せいちょうほるもんぶんぴふぜんせいていしんちょうしょう

成長ホルモン分泌不全性低身長症

最終更新日
2023年12月27日
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2023/12/27
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

成長ホルモン分泌不全性低身長症とは、成長ホルモンが十分に分泌されず、同性・同年齢の子どもと比較して身長が低かったり伸びなかったりする病気です。発症頻度は、6~17歳の子どもで1万人あたり男児が2.14人、女児は0.71人とされています。

成長ホルモンは骨の成長に必要なホルモンで、脳の下垂体という部分から分泌されます。成長ホルモン分泌不全性低身長症では、下垂体の異常によって成長ホルモンが十分に分泌されず、身長の伸びが悪くなります。また、下垂体から分泌されるそのほかのホルモンの分泌不全を伴うこともあります。

治療では成長ホルモンを補充するために皮下注射を行います。早期に治療を始めることで、最終身長を標準に近付けることが期待できるといわれています。

原因

生まれつき下垂体の発達が悪かったり、脳腫瘍(のうしゅよう)などの病気によって下垂体に影響が及んだりすると、成長ホルモンが十分に分泌されなくなります。成長ホルモンは肝臓や骨に作用して身長を伸ばすはたらきがあるため、不足すると身長の伸びが悪くなります。

低身長の原因の約7割は、両親の身長が低い家族性や明らかな原因が見つからない体質性といわれるものです。このほか、骨や軟骨の病気、副腎、甲状腺の病気、慢性腎不全や、ステロイド薬の長期内服、栄養不足などによっても低身長を認めることがあり、実際には成長ホルモンの分泌不全によって低身長を認めるものは全体の約1割程度といわれています。

症状

同性・同年齢の子どもと比較して身長が低く、伸びないことが特徴です。出生時は低身長でなくても、年齢を重ねるごとに身長が標準値から離れていきます。また、低身長であっても手足と体のつり合いは取れており、年齢よりも顔つきが幼いといった特徴もみられます。

重症の場合は乳幼児の頃から低身長となり、低血糖などの症状を伴うこともあります。

このほか、病気によって成長ホルモンが十分に分泌されていない場合は、その病気の症状が現れることもあります。たとえば、脳腫瘍がある場合には頭痛や吐き気、視力の低下、けいれんなどがみられる可能性があります。

検査・診断

身長の伸びが悪かったり身長が低かったりする場合は、両親の身長や、母子手帳を参照して出生時の身長や体重などを確認します。出生時や定期健診などの身長・体重から成長曲線を作成し、低身長の原因をおおまかに推測します。

低身長の診断には、成長曲線のほかに“SD(標準偏差)スコア”が用いられます。SDスコアとは、子どもの年齢や性別ごとのデータをもとに身長が標準からどれだけ離れているかを算出する方法で、“(現在の身長-標準身長)÷SD(標準偏差)”という式で求められます。この結果が-2.0SD未満の場合に低身長と診断されます。

低身長と診断された場合は、原因を特定するために血液検査や尿検査、X線検査が行われるほか、頭部MRI検査を行い下垂体の状態を調べます。

このほか、成長ホルモンが十分に分泌されているかを調べるため、血液検査にてソマトメジンCと呼ばれるタンパク質の量を測定する必要があります。ソマトメジンCの値が低い場合は、さらに成長ホルモン分泌刺激負荷試験という検査を行います。この検査にはさまざまな種類や方法がありますが、主に内服や注射で検査薬を投与し、複数回の採血を行います。2種類以上の負荷試験で成長ホルモンの値が基準値を下回ると、成長ホルモン分泌不全性低身長症と診断されます。

治療

成長ホルモンを補充する治療が行われます。早期に治療を始めることで、最終身長を標準値に近付けられると期待されています。

治療では、ペン型の注射器を使って、1日に1回成長ホルモンを上腕や太もも、臀部(でんぶ)、腹部などに注射します。治療は毎日行うため、自己注射の指導を受けて自宅で家族や自身で実施します。なお、最近は1週間に1回の注射でよい製剤も出てきています。

成長ホルモンの投与は注射部位の赤みや膝・股関節痛(こかんせつつう)のほか、まれに血糖値の上昇などの副作用が報告されているため、治療中はかかりつけ医で定期的な検査が必要です。

このほか、治療の有無にかかわらず、成長発達のために規則正しい生活習慣を身に付けることや、バランスの取れた食生活、適度な運動、質のよい十分な睡眠を心がけることが重要とされます。

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