インタビュー

早産とはなにか?―早産にはどのようなリスクがある?

早産とはなにか?―早産にはどのようなリスクがある?
金山 尚裕 先生

浜松医科大学 名誉教授、静岡医療科学専門大学校 学校長

金山 尚裕 先生

この記事の最終更新は2015年11月25日です。

妊娠から出産までの期間が通常よりも短くなってしまうことを「早産」といいます。赤ちゃんが早く誕生することは単純に嬉しいことではありますが、同時に様々なリスクがあることなのです。今回はこの「早産」について、浜松医科大学教授の金山尚裕先生に詳しくご説明いただきました。

早産とは、正期産である妊娠37週日未満に胎児が出生することです。日本の定義では妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産のことを早産と呼びます。早産の定義については各国で差があり、国によっては妊娠26週0日からの出産を指すこともあります。

なお、日本では妊娠22週0日以前の出産を流産と定義しています。

早産の大きな原因の一つに「切迫早産」があります。切迫早産のリスクが高い場合は、なんとか早産にならないように入院管理や自宅安静などの対応を行い、妊娠37週0日まで妊娠を維持することが基本的な治療となります。もし維持ができない場合は、早産になってしまう可能性があります。

また、切迫早産があり、胎児感染・羊水感染がある場合には人工早産をすることがあります。胎児が感染している場合はより重症化しやすいので、小さくても出産したほうが良いという判断から、帝王切開をして取り上げるのです。

早産になると、基本的に生まれてくる赤ちゃんは未熟児出生となります。

また、週数が早ければ早いほどより小さな子が生まれますが、通常よりも小さく生まれた場合、臓器や器官が未成熟であることが多くあります。

これによって、短期的には出生直後の合併症や感染症のリスクが高くなり、超極出生体重児では長期的には脳性麻痺・精神発達遅延・てんかんの三大後遺症にかかりやすくなるといわれています。

近年、新生児医療の進歩によって新生児の救命率は上がっているものの、たとえば妊娠22週での出産では新生児の予後は厳しいものといえるでしょう。

また、救命できたとしてもその後の神経学的な後遺症が問題となります。在胎週数別の生存率については地域や医療機関によって異なるので一概にはいえませんが、週数が早ければ早いほど生存率は低くなります。

一方、早産自体の母体へのリスクに関しては、陣痛が早く来るということだけですので、子宮の感染の問題がなければ通常の出産との差はありません。

日本の早産管理は世界最高水準の実績を誇っています。2012年のWHOによる発表によれば、2010年における日本の早産率(早産による出生数/全体の出生数)は5.9%と、高所得国平均の9%やアメリカの12%と比較するとかなり低水準となっています。また早産による新生児の死亡リスクも低いです。

早産による後遺症や合併は、その後の人生に大きな影響をもたらすこともありますので、しっかりとした早産管理を行うことで切迫早産を避けることが大切です。早産は多くの場合後天的な要因で起こっているので、切迫早産にならないための予防を行うことが可能ですし、もし切迫早産になっても治療が可能なのです。

〈参考文献〉

WHOウェブサイト

WHO資料(pdf)

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