せいぶんかいじょうしょう

性分化異常症

概要

ヒトの男性女性の性別は、染色体(X染色体とY染色体の組み合わせ)、性腺(精巣や卵巣)、肉体的な性(外性器や子宮の有無、二次性徴など)によって決定されます。性別は胎児が子宮の中にいるときから、さまざまな過程を経て決定されますが、性分化疾患(DSD/ Disorder of Sex Development)は、胎内での性分化が一般的な形と異なり、典型的に進まない状態を指します。その結果、生まれたときに外性器の特徴で性別を判別することが難しい、もしくは生まれるまでに何らかの理由で性分化の過程がうまくいかず治療を必要とする、また、本来の性染色体の組み合わせ(核型)とは異なる性をもって生まれてくる、といった状況が起きることとなり、これらを性分化疾患と定義しています。

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原因

男女の性別は、赤ちゃんがもつ性染色体によって規定されます。性染色体の組み合わせが「XY」だと男性に、「XX」の組み合わせだと女性になります。こうした性染色体の組み合わせに応じて、XYの組み合わせであれば性腺は精巣に、XXであれば卵巣がつくられます。「性腺」は、配偶子(精巣→精子・卵巣→卵子)を作ると同時に性ホルモン(男性ホルモン・女性ホルモン)を産生します。

特に男性ホルモンの量は性分化においては重要な意味合いを持っており、男性ホルモンが存在すると性腺は精巣へと分化し、男性ホルモンが十分量はたらかない状況では卵巣へと変化します。さらに、性腺の分化に対して重要なはたらきをするのみに限らず、その他の内性器(子宮や卵管、精巣上体、前立腺など、男女いずれかにしか存在しない臓器)や外性器(陰茎や陰唇など)が形付けられていきます。こうした過程に異常が生じることを原因として、性分化疾患は発症します。

男性ホルモンは、精巣以外にも副腎でも産生されています。そのため、副腎において過剰に男性ホルモンが産生される場合、本来は女児であるはずなのに外性器が男性のようになってしまう性分化疾患もあります。また、性染色体の組み合わせは「XY」と「XX」のいずれかなのが正常ですが、性染色体の組み合わせに異常が生じることを原因として性分化疾患を発症することもあります。さらに、男性ホルモンはうまく産生されるのに、うまく臓器に対して作用できないといった状況でも性分化疾患発症になりえ、精巣女性化症候群と呼ばれています。

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症状

男性女性の性別決定は、外性器の形をもとにして胎内において推定され、出生後すぐになされます。性分化疾患のなかには、外性器の形が男性とも、女性ともいえないような曖昧さを伴うことがあります。近年では、胎児エコーの技術も発達し、場合によっては胎内にいるときにもわかることもあります。

しかし、性分化疾患のなかには外性器決定には困難を伴わず、しかし実は性腺や内性器レベルでは逆の性別であることもあります。すなわち一部の疾患では、「二次性徴がこない」など生後しばらくたってからわかることもあります。たとえば、精巣女性化症候群では男性ホルモンのはたらきが不十分であり、外性器は女性になります。しかし、内性器や性腺レベルでは女性とは異なる特徴を呈するため、二次性徴が進まないことから診断がされることもあります。

症状が極めて軽微な場合には、仮に性分化疾患と診断できる状態であったとしても気がつかないまま生涯を終えられる方もいると考えられています。そのような意味では性分化疾患がみつかる時期はさまざまで、必要とされる時期に最も適切な対応をすることが医療者には求められます。

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検査・診断

性分化疾患は、染色体レベル、性腺、内性器、外性器それぞれのレベルにおいて、男性なのか女性なのかを決定することが重要になります。

染色体レベル(すなわちXYであるのか、XXであるのか、それとも全くそれ以外の染色体であるのか)を決定するためには、通常血液の検査で知ることができますが、まれに頬の粘膜など血液以外の組織を必要とする場合があります。

次に、性腺が精巣か卵巣いずれかを調べます。性腺の状態はもちろん、性腺がどのくらい機能しているかを知ることが重要です。これらは、血液や尿で調べることができます。一部、薬を投与してその後数回の採血をして調べる負荷試験が必要になることもあります。また性腺外見や位置を確認するために、一般に画像検査、超音波検査やMRI検査を行います。

内性器、外性器の状態を詳細に調べるために、入念な診察と画像検査を行います。画像検査は、性腺と同様MRIが最も大きな威力を発揮しますが、尿道と膣がどのような状態か知るために造影の検査が必要になることもあります。

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治療

性分化疾患の治療には、急性期において医療的な介入が求められる疾患もありますが、それ以外にも社会的な問題や本人の性別に対しての認識など、多種多様な側面に対しての介入が必要とされます。妊孕性についての問題をはらむこともありますが、現在のところ適切な治療方法があるとはいい難い状況です。

性分化疾患の治療では、出産直後から長期的に渡り、短時間のうちに解決する問題ばかりではありません。そのため、医療者がご家族のみならずご本人とも良好なコミュニケーションを確立していくことは大変重要であり、欠かせません。たとえば、新生児~乳児期であれば、医療的方針は原則ご家族と話し合って進めていきます。しかし、ご本人が幼児~学童と成長すれば、いろいろなことを理解し始め自分が置かれている状況と向き合うことになります。

より詳しい情報は、記事①記事②記事③をご参照ください

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