概要
外陰上皮内腫瘍(VIN:vulvar intraepithelial neoplasia)とは、女性の外陰部にできる腫瘍のうち、外界と接する上皮細胞内にとどまっているすべての腫瘍の総称です。
※上皮細胞にとどまっておらず、間質細胞に浸潤している外陰がんは、外陰上皮内腫瘍に含まれません。
外陰部とは、女性の生殖器のうち体表の皮膚が変化した部分のことで、膣の入り口や尿道の入り口、会陰、肛門などを含みます。
外陰上皮内腫瘍には、無治療で自然に治るもの、がん化する可能性があるものなど、さまざまな性質の腫瘍が含まれています。悪性度や発症原因により、それぞれ治療の必要性などが異なるため、新WHO分類(第4版)では外陰上皮内腫瘍を以下3種類に分類しています。
原因
外陰上皮内腫瘍には、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染と関連して生じるものと、HPV感染が関連しないものがあります。
HPV感染に関連する外陰上皮内腫瘍
HPV感染をきっかけとする外陰上皮内腫瘍は、比較的若い方に発症しやすいとされています。特にHPV16型とHPV18型の2種類はハイリスク型として知られており、外陰上皮内腫瘍の高度病変の大部分に関わっていることが分かっています。
HPV感染と関連しない外陰上皮内腫瘍
発生要因のひとつとして喫煙が指摘されていますが、完全に解明されているわけではありません。
HPV感染について
HPVに感染したとしても、必ずしも外陰上皮内腫瘍を発症するわけではありません。HPVは非常にありふれたウイルスであり、性経験のある成人女性のほとんどは、生涯に一度以上感染しているとされます。ただし、感染したとしても約90%は免疫のはたらきによって体内から消えていくため、何らかの病気に進展することはありません。外陰上皮内腫瘍は、HPV感染にさまざまな要因が加わって発症すると考えられていますが、その要因は完全には解明されていません。
症状
早期段階では、自覚症状は現れない場合があります。外陰上皮内腫瘍が進行している場合や悪性度が高い場合には、以下のような症状が現れることがあります。
外陰部の白斑は、外陰上皮内腫瘍のうちdVINにみられることが多い症状です。
また、HPV感染に関連して生じる高度病変のHSILでは、外陰部の広い範囲に多数の病巣が生じ、症状をきたすことがあります。
検査・診断
外陰上皮内腫瘍の診断のために行われる検査には、次のものがあります。
視診
触診
腫瘤の有無や痛みの有無などを、直接触れることで調べる検査です。
コルポスコープ診
コルポスコープという拡大鏡を使って病変部を観察し、より小さな変化の有無を調べる検査です。外陰上皮内腫瘍のうちHSILの病巣は、肛門や膣、子宮頸部にも及ぶことがあるため、慎重な診察と検査が必要とされます。
生検
局所麻酔をかけたうえで、病巣の組織を採取する検査です。採取した組織を顕微鏡で詳しく調べ、診断を確定させます。
その他(画像検査・血液検査)
必要に応じてレントゲン検査やCT検査、MRI検査などの画像検査や、腫瘍マーカーを確認する血液検査が行われます。これらの検査により、がん化していないか、病気が他の臓器に広がっていないか、経過観察中に変化が起きていないか、といったことを確認することができます。
治療
治療を行う必要があるかどうかは、外陰上皮内腫瘍の性質により異なります。
- LSIL:無治療でも自然に治まり消えるものが多いため、基本的に経過観察となります。
- HSIL:一部はがん化することがあるため、一人ひとりの状態に応じて治療を行うかどうか選択されます。
- dVIN:悪性度が高い傾向にあるため、治療が必要です。
手術
治療の第一選択は切除手術です。外陰部に切除を加える手術に際しては、病変部位を完全に取り除くことだけでなく、性交障害や排尿時の異常を最小限に抑えることや、患者さんの精神的な苦痛を軽減することも重要です。
そのため、可能な場合は外陰部の深い部位まで切除を加えない剥皮的な方法や、陰核(突起部分・クリトリス)を残す方法が検討されます。また、広範囲を切除しなければならない症例では、切除後に皮膚移植による外陰形成術も追加されることがあります。
薬物治療
LSILやHSILの一部に対し、塗り薬が用いられることがあります。ただし、塗布薬の有効性ははっきりと確認されているわけではなく、現時点では研究段階にあります。(2018年8月時点)
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