治療
大動脈瘤があまり大きくない場合には血圧コントロールなどで経過観察を行いますが、残念ながら薬物治療で大動脈瘤が小さくなることはありません。
破裂の危険性が出てきた大動脈瘤に対しては治療を考慮する必要がありますが、大動脈瘤の治療には大きく分けて“人工血管置換術”と“ステントグラフト治療(ステントグラフト内挿術)”の2つの方法があります。
人工血管置換術
人工血管置換術とは、胸やお腹を切開して大動脈瘤を切除した後、切除した部分を人工血管に置き換える治療法です。1954年に世界で初めての手術が行われ、以後、進歩を遂げてきた大動脈瘤の標準的な治療法といえます。
胸の大動脈瘤(胸部大動脈瘤)に対する人工血管置換術では、人工心肺という装置を使って心臓を停止させた状態で手術を行う必要がある場合があります。そのため、患者さんの身体的な負担が大きく、場合によっては脳梗塞や心不全、心筋梗塞といった合併症が起こる可能性があります。また、対麻痺(両足が動かしにくくなる状態)や腹部臓器の障害などの合併症を引き起こすこともあります。
ステントグラフト治療
ステントグラフト治療とは、カテーテルを使ってステントグラフト(金属性のバネ)を血管内に留置し、瘤の中への血液の流入を防ぎ破裂を予防する治療法です。カテーテルを使って治療ができるため、人工血管置換術に比べて患者さんにかかる身体的な負担が少ないという特徴があります。
起こりうる合併症としては、動脈壁の損傷、塞栓症(脳梗塞や腎梗塞、腸管虚血、下肢虚血など)、ステントグラフトの閉塞や狭窄、ステントグラフトのずれなどがあります。
また、術後の問題点として、大動脈瘤への血液の流入が残存するエンドリークが挙げられます。エンドリークによって瘤が破裂する危険性がある場合には再手術を検討します。
治療の選択
どちらの治療を行うかは、患者さんの全身状態や大動脈瘤の状態などを考慮したうえで決定します。ステントグラフト治療には解剖学的な制約があり、大動脈瘤の形がステントグラフトに合わない場合などには治療ができないことがあります。そのため、ステントグラフト治療を希望される場合には、CT検査で詳しく大動脈瘤の形をみたうえで実施を検討します。
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