概要
帯状疱疹後神経痛とは、水痘帯状疱疹ウイルスと関連して生じる神経の痛みを指します。疲れや睡眠不足、ストレスなどをきっかけとして、体内に潜む水痘帯状疱疹ウイルスは活発化し、皮疹や神経の痛みを引き起こします。神経の痛みの程度はさまざまですが、酷い場合には夜間も眠れないほどの痛みが生じることもあります。皮疹がおさまった後もしばらくのあいだ痛みが残ることがあり、この状態を帯状疱疹後神経痛と呼びます。
原因
帯状疱疹後神経痛は、水痘帯状疱疹ウイルスを原因として発症する神経痛を指します。水痘帯状疱疹ウイルスはいわゆる水疱瘡(みずぼうそう)の原因ウイルスであり、一度感染するとヒトの体内に潜伏することが知られています。
水痘帯状疱疹ウイルスは神経への親和性が高く、症状を引き起こさない状態であっても神経の中に潜むことになります。疲れや睡眠不足、ステロイド使用に関連した免疫機能低下、がん、ストレスなどの状況においては、神経に潜んでいた水痘帯状疱疹ウイルスが再度活性化することがあります。水痘帯状疱疹が再度活性化すると神経分布に一致した領域において皮疹(ひしん)や神経痛が生じますが、この状態を帯状疱疹と呼びます。帯状疱疹は、加齢と共に生じやすくなることも知られています。
帯状疱疹が発症した後、再度自身の免疫機能がはたらくことでウイルスの活動が抑制されることになります。しかし、水痘帯状疱疹ウイルスの制御機構がうまくいかない場合には、神経が著しく損傷を受けることがあります。神経障害が強く残ると帯状疱疹が治癒した後も神経の痛みが残存することになり、このようにして発症する病態を帯状疱疹後神経痛と呼びます。
症状
帯状疱疹では神経領域に一致して皮疹が生じることが特徴的ですが、明らかな皮疹が出現する前にぴりぴりした痛みや触られた感覚の低下などを自覚するようになります。神経領域によっては、めまいや耳鳴り、表情を作る筋肉の麻痺とそれに関連した表情の違和感などの症状を自覚することもあります。痛みはとても強く、夜も眠れないほどの痛みであることもあります。
帯状疱疹による皮膚症状が消失した後も痛みだけが残存することがありますが、この状態を帯状疱疹後神経痛と呼びます。帯状疱疹後神経痛の痛みは特徴的であり、下着がこすれるなどのわずかな刺激でも強い痛みが誘発されます。痛みの誘発は、端から見ると大げさにも見えることがあり、帯状疱疹後神経痛が心因性のものであると勘違いされることもあります。また、帯状疱疹後神経痛の痛みは長期間続くことも特徴的であり、月単位で持続します。
帯状疱疹後に神経痛が残存するかどうかは、さまざまな因子が影響しています。高齢者ほど帯状疱疹後神経痛を発症しやすく、また皮疹や痛みの程度が強い場合も神経痛が長期間残りやすいことが知られています。
検査・診断
帯状疱疹後神経痛を診断するためには、帯状疱疹に関連した症状(神経領域に一致した神経症状や皮疹)を確認することが重要です。帯状疱疹ウイルスの再活性化と病気の発症が関連しているため、帯状疱疹早期の段階で血液検査を行い、IgM抗体を測定することもあります。
治療
帯状疱疹後神経痛では、痛みに対してのコントロールを図ることが重要です。治療薬の選択肢はさまざまありますが、第一選択薬としては三環系抗うつ薬(アミトリプチリン 、イミプラミンなど)、ノルトリプチリン、プレガバリン、ガバペンチンなどを例に挙げることができます。そのほか、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤、オピオイド製剤などの使用も検討されます。
帯状疱疹後神経痛による痛みのコントロールに際しては、内服薬以外に該当神経領域に対しての神経ブロックも考慮されます。痛みに関連して心理的な要素が関与していたり、筋力低下がみられたりすることもあります。これらに対応するために、心理療法や理学療法を取り入れることもあります。
帯状疱疹後神経痛を一度発症すると、完全に痛みを取り除くことは難しいとされています。痛みのために生活の質が著しく障害されることも懸念されるため、帯状疱疹を発症した段階でより積極的な痛み・ウイルスのコントロールを行うことが重要です。具体的には、痛みのコントロールのために内服薬や神経ブロックを行うことはもちろん、ウイルス量を減らすために抗ウイルス薬を早期の段階から使用することが推奨されています。
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