概要
外傷性視神経症とは、広義では、頭部外傷や顔面の多発外傷により視神経が直接損傷されることを指します。頭を打った衝撃が、眼球から脳への視覚情報を伝える視神経に損傷を与え、視力低下を起こします。狭義の外傷性視神経症とは、片側の眉毛部外側の鈍的外傷による介達性の損傷のことを指します。症状としては軽症のこともありますが、失明に至るほど大きく視力が低下することもあります。
原因
頭部、顔面の打撲のうち、特に眉の外上方の打撲が原因のことが多く、打撲を受けた側の視神経が障害されます。視神経の包まれている頭蓋骨の部位を視神経管といいます。頭部打撲の衝撃が骨を通して視神経管に集まり、神経線維が断裂したり浮腫を生じたりします。視神経管の中で浮腫が起こることによって神経が圧迫され、さらに障害が進みます。視神経管骨折は必ずみられるわけではありませんが、視神経管骨折を伴うこともあり、その場合は、より病態は重篤になります。
症状
打撲した側の眼の視力が急激に低下します。また、視野の中心、見ようとしたところが暗く見える(中心暗点)・視野の周囲が見えにくい(求心性視野狭窄)・視野の上半分または下半分が見えない(水平半盲)などが生じることがあります。これらの症状は受傷直後から現れることが多く、時間が経過してから生じることはまれです。
検査・診断
光に対する瞳孔の反応(対光反応)の診察が有用とされています。相対的瞳孔求心路障害が陽性になります。左右の眼に連続して交互に光を当てます。本来なら光が当たると瞳孔は小さくなりますが、視神経に異常がある側では反対に瞳孔が大きくなります。対光反応を確認した後、瞳を開く点眼薬を使用して眼の奥(眼底)を観察し、他に視力低下の原因がないかを調べます。眼底検査では、特に視神経乳頭部分の診察を行い、左右差を比較します。受傷後数日では、視神経乳頭の色調は良好であることが多いのですが、数週間経過すると次第に蒼白化してくるといわれています。
また、外傷の重症度が低く、安静の必要がない場合は、視力検査で視力が下がっていないかを確認し、視野検査で中心暗点や水平半盲などの広い範囲の視野異常がないかを確認します。また、中心フリッカー検査という素早く点滅する光をどの程度まで点滅していると認識できるかという検査があります。
さらに、頭部、顔面部のCT検査で視神経管骨折や、視神経を直接圧迫するような出血がないかを確認しますが、多発外傷の場合、骨折部位が視神経管に限局しているとは限らず、視神経管骨折を併発していないケースもみられます。以上のことから、診断は、各種画像診断、臨床所見、病歴などから総合的に判断する必要があります。
治療
薬物療法と手術療法があり、まずは薬物療法を行います。しかし、確実に有効とされる治療法はありません。治療してもしなくても効果は変わらないという論文もあります。
薬物療法は神経の浮腫を軽減し圧迫を解除することが目的で、高容量のステロイド(メチルプレドニゾロン)の全身投与と高浸透圧薬を投与します。ステロイドの効果がみられない場合は視神経管開放術という減圧手術を行います。これも視神経の圧迫を改善するのが目的で、視神経管の骨を除去することで減圧を図ります。
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