せいちょうほるもんぶんぴふぜんせいていしんちょうしょう

成長ホルモン分泌不全性低身長症

最終更新日
2017年04月25日
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2017/04/25
掲載しました。

概要

成長ホルモン分泌不全性低身長症とは、身長の伸びに重要なホルモンである「成長ホルモン」が不足することから身長が低くなる病態を指します。原因は多岐にわたり、周産期の異常がきっかけになることもあれば、頭蓋咽頭腫などの脳腫瘍を原因として発症することもあります。また、原因を特定できない、特発性成長ホルモン分泌不全性低身が多いことも知られています。

身長は年齢とともに伸びますが、成長ホルモン分泌不全性低身長症ではいわゆる成長曲線から遅れて成長することになります。思春期が終了してからの最終的な身長も標準より低くなります。成長ホルモン分泌不全性低身長症の影響は、「成長のペース」や「最終的な身長」にとどまらず、成人になってからの動脈硬化の促進、精神面の変化などにも及ぶようになります。そのため、身長が低い幼小児期において、成長ホルモンの注射療法が適応になるのみならず、成人期に起きる動脈硬化などの成長ホルモン分泌不全病態に対しても、成長ホルモンの注射治療が行われます。

原因

脳の底には、「下垂体」と呼ばれる小さな器官が存在しています。下垂体はとても小さな器官ですがその役割は非常に重要であり、体の恒常性を保つために、さまざまなホルモンが分泌されています。成長ホルモンも下垂体で分泌されますが、これが思春期以前から低下・不足しているために発症する病気が、成長ホルモン分泌不全性低身長症です。

脳腫瘍の一部に「頭蓋咽頭腫」と呼ばれるタイプの腫瘍があります。頭蓋咽頭腫は、腫瘍発生部位が下垂体近傍であることから物理的な障害によって下垂体のはたらきが低下することが知られています。そのため、頭蓋咽頭腫では成長ホルモンの分泌が低下することがあります。また、脳腫瘍の治療の一環として、下垂体近傍に放射線治療を行うことがありますが、これに関連して下垂体機能が低下する場合もあります。

そのほかにも、出生時の異常を原因として成長ホルモン分泌不全性低身長症を発症することがあります。具体的には、新生児仮死や遷延黄疸などがそれに相当し、より早期の段階からの成長障害の発症につながります。また、発生学的な遺伝子異常を原因とすることもあります。しかし実際のところ、明らかな原因を同定できることは少なく、原因不明なまま発症するタイプが少なくありません。

症状

成長ホルモンの大きなはたらきに、骨を伸ばすことがあります。急激な身長の伸びがみられるのは思春期前後ですが、それまでの成長にも成長ホルモンの存在は不可欠であり、成長ホルモン分泌が影響を受け始めた時期に対応して身長の伸びが悪くなります。

単発の身長を評価することだけではわからないこともあり、母子手帳や小中学校の成長記録に記載されている身長の継時的な変化を、成長曲線に合わせてみることで、徐々に成長率が落ちていることを確認します。また、成長ホルモンは身体の代謝にも大きなはたらきを示し、成長ホルモン分泌不全性低身長症では脂質代謝のバランスが崩れます。その結果、成長ホルモンの分泌が低下している状況が長く続くことで動脈硬化の進行が促進され、心筋梗塞などの血管性病変発症のリスクが高まります。その他、抑うつ気分、やる気のなさ、性欲減退などの症状がみられることもあります。

検査・診断

成長ホルモン分泌不全性低身長症の診断には、身長が低いことの確認が重要です。年齢や性別によって平均的な身長の基準は異なるので、同年齢・同性の健常な方を対象とした平均身長と比較します。患者では一般に、平均身長のマイナス2SD(標準偏差)以下を示します。

また、成長ホルモン分泌不全性低身長症では、成長ホルモンの分泌が低いことを同定することが重要です。具体的には血液検査で、成長ホルモン分泌量と相関する「インスリン様成長因子-1(IGF-1)」と呼ばれる値を測定します。

実際に下垂体からの分泌が低下していることを確認するために、成長ホルモンの分泌負荷試験を行うことも重要です。一回の測定でははっきりしないため、複数回行うことで成長ホルモン分泌不全低身長症の診断を行います。

治療

成長ホルモン分泌不全性低身長症は、成長ホルモンを注射することで治療を行います。成長ホルモンはタンパク質の一種であり、経口摂取をすると消化されてしまい効果を発揮しなくなるため、注射による投与が必要です。治療に際して連日の注射を必要とするため、医師による指導の下、自分で注射を行うことになります。成長ホルモンの補充療法は、小児期のみならず成人期に対しても行うことができます。実際に適応になるかどうかを判断するためには、医療機関に相談することが大切です。

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