普段の生活の中にも「切迫早産」が起きやすくなる要因があります。だからこそ、予防が大切なのですが、もし、「切迫早産」になってしまったら、どんな治療があるのかを知っておくことも必要です。ここからは、切迫早産の主な治療方法についてお伝えしていきます。引き続き、浜松医科大学教授の金山尚裕先生にうかがいました。
切迫早産の治療の原則は
の3つです。ただ、具体的な治療方針は地域や病院によって大きく異なります。
睡眠不足やストレス過多などの生活が切迫早産のリスクになることは、過去の多くの例に基づき、経験的に明らかになっています。そのため、切迫早産と診断されたらまずは「安静な生活」を心がけなければいけません。「仕事を休むだけでいいのか?」「自宅から出ることさえ避けるべきか?」「入院しないといけないのか?」「入院の上、個室管理が必要か?」などといった「どの程度の安静度を必要とするか」は、切迫早産の重症度や地域・施設によって変わってきます。
子宮のはりは切迫早産を悪化させるので、これを抑えるために用います。
よく使われるのは、リトドリン塩酸塩で、内服と点滴があります。また、点滴では、硫酸マグネシウム水和物・ブドウ糖を使うこともあります。内服を行うか、または点滴をするか、点滴を行うのであれば短期的に行うか長期的か行うか、といった細部に関しては個別に対応しているため一概には言えません。
炎症を抑えるための手段として、腟洗浄、抗炎症剤、抗生剤の使用があります。腟洗浄というのは文字通り、子宮頸部をきれいな水を使って洗浄することで、付着した雑菌を洗い流す効果があります。局所の感染に対しては局所の抗生物質、局所の炎症に対して胎児由来の抗炎症物質であるウリナスタチン腟坐剤を使うこともあります。
これらの治療に関しても、行う頻度やその方法に関しては施設ごとに差があります。
これまで説明してきたように、切迫早産の治療は地域・施設によって異なる部分が多くあります。そのため、不明な部分があるときには、インターネットなどで調べるよりも直接主治医に対して質問をしたほうがよいでしょう。
切迫早産の原因については、明らかになってきていることも多いですが、機序(起こるしくみ)については不明な点もあります。また、適切な治療をしても不意に悪化するなど予想ができない部分も多いものです。
だからこそ、日々の兆候を見逃さないことが重要となります。腟炎や頸管炎になった場合は、茶褐色や黄色い帯下(おりもの)が出ることが多いです。これらは切迫早産の初期症状である可能性があり、早期の健診が必要です。
また、日々お腹のはりの状態を自分自身で把握することも切迫早産の悪化を防ぐために大切なことです。
子宮頸管長だけではなく、早産マーカーで早産のリスクを検査しましょう。早産マーカーは保険の適用がされており、主に胎児性フィブロネクチン、顆粒球エラスターゼの二種類があります。早産の原因となる絨毛膜羊膜炎を早期に見つけ出し、早期に治療を始めるための検査です。22週間以降になったら、リスクが高い方や疑いのある方は積極的に早産マーカーで検査をしましょう。
また、腟分泌液を細菌培養し、細菌の種類、細菌の量などを検査することはよく行われます。
まずは、リスク因子(「切迫早産の原因とは?―子宮のはり・収縮はなぜ起こるのか」参照)を避けることが大切です。
出来るだけストレスのない生活を送ること、喫煙をしているなら控えること、しっかり栄養を取ることや膣内環境を清潔に保つことなど、日常から切迫早産になりにくい生活を送ることが予防につながります。
また、痩せている方は切迫早産になりやすいと言われているので注意が必要です。日本では4人に1人が痩せている状態(BMI:[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]の値が18.5以下)であり、その結果「痩せすぎによる切迫早産」が増えています。痩せている人は切迫流産、切迫早産になりやすいともいわれています。
その他にも、虫歯や歯周病は早産のリスク要因と言われています。妊娠が分かった際に歯科検診・治療を行うことは大切です。
もし虫歯や歯周病がある場合は、妊娠初期に治療しましょう。
金山 尚裕 先生の所属医療機関
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