概要
周期性四肢麻痺とは、主に手足の筋肉が周期的に一過性麻痺を起こして動かなくなる病気を指します。遺伝的な要因で発症することもあれば、利尿剤などの薬剤や、甲状腺機能亢進症などの別の基礎疾患をもとにして後天的に発症することもあります。遺伝性周期性四肢麻痺は、遺伝子異常に関連して発症することが知られており、本邦においては難病指定を受けている疾患です。
周期性四肢麻痺では、原因に応じて発作を予防するための対策がとられます。食事に注意を払うことがあれば、周期性四肢麻痺を引き起こす基礎疾患に対しての根本療法がとられることもあります。
原因
周期性四肢麻痺は、遺伝子異常をもとにして発症する遺伝性周期性四肢麻痺と、薬剤や内分泌系基礎疾患などを根本原因に有する二次性周期性四肢麻痺の二つに大きく分類することができます。
遺伝性周期性四肢麻痺
遺伝性周期性四肢麻痺は、現在までのところSCN4A、CACNA1Sと呼ばれる二つの遺伝子異常が原因として同定されています。これらの遺伝子はいずれも筋肉における「イオンチャネル」と呼ばれるタンパク質を生成するのに重要な働きをしています。
筋肉を自発的に動かすためには、筋肉細胞における電解質濃度が適正に調整をうける必要があります。イオンチャネルは、この電解質濃度の調整を行うのに重要な役割を担っています。遺伝性周期性四肢麻痺で見られる同定されている遺伝子異常が存在すると、細胞内での電解質濃度が異常を生じることになり、結果として筋肉を動かすことに支障が生じることになります。
遺伝性周期性四肢麻痺は、常染色体優性遺伝と呼ばれる遺伝形式をとることも知られています。この遺伝形式では、両親いずれかが病気を有していると、お子さんに病気が伝わる可能性が理論上50%になります。
二次性周期性四肢麻痺
血液中のカリウムが異常をきたすと周期性四肢麻痺が発症することも知られています。遺伝的な要素が関与していない場合でもカリウムの濃度が異常を示すことがあり、二次性周期性四肢麻痺と呼びます。
二次性周期性四肢麻痺の原因、すなわちカリウムの濃度が異常を示す原因としては、薬剤(利尿剤が代表的です)、内分泌疾患(甲状腺機能亢進症やアジソン病など)、腎不全、消化管からの喪失(長期的な嘔吐や下痢)などを挙げることができます。
症状
周期性四肢麻痺の症状は、自分自身の意識をもって動かせる「骨格筋」と呼ばれる筋肉が動かなくなる麻痺発作が一般的です。
自覚症状としては、
- 足が動かなくなる
- 手が動かなくなる
といった症状を感じるようになります。発症しやすい時間帯は深夜から早朝にかけて多いです。麻痺の程度には幅があり、完全麻痺を起こすこともあれば、筋力がおちたかなと感じる程度のこともあります。発作の持続時間もさまざまですが、通常は数時間以内に自然軽快します。
また基本的には手足の麻痺発作であることが多く、呼吸や心臓の動きに異常をきたすことはまれです。周期性四肢麻痺では、誘因となる因子が同定できることもあります。具体的には、運動や食事内容、妊娠、精神的ストレスなどが誘因となります。
検査・診断
カリウム値のチェック
周期性四肢麻痺では、カリウムの異常が存在することから発作が生じることが知られています。したがって、血液検査を行いカリウムの値をチェックします。なかには、カリウムの異常が著しく、不整脈を伴うことがありますので、心電図で不整脈の検索が行われることがあります。また、より詳細に状況を確認するために、筋電図検査や筋生検などのやや侵襲性の高い検査が行われることもあります。
その他の因果関係
周期性四肢麻痺では、基礎疾患に対しての検索も重要です。たとえば、日本人であれば甲状腺機能亢進症が影に隠れていることもあるので、TSHやfree T3、freeT4といった甲状腺関連のホルモンを測定することも重要です。また遺伝性周期性四肢麻痺においては、遺伝子異常を原因として発症することもわかっており、遺伝子検査を行うことが検討されます。
治療
周期性四肢麻痺では、誘因となる発作状況が同定できることもあり、発作を起こさないように環境を整備することが大切です。たとえば、前日の夜にお酒を大量に摂取することが誘因になることもあるため、過度の飲酒を避けるなどの工夫も必要です。
二次性周期性四肢麻痺
二次性周期性四肢麻痺では、麻痺の発作を誘発する基礎疾患が存在しており、基礎疾患に対しての治療アプローチも求められます。甲状腺機能亢進症が存在する場合には
- 内服薬治療(チアマゾールやプロピルチオウラシル)
- ラジオアイソトープ
- 手術療法
などが適宜選択されます。
遺伝性周期性四肢麻痺
遺伝性周期性四肢麻痺では、アセタゾールアミドの予防内服が行われます。血液中のカリウムの値に応じて、カリウム製剤や利尿剤を併用することもあります。周期性四肢麻痺の発作が生じているときには、別途治療介入が検討されます。特に低カリウム血症に伴う周期性四肢麻痺は持続時間も長いため、カリウム製剤を補充することで治療が行われます。一方高カリウム血症に関連した周期性四肢麻痺の発作は無治療であっても持続時間が短いことから、経過観察されることもあります。
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