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ロコモティブシンドロームは簡単な運動で予防できる!手軽にできるロコモ対策
記事1『ロコモティブシンドロームの意味とは?介護を必要としない健康状態を保つために知っておきたいこと』では、ロコモとは何か、ロコモ対策がいかに重要かについてお話いただきました。引き続き、北里大学...
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ロコモティブシンドロームは簡単な運動で予防できる!手軽にできるロコモ対策

公開日 2017 年 02 月 07 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

ロコモティブシンドロームは簡単な運動で予防できる!手軽にできるロコモ対策
高平 尚伸 先生

北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻 教授、北里大学大学院医療系研究科臨床医療学 整形外科学 教授

高平 尚伸 先生

記事1『ロコモティブシンドロームの意味とは?介護を必要としない健康状態を保つために知っておきたいこと』では、ロコモとは何か、ロコモ対策がいかに重要かについてお話いただきました。

引き続き、北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科および大学院医療系研究科整形外科学教授 高平尚伸先生にセルフチェックでわかるロコモ診断や、ロコモを予防するための運動療法についてお話いただきます。

自分でできるロコモ診断「ロコチェック」とは?

日本整形外科学会では下記の7つ項目からロコモティブシンドロームかどうかを確認する「ロコチェック」を提唱しています。ロコチェックにひとつでも当てはまると、注意が必要です。

1. 家のやや重い仕事が困難

2. 2キロ程度の買い物をして持ち帰るのが困難

3. 片脚立ちで靴下が履けない

4. 家の中でつまずいたり滑ったりする

5. 15分くらい続けて歩けない

6. 階段を上がるのに手すりが必要

7. 横断歩道を青信号で渡りきれない

【引用:「ロコチェック」ロコモ チャレンジ!公式サイトより】

成人の約21.8%が、3番目の「片脚で靴下が履けない」に「はい」と答えるという結果が出ています。またロコチェックの7項目のうち、1つでも当てはまると答えた人は、約40%でした。たとえ若い方であってもその兆候が現れていることが多く、ロコモティブシンドロームは決して他人事ではありません。是非周りの方にも、ロコチェックをするよう勧めてみてください。

ロコモの原因とは?

ロコモの原因はたくさんありますが、最も多いのが「運動不足」です。体を動かさないと次第に運動器が衰え、動けなくなってしまいます。そこに大きな怪我や骨折してしまうと、さらに運動できなくなり、回復も遅いため、お年を召した方の場合、最悪寝たきり状態となってしまいます。

しかし、ロコモティブシンドロームの原因は高齢になってからだけではなく、若いときの行動にも起因します。たとえば下記のような生活を送っている方は生活の見直しを検討することをお勧めします。

  • エレベーター、エスカレーターをよく利用し、階段を使わない
  • ソファに座ってばかりいて、出歩かない
  • 怪我ばかりしている
  • 極端に太ったり、痩せたりしている

心当たりのある方は、日常生活に些細な運動を組み込むことから始めてみてはいかがでしょうか。

ロコモ予防には、運動を続けることが大切

 

先生が運動をしている図

ロコモ予防として日本整形外科学会が推進している運動療法は「ロコトレ」と呼ばれていますが、具体的な方法として、まず覚えてもらいたい運動はたったの2つだけです。

片脚立ち

バランス能力をつける効果があります。姿勢をまっすぐにして立ち、転倒しないようにつかまるものがある場所で床につかない程度に片脚をあげます。

1日3回、左右1分ずつを目安に行います。

スクワット

下肢筋力をつける効果があります。肩幅より広めに足を広げ、つま先を30度くらい開きます。膝がつま先より出ず、足の人差し指の方向に向くように注意して、お尻を後ろに引くように身体をしずめます。これを1日3回、深呼吸するペースで1セット、まず初めは5〜6回を目安に行います。

2つに絞っている理由は、ロコモ対策を急がれる高齢の方に多くの運動を覚えてもらうのは大変ですし、簡単でないと続かないからです。いくら有効な運動方法を多く知っていても、正しく継続してやっていただかなければ、意味がありません。

また数ある運動の中から「片脚立ち」と「スクワット」を、選択している理由はそれが日常生活の最も根本的な運動だからです。「寝たきり」ではないということは、言い換えれば「立ち上がって」「歩ける」ということです。

まず、ベッドから起きて立ち上がるにはスクワットが必要です。また、ベッドからトイレまで、あるいは別室まで、移動するためには片脚立ちの連続からなる歩行が必要です。このように片脚立ちとスクワットは日頃私たちが日常生活で行なっている動作の基本中の基本なのです。

少し話が変わりますが、父兄が子どもの運動会の種目に参加するというと、なぜだか派手に転倒するイメージがありませんか?これは普段運動をしていない方が急に運動すると、自分の頭で描いている動作に体がついていけず、思いのほか脚が上がっていないからです。

それと同じように、高齢者の方も知らないうちに脚が上がらなくなっており、その結果今までつまずくことがなかった段差や絨毯でつまずいてしまうようになります。このような頭と身体のギャップは、意識的に訓練をして改善する必要があります。

スクワットは難しい?−目的に合わせた正しい方法を

スクワットと聞くと、「難しそう」「辛そう」という声をよく耳にします。実は、スクワットは目的別に大きく分けると、筋肉量を増やすために行われるものと、持久力の筋肉をつけるために行われるものの2種類があります。

「辛そう」と感じる方がイメージする、ダンベルを持って行うようなハードなスクワットは筋肉量を増やすために行われ、十分な負荷をかける代わりに少ない回数で済みます。しかし、ロコモ予防に必要なスクワットは持久力の筋肉をつけるためのものです。負担をかけず、回数をこなすことで、余計な器具も必要なく、無料で寝たきりにならない体を作ることができます。

女優の森光子さんは毎日欠かさず朝晩で150回のスクワットを行なっていたそうです。また、黒柳徹子さんは今でも毎晩50回行なっているそうです。お二人がおっしゃるには、「スクワットを行うことで舞台に立つ際も軽快に歩くことができますし、階段の上り下りもスムーズにできる」ということです。

運動療法の課題−継続して正しく行うためには

 

運動をしている人

簡単で手軽にロコモ予防ができる「ロコトレ」は、費用もかからずどこでもできますし、ロコモティブシンドロームにとって立派な治療方法となります。このように薬や手術ではなく、運動や体操で治療を行うことを「運動療法」といいます。「ロコトレ」をはじめとする運動療法には現段階で大きな課題が3つあります。

  • 実施率:運動療法を患者さんがきちんと行っているのか
  • 継続率:3日坊主にならず継続的に行えているか
  • 正しい姿勢で行えているか

現状では運動が必要な方の50〜70%は運動未実施といわれています。しかも、運動を行なっている方をクローズアップしてもそのうちの30%しか、正しい運動方法を行えていません。つまり運動療法がきちんと正しく行われている状況は全体のごくわずかです。

骨・筋肉と同様、運動にも量と同様に質が重要です。歩行を例に取っても、8000〜10000歩歩くからよいというのではありません。正しい姿勢で、ある程度のスピードをつけ、1歩1歩の歩幅を取るなど、質が重要なのです。運動療法はこのように正しい方法を身につけ、質を保って行われなければ効果が期待できません。

医療の世界では治療の達成度を「アドヒアランス」といいます。薬物療法におけるアドヒアランスは大概飲めば達成されますので、比較的簡単です。時々飲み忘れはあったとしても、大抵の方がきちんと飲んでくれます。一方で、運動療法の場合はそうはいきません。

今まで運動をしてこなかった方が突然継続的に、しかも正しい運動療法を行うことはなかなか難しいはずです。アドヒアランスを上げ、無理なく運動療法を続けられる環境を医療従事者が整える必要があります。

「体操療法オールブック」−医療従事者が知るべき正しい運動療法

ロコモや関節症に運動療法が有効であることは医師もわかっています。しかし、実際の現場ではたいていの整形外科医が運動療法ではなく薬を出して済ませることが多いのです。そのため、今までは運動療法を詳しくまとめた書籍などもありませんでした。

これは整形外科医自身が忙しく、診察はできても体操を教える時間が取れないことが起因していると感じています。場合によっては理学療法士に依頼する医師もいますが、理学療法士も多くの患者さんを抱えていますので、なかなか十分に指導することはできません。

そこで、2016年に私は「体操療法オールブック」という書籍を企画し、整形外科医や理学療法士と協力し作成しました。ロコモだけではなく、筋肉の衰えを指すサルコペニアや腰痛など様々な症状に対応した体操を載せた画期的なものです。

この書籍のポイントは、あくまで指導者に向けたものであり、医師が患者さんに指導するために作られた本であるということです。一般の患者さん向けにどんなに良い運動療法の本が書かれていたとしても、患者さん自身がそれを精読し実践しなければ意味がありませんが、医師に正しい運動療法を伝えることは、患者さんが正しい体操を継続的に行うための一種のアプローチになると私は感じています。

 

【参考著書】

 

ロコモティブシンドローム(高平尚伸先生)の連載記事

北里大学病院整形外科にて、股関節手術、ロコモティブシンドローム、姿勢など、あらゆる分野の治療に従事。著書も多数あるほか、TV出演なども行なっている。近年では、ロボットを用いたヘルスケア指導など、新しいとりくみにも尽力されている。

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