概要
子宮頸管ポリープとは、子宮の下部に位置する“子宮頸部”に生じる腫瘤であり、ほとんどが良性です。子宮は女性特有の臓器であり、上部の袋状の“子宮体部”と、腟とつながっている下部の筒状の“子宮頸部”に分けられます。子宮頸管ポリープは、主に子宮頸部の粘膜の組織が増殖することによって生じます。
子宮頸管ポリープは子宮頸部に生じる腫瘤のうちもっとも一般的な腫瘤で、成人女性のおよそ2~5%にみられるといわれています。幅広い年齢の患者が存在しますが、特に分娩を経験している若い方や40歳代以降の人に発症しやすいと考えられています。ほとんどが良性ですが、ごくまれに治療後に悪性であったことが分かるケースもあります。
原因
子宮頸管ポリープが発生する原因は、まだ明らかになっていません。現状では、慢性の炎症や女性ホルモン、感染症などの関与が指摘されています。
症状
子宮頸管ポリープが生じても、無症状である場合が少なくありません。そのため、検診やほかの婦人科疾患で行った内診などをきっかけに発見されることもあります。
症状がある場合は、生理でない時期の出血や生理中の出血量の増加、性交渉後の出血、閉経後の出血など不正出血がみられることがあるほか、おりものが増加することもあります。
検査・診断
子宮頸管ポリープが疑われる場合には、内診を行います。内診では、子宮頸部を詳しく観察するために“クスコ診”と呼ばれる検査を行うことが一般的です。クスコ診とは、腟から“クスコ腟鏡”と呼ばれる器具を挿入し、腟を広げることによって腟の奥深くにある子宮頸部の様子を観察する検査です。
クスコ診では、子宮頸管ポリープを肉眼で観察することが可能です。子宮頸管ポリープは過半数が1cm未満であるといわれていますが、中には2~3cmほどものもあり、大きさにはばらつきがあります。ポリープの色味は通常、赤やピンク色ですが、感染や壊死を生じていると白色に見えることもあります。ポリープの形状は球形、あるいは楕円形といわれ、子宮頸管から指や棍棒のようなものが突き出したような見た目をしています。
腫瘤の存在自体はクスコ診で比較的容易に見つけられます。ただし、子宮頸管ポリープに似た病変を持つほかの病気と判別がつかない場合は、病変を切除して詳しく調べる“組織学的検査”を行うこともあります。以下では、子宮頸管ポリープとよく似た病変を持つ病気をいくつかご紹介します。
子宮頸管ポリープと見分けがつきにくい病気
など
治療
子宮頸管ポリープが発見された場合、一般的に多くは経過観察となりますが、他の病気と鑑別が必要な場合は、手術治療による切除と組織学的検査を検討します。これを“頸管ポリープ切除術”といいます。手術治療を検討する理由としては、ほかにも似たような病変を形成する病気があり、クスコ診だけでは判別できない可能性が高く、確定診断のために組織学的検査が必要となることが挙げられます。手術を検討する際は事前に患者とよく相談して判断し、可能な限り外来で行われます。ただし、病状によっては入院が必要となることもあります。
一方で出血やおりものなどの症状がなく、腫瘤の大きさや性状などさまざまな観点から“扁平上皮がん”“腺がん”“肉腫”などのがんであるリスクが低いと判断された場合は、手術治療を行わず、経過観察となることもあります。
手術治療
子宮頸管ポリープの手術治療には、主に“捻除術”“結紮・切除術”“焼灼切除術”などの方法があります。
捻除術
ポリープの根元部分を特殊な鉗子と呼ばれる手術器具で挟み、一方向に捻ることによってポリープを捻り切る方法です。傷が小さく、出血量が少なく済むため、治療後の処置が少ない点が特徴です。ただし予想以上の出血が生じた場合には、止血を行うこともあります。
結紮・切除術
主に茎部分が太いポリープに対して行われる手術方法です。ポリープを縛って血流を滞らせた状態で、メスなどを用いて切除します。
焼灼切除術
ポリープの茎が分かりにくい場合や根が深い場合などに検討される手術方法です。“レゼクトスコープ”と呼ばれる子宮内をみる内視鏡を用いて病変を詳しく観察したうえで、電気メスやレーザーメスでポリープを焼き切る治療法です。レゼクトスコープを利用することにより、ポリープの取り残しや子宮体部に生じる“子宮内膜ポリープ”の合併を見落としにくくなるといわれています。
妊娠中に子宮頸管ポリープが発見された場合
妊娠中に子宮頸管ポリープが発見された場合の治療については、ポリープからの出血や感染を予防するためにすぐに手術治療で切除すべきという意見もあれば、手術そのものが流産や破水を誘発する恐れがあるため妊娠中は経過観察とするべきという意見もあります。
特に妊娠10~20週で子宮頸管ポリープがある方は、ポリープによる絨毛膜羊膜炎や頸管開大が起こる可能性もあるため、必要に応じて手術治療や抗菌薬の投与が検討されます。妊娠中に子宮頸管ポリープが見つかった場合は医師とよく相談し、治療方針を決定しましょう。
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