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外鼠径ヘルニア

大腸・小腸

目次

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概要

ヘルニアとは、生まれつきもしくは生まれた後に生じた組織の脆弱(ぜいじゃく)な部分を通して、臓器や組織の一部分が飛び出てしまった状態のことをいいます。お腹の壁(腹壁(ふくへき))は、固くて強い筋膜と筋肉、またその内側の腹膜という薄くて伸びやすい膜でできており、腸などの内臓をお腹の中に留める役割を果たしています。しかし、筋膜に欠損があったり脆弱な部分が生じたりすると、そこに腹圧が集中し腹膜がたるんで袋(ヘルニア嚢)を形成します。このヘルニア(のう)を通じて腸などの臓器が皮膚の下に脱出してしまった状態が腹部のヘルニアであり、いわゆる〝脱腸″のことです。腹部のヘルニアのうち、80%は太腿の付け根の鼠径部(そけいぶ)という場所に起こり、これを鼠径ヘルニアと呼びます。

さらに、鼠径ヘルニアは、鼠径部のどの部位から内容物が出てくるかという違いによって、主に内鼠径ヘルニア、外鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアという3種類に分けられます。そのうち、外鼠経ヘルニアとは、内鼠経輪(鼠径管という4cm長の管の入り口を指します。鼠経管は男性の場合は精索、女性の場合は子宮円索の通り道になっています。)から鼠経管を通って、腸が皮膚の下に出るものをいいます。鼠経ヘルニアのなかでは頻度の高いものであり、子どもの鼠径ヘルニアの多くがこのタイプです。そのほか、内鼠径ヘルニアと大腿ヘルニアについては以下の通りです。

内鼠径ヘルニア

内鼠径輪のさらに内側の部分の腹壁が弱くなり、空間ができ広がることで、そこから直接皮膚の下に腸が出てくるものをいいます。加齢によって腹壁が脆弱になることが原因となることから、小児には少ないタイプのヘルニアです。

大腿ヘルニア

下肢につながる血管の通り道(大腿輪といいます)の隙間から腸が飛び出たものです。大腿輪は女性でより広いという特徴があるため、女性に多いタイプのヘルニアです。

原因

鼠経ヘルニアには、生まれつき(先天性)の原因と、生まれた後に生じる(後天性)原因があります。

先天性の原因

生まれつきヘルニア嚢があるために乳幼児のときから鼠経ヘルニアを起こすものです。男児に多く、自然に改善することもありますが、多くは手術治療が必要となります。学童期や、成人になってから発見されることもあります。

後天性の原因

加齢によって筋力が低下し、腹壁そのものが脆弱になることが一因とされています。また、長時間の立位での作業であったり、慢性的な便秘・咳があったりするなど腹圧がよりかかりやすい状況も、ヘルニアを起こす原因のひとつとされます。

症状

鼠径部に膨らみができ、不快感や違和感、あるいは痛みを生じます。立位時に膨らみができたり、違和感をおぼえたりするものの、横になると膨らみがなくなる(脱出した腸などの内容物がお腹の中に戻るため)という姿勢による変化も、鼠径ヘルニアでよくみられる症状です。


また、腸の一部がヘルニアの通り道にはまり込んで、中に戻らなくなってしまった状態のことを「嵌頓(かんとん)」といいます。この場合、横になっても脱出した内容物はお腹の中には戻らず症状は改善しません。これを放置すると腸の血流が悪くなって、腸閉塞(腸の中で内容物の流れが滞ること)を起こしたり、腸が壊死してしまったりすることがあり、強い腹痛・嘔気・嘔吐などの症状を生じます。鼠径ヘルニアが嵌頓を起こす確率は年間0.3~3%とされています。嵌頓を起こした場合には、緊急で治療が必要となります。

検査・診断

多くは、膨らんだ鼠径部の様子を観察したり、触診(手で触って確認すること)したりすることで診断をおこないます。必要に応じて、より詳しく調べるために超音波検査(エコー検査)やCTスキャンの検査を行う場合もあります。

治療

成人の鼠径ヘルニアは自然に治ることはなく、時間がたつと増悪してくるため、根治のためには手術治療が必要です。外鼠経ヘルニアを含む鼠経ヘルニアにおいて、基本的な手術治療に違いはありません。脱出した内容物を、手で簡単にお腹の中に戻せ、症状がない場合、しばらくの期間は経過観察をすることもあります。嵌頓を起こしている場合には、緊急手術が必要となります。
以下に代表的な手術法を示します。

鼠径部切開法

鼠径部に3~4cmほどの切開を行います。まず、筋肉や靭帯の隙間であるヘルニア門(内容物が飛び出す出口)から出てきたヘルニア嚢を、周りの組織からヘルニア門の裏側まで丁寧にはがしていきます。その後にヘルニア嚢を切除もしくは還納(元の場所に戻すこと)して、ヘルニア門を閉鎖もしくは縫い閉じます。以前は、ヘルニア門を縫い閉じる手法が多く用いられていましたが、縫合した部分に緊張がかかってしまい再発することがありました。そのため、近年ではメッシュという人口の膜をヘルニア門にあてがうことで緊張をなくして補強する方法(メッシュ法)が最も広く行われています。

腹腔鏡を用いた手術

おへそと左右の下腹部に、5~10mm程度の小さな穴を3か所開け、おなかの中に腹腔鏡(内視鏡の一種)を挿入します。ヘルニア門をお腹の中側から観察し、メッシュでヘルニアの隙間を閉鎖します。手術を行うためには全身麻酔が必要となりますが、傷口が小さくすむため術後の社会復帰がしやすいというメリットがあります。

これら手術による合併症としては、人工物であるメッシュに対して炎症を起こすことで傷口の違和感が生じたり、神経を巻き込んだりすることで慢性的な痛みを起こすことなどがあります。手術後に、メッシュが縮んだり、位置がずれたりすることによる再発は1%程度とされています。

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