概要
慢性下痢とは、1日に3回以上、3週間以上、下痢が続く状態を指します。下痢の程度や原因はさまざまです。
原因
原因として多いのは、ストレスや生活習慣などによって発症する過敏性腸症候群です。また、そのほかの原因として、クローン病や潰瘍性大腸炎といった疾患を含む炎症性腸疾患が挙げられます。これらの病気は、自分自身の免疫細胞が異常をきたす結果として、腸に対しての慢性炎症が生じる病気です。
そのほか、感染症が原因となって発症することもあります。慢性下痢で問題になる病原体は、不衛生な環境での食物摂取、水分摂取などを原因として体内に取り込まれます。
また、内分泌疾患(甲状腺機能亢進症や糖尿病など)、アレルギー(グルテンやミルクなどに対して)、薬剤なども慢性下痢の原因として挙げることができます。
慢性下痢の原因は多岐に渡るため、効果的な治療につなげるためにはしっかりと原因を特定することが大切です。
症状
3週間以上下痢が続きます。下痢の回数はさまざまですが、1日に3回以上の排便がみられます。また下痢が起こるタイミングもまちまちであり、過敏性腸症候群ではストレスがかかる状況、トイレに行きにくいような状況(たとえば長距離移動中の電車のなかなど)でみられる傾向があります。
下痢の性状として、水様性下痢が主体なこともある一方、下痢に血液が混じることもあります。下痢中に血液が混じるのは、炎症性腸疾患でみられることの多い症状です。慢性的な下痢が続くと、体力が消耗することから徐々に体重が減少することもあります。
また、原因疾患に応じてそれに伴う症状が異なることもあります。
たとえば、過敏性腸症候群では下痢だけでなく便秘の症状が出ることもあります。炎症性腸疾患では、発熱や貧血症状などが起こることもあります。下痢以外の症状に注目することは、原因となっている疾患を推定するうえでも重要といえます。
検査・診断
慢性下痢の原因となっている病気を診断するための検査がおこなわれます。
感染症の有無を評価するために、便を用いた培養検査や虫卵検査をおこないます。便を用いて潜血の有無、吸収障害の有無を確認します。
慢性下痢では、内視鏡検査をおこなうことも検討されます。そのほか、血液検査を用いて貧血、栄養状態の確認などもおこないます。また、エコー検査、CT、MRIなどといったが画像検査も検討されます。
治療
治療方法は、原因によって異なります。
炎症性腸疾患が原因となっている場合には、ステロイドや免疫調節剤などを用いた治療が検討されます。過敏性腸症候群では、薬物療法に加えて、食事療法や運動療法なども取り入れられます。感染症が原因となっている場合には、病原体に効果の期待できる薬物を用います。
慢性下痢では、対症療法的(原因ではなく症状に対する治療)に止痢薬を用いることがありますが、原因によっては病状を悪化させるため使用には注意が必要です。
また、脱水が起きている場合には、経口補液や輸液の適応についても検討します。
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