概要
周期性四肢麻痺とは、発作性に四肢(手足)の麻痺が生じる病気の総称です。発症要因によって、“遺伝性周期性四肢麻痺”と、ほかの病気などが原因で発症する“二次性周期性四肢麻痺”に大別されますが、いずれもカリウムが低値あるいは高値になることで四肢の筋肉に脱力発作や麻痺が生じます。また、遺伝性周期性四肢麻痺の中には、麻痺に加えて不整脈や体の奇形を伴うAndersen-Tawil症候群というタイプも存在します。
麻痺症状は通常であれば数時間程度で改善しますが、中には数日持続する場合もあります。
発作急性期には薬物療法を中心とした治療を行い、発作間欠期(発作が治まっているとき)には発作予防のための薬物療法とともに生活指導が行われます。二次性周期性四肢麻痺の場合には、原因となる病気の治療を行う必要があります。
原因
周期性四肢麻痺は、遺伝子変異によって発症する遺伝性周期性四肢麻痺と、ほかの病気や薬剤の影響で発症する二次性周期性四肢麻痺に大きく分けられます。
遺伝性周期性四肢麻痺
遺伝性周期性四肢麻痺は、CACNA1S遺伝子とSCN4A遺伝子という2つの遺伝子変異によって発症します。前者はカルシウムイオンの輸送に関わる細胞膜にあるタンパク質をつくる遺伝子で、後者はナトリウムイオンを選択的に輸送する役割を持つ細胞膜にあるタンパク質をつくる遺伝子で、いずれも骨格筋の収縮に必要です。なお、Andersen-Tawil症候群の場合は、カリウム濃度の維持に関わるKCNJ2遺伝子やKCNJ5遺伝子の変異が原因といわれています。
両親がこれらの遺伝子変異を有している場合、50%の割合で遺伝すると考えられていますが、両親には遺伝子変異がないにもかかわらず発症するケースも存在します。
二次性周期性四肢麻痺
二次性周期性四肢麻痺は、ほかの病気や薬剤などによって血液中のカリウム値が低値、または高値になることで生じます。甲状腺機能亢進症に伴い低カリウム血症を生じることで発症するケースが多いほか、腎不全や消化管疾患、利尿薬などによって引き起こされることもあるといわれています。
症状
手足の筋肉の脱力発作が起こり、自覚症状としては四肢のこわばりを訴える人もいます。症状は足の筋力低下から始まり、徐々に四肢に広がるのが特徴です。また、四肢の麻痺は左右対称に現れ、数時間で治ることもあれば数日続くこともあります。場合によっては、顔面や舌、まれに呼吸に関する筋肉に麻痺が現れることもあります。
発作は深夜から早朝にかけて生じやすいほか、激しい運動やカリウム・ナトリウムなどの過剰摂取、飲酒なども誘因因子になるため注意が必要です。
Andersen-Tawil症候群の場合は手足の脱力やこわばりに加え、不整脈や特徴的な体つき(低身長、耳の位置が低い、鼻の幅が広い、小顎症など)が現れます。
検査・診断
周期性四肢麻痺が疑われる場合は問診や血液検査などを行い、結果に基づいて診断が下されます。
問診
発作の回数や持続時間などを確認するとともに、それに付随する症状がないか確認します。また、家族歴や病歴をはじめ、食生活、内服薬の有無などについても確認します。
血液検査
四肢の脱力発作や麻痺は、カリウムの低値または高値によって生じるため血液検査を行います。発作時は低カリウム性の場合は0.9~3.0mEq/L、高カリウム性の場合は5.0mEq/L以上が目安となります。二次性周期性四肢麻痺が疑われる場合には、甲状腺ホルモンや腎機能などを調べます。
遺伝子検査
遺伝性周期性四肢麻痺が疑われる場合に、確定診断のために遺伝子検査が行われます。血液からゲノムDNAを回収して、塩基配列の変化を確認します。
治療
発作急性期と発作間欠期で治療選択肢が異なります。なお、二次性周期性四肢麻痺の場合には、原因となる病気の治療を併せて行う必要があります。
発作急性期の治療
カリウム値が低い場合には、カリウム製剤を使用して治療を行います。軽症の場合には内服薬を用いますが、重症の場合は点滴で投与する必要があります。カリウム値が高い場合には、経過観察とともにカリウムを体外に排出する目的で利尿薬が用いられることもあります。
発作間欠期の治療
発作を予防するために薬物治療や生活指導が行われます。薬物療法としては、カリウム製剤やアセタゾラミドなどの内服薬が用いられます。
カリウム値が低いために脱力発作が起こる場合には、炭水化物やナトリウムの過剰摂取、飲酒、激しい運動などの発症要因となり得る生活習慣の見直しを行う必要があります。一方、カリウム値が高いために脱力発作が起こる場合には、カリウムを多く含む食品の摂取を控えて、炭水化物食をしっかり取ることがすすめられます。
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