をする椎間板なども働いています。

生活動作やスポーツを楽しんだりする活動の中で、骨折などの怪我に見舞われることがあります。また、骨・関節・筋肉の疾患を患うこともあります。これらの怪我や疾患を適切に治療し、セルフケアを継続して行わないと、疼痛(痛み)や関節の可動域制限(関節が動く範囲が狭くなること)、身体の柔軟性の低下、姿勢変化、筋力低下、バランス能力低下などといったトラブルが起こるようになります。

これらのトラブルに気づくようになった場合、できるだけ早急に適切な治療やセルフケアを開始しないと「立つ」「歩く」といった機能が低下していきます。これが、ロコモティブシンドローム(略称:ロコモ、和名:運動器症候群)」です。

ロコモティブシンドロームは、進行すると日常生活にも支障が生じてきます。また、さらに進行すると、介護が必要になるリスクが高くなります。

ロコモティブシンドロームの概念図

日本整形学会公認ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトより引用

骨折、骨粗しょう症、変形性関節症、変形性脊椎症、脊椎管狭窄症、神経障害、サルコベニアといった疾患は、ロコモティブシンドロームに移行する原因となることがわかっています。

特に、骨粗しょう症は骨がもろくなる病気です。定期的な医師の治療を受けないと骨がさらにもろくなって骨折を起こしやすくなります。骨粗しょう症の方が骨折を起こした場合、安静にしている間に筋力が急激に低下して、介護が必要な状態になることが珍しくありません。したがって、骨粗しょう症を含め先述の病気と診断された場合は、医師の治療を受けながら、セルフケアを意識して生活することが大事です。

日本は、高齢化社会と呼ばれて久しいですが、わずか30年ほどで高齢者層が3倍になりました。厚労省などの人口統計によれば、2005年から2025年までの間に、65歳以上の人が1000万人増えます。

要介護状態にある人は65~69歳で2%です。ただし、年齢が高くなるにしたがって要介護状態になる方は増えていきます(70~74歳4%、75~79歳は10%、80~84歳になると18%)。つまり、65歳以上の方が増加傾向になる2025年までの間にご自分の足で歩けるようにできる対策を講じなければ、確実に要介護の方が増えます。

要介護状態になる原因として、脳卒中や認知症などといった病気がよく知られています。しかし、骨粗しょう症や関節炎といった整形外科疾患で要介護になっている方をまとめると、20~25%になることはあまり知られていません。

そこで、整形外科疾患が要介護を招く可能性について認知してもらう概念が必要だということで、中村耕三東京大学名誉教授と私で2007年に考え出した新語が”ロコモティブシンドローム(略称:ロコモ、和名:運動器症候群)”です。

記事1:ロコモティブシンドロームとは。定義を知って対策しよう
記事2:ロコモティブシンドロームの原因。運動不足やスポーツのしすぎ
記事3:ロコモティブシンドロームかどうかチェックする方法
記事4:ロコモティブシンドロームの予防方法。運動習慣と食生活が重要
記事5:子どものロコモティブシンドローム。子どものうちから予防対策を