にゅうかんかくちょうしょう

乳管拡張症

最終更新日:
2024年11月08日
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2024/11/08
更新しました
2017/04/25
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概要

乳管拡張症は乳輪の下に存在する乳管が拡張する病態です。多くは無症状で経過しますが、乳頭が陥没したり、ときに乳頭から緑色のチーズ状または歯磨き粉のような分泌物がみられたりすることがあります。中年以降の女性に多く、通常は乳がん検診などで偶然に発見されます。

乳管拡張症は良性の疾患であり、前がん病変でもないので、ほとんどの方では治療は必要ありません。しかし、乳がん良性乳腺腫瘍(りょうせいにゅうせんしゅよう)の一部には乳管拡張を生じるものがあり、そうした病気との鑑別が必要となるため、乳腺拡張が発見されたら専門とする医師がいる病院を受診しましょう。

原因

明らかな原因は分かっていませんが、中年以降の女性に多いことから、年齢と共に乳管周囲の組織が変化することによって生じる乳腺の老化現象と考えられています。しかし、子どもや若年成人にもみられることがあるため確定的ではありません。

なお、妊娠、授乳の有無、中絶の既往などは現在のところ乳管拡張症の発症とは関係していないとされています。

症状

乳管拡張症を発症しても、多くの場合は症状がみられず、乳がん検診などで受けた超音波検査で偶然に発見されます。

しかし、一部の乳管拡張症の患者では乳頭が陥没していたり、乳頭から分泌物がみられたりすることがあります。分泌物は乳汁のようなものであるケースもありますが、緑色のチーズ状または歯磨き粉のような分泌物が出ることもあります。このような分泌物は乳管拡張症だけにみられるものではなく、腫瘍の可能性もあるため注意が必要です。

検査・診断

多くは超音波検査(US)で評価され、マンモグラフィやMRIを用いることもあります。

超音波検査で乳管の拡張所見があり、マンモグラフィやMRIでも腫瘍を疑う病変がない場合に乳管拡張症と診断されます。

血液の混じる分泌物や、乳管内に腫瘍を疑う所見がある場合は、MRIでの画像評価のほか、病変部に針を刺して細胞の一部を採取し顕微鏡で調べる穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)や細胞診よりも太い針を刺して組織を採取し顕微鏡で調べる針生検などの細胞学的・組織学的診断を行い、乳管内乳頭腫乳がん(非浸潤性乳管がん)、乳腺炎(乳管周囲炎や肉芽種性乳腺炎)、乳腺線維症などの腫瘍性病変との鑑別を行います。

治療

通常は治療の必要はありません。日常生活に影響するほどの症状がみられる場合には症状に応じた対症療法が検討されます。

乳頭からの分泌物がみられる場合、軽度であれば経過観察を行いますが、分泌物によって不快感が生じている場合は温湿布で乳房を温めて分泌物の排出を促したり、分泌物を吸収するパッド付き下着を着用したりします。

乳管拡張症は非感染性疾患ですが、症状や検査結果から乳管周囲炎などの乳腺炎が疑われる場合は、抗菌薬と鎮痛薬が処方されます。また、乳頭が陥没していると汚れが溜まりやすく、分泌物により不衛生な状態となり乳頭部に感染を生じ(のうよう)が形成された場合は、切開して膿を出す処置が必要になることもあります。

予防

明らかな原因が分かっておらず、特定の予防策はありません。

分泌物がある場合は、乳頭や乳輪の清潔を保ち、乳頭からの分泌物を吸収するパッドを使用することが二次感染の予防につながります。

参考文献

  1. Mohammed AA. Mammary duct ectasia in adult females; risk factors for the disease, a case control study. Ann Med Surg. 2021, 62: 140-144.
  2. Hamwi MW, et al. Mammary duct ectasia. In StatPearls. StatPearls Publishing, 2023 July 17.
  3. Harris JR, et al. Periductal mastitis and duct ectasia. In Disease of the Breast, 3rd edition. Lippincott Williams & Wilkins, 2004; 50-51.

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