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子どもの低身長とは――背が伸びない原因は?

子どもの低身長とは――背が伸びない原因は?
田嶼 朝子 先生

埼玉県立小児医療センター 代謝内分泌科 医長

田嶼 朝子 先生

目次
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親にとって、子どもの健やかな成長は一番の願いです。自分の子どもが順調に成長しているか、周囲の子どもと比較して成長が遅いのではないかと心配になることもあるでしょう。身長は個性の1つであるものの、平均身長よりもかなり低い場合、あるいは身長の伸びが遅い場合などは、まれに病気が隠れていることがあります。病気であれば早期発見・早期治療が重要です。今回は、埼玉県立小児医療センター 代謝・内分泌科 医長の田嶼 朝子(たじま あさこ)先生に、子どもの低身長の原因について教えていただきました。

子どもの低身長とは、成長曲線を描いたときに-2.0SD以下の状態をいいます。

成長曲線とは、男女別に多くの子どもの身長・体重のデータを集め、年齢別にその平均値や標準偏差を表した曲線です。診断で用いるのは標準偏差曲線(SD曲線)で、平均からどの程度離れているかを評価します。-2.0SD以下の子どもは全体の2~3%ほどの割合でみられます。

MN作成
参考:日本小児内分泌学会

お子さんの低身長を理解するにあたり、子どもの身長は一定のスピードで伸びるのではなく成長過程によって違いがあり、成長できる期間が決まっていることを知っておくとよいでしょう。

乳幼児期の成長は栄養の摂取が大きく関わっており、4歳までに出生時の身長の約2倍に伸びます。小児期からは骨の細胞にはたらきかける“成長ホルモン”の分泌が大きく関わり、年間約6cmずつ身長が伸びます。思春期になると、男女あるいは個人により成長速度のピーク年齢は異なりますが“性ホルモン”により再び成長が加速し、ピークを過ぎるとやがて伸びが止まります。このほか、ホルモンの分泌量や生活習慣などによって身長の伸びには個人差があります。

子どもの低身長が起こる原因として、以下が挙げられます。

骨の長さを伸ばす“成長ホルモン”は脳の下垂体という場所で作られますが、何らかの原因によって下垂体が障害を受け成長ホルモンが分泌されなくなると、身長の伸びが悪くなります。また、甲状腺ホルモンの分泌が不足する“甲状腺機能低下症”でも、身長の伸びが悪くなることがあります。これらの病気による身長の伸びは、不足している成長ホルモンや甲状腺ホルモンを補う治療を行うことで改善できることがあります。

低身長がみられる染色体異常の病気として、ターナー症候群プラダー・ウィリ症候群などが挙げられます。

女子にみられるターナー症候群は、2,000人に1人程度の割合でみられます。低身長以外に、卵巣の機能が低下しているため思春期がみられず、心臓病や難聴などの合併症も起こり得ます。ターナー症候群では成長ホルモンや女性ホルモンを補充する治療を行います。

プラダー・ウィリ症候群は、低身長のほか性腺発育不全、乳幼児期の筋緊張低下、肥満、発達障害などの症状があり、10,000人に1人程度の割合で起こります。

遺伝子の異常により低身長のほか心臓の異常、特徴的な外見などがみられるヌーナン症候群という状態もあります。国内に600人ほどの患者さんがいるのではないかと推定されていますが、ヌーナン症候群は成長ホルモン治療の適応が承認されてから日が浅く、長期的な副作用に関する十分なデータが得られていません。したがって、治療を開始するにあたっては、さまざまなリスクを十分考慮する必要があります。

早産で身長や体重が小さく生まれた子ども、妊娠満期でも小さく生まれた子どもの多くは3歳までに身長がキャッチアップ(急速に成長が追いつくこと)しますが、まれに身長の伸びが悪いことがあります。特に妊娠週数に対して推定される身長・体重よりも小さく生まれた場合はSGA(Small-for-Gestational Age)性低身長症の可能性があり、一定の条件を満たせば成長ホルモンを補充する治療が行われます。

骨や軟骨の異常が原因の軟骨異栄養症(軟骨無形成症、軟骨低形成症)では、一部の骨が伸びにくく、胴と比べて手足が短いなど体型がアンバランスになります。遺伝が関係しますが、突然変異で子どもだけにみられることもあります。成長ホルモンを補充する治療や、希望があれば整形外科での骨延長術などが行われます。

心臓、肝臓、消化器などの臓器に異常があると、栄養を十分に取り込むことができないなどの理由で身長が伸びにくくなりますが、それぞれの病気に対する治療により臓器の状態がよくなれば身長の伸びが改善することもあります。腎臓のはたらきが低下する“小児慢性腎不全”も低身長につながることがあり、標準身長の-2.5SDを下回る場合、腎機能の程度により成長ホルモンを補充する治療適応があります。

栄養障害とは、体が必要とする栄養が不足することです。子どもの成長には多くの栄養が必要ですが、一度に食べられる量は限られます。バランスの取れた食事を3食しっかり取らないと栄養不足に陥りやすく、成長に悪影響を及ぼす可能性があります。

子どもの成長には生活環境も重要で、睡眠や運動習慣によっては正常な成長曲線から大きく外れる恐れがあります。成長に不可欠な“成長ホルモン”がもっとも多く分泌されるのは睡眠中であり、適度な運動は身体能力や心肺機能、筋力の向上に関わっているためです。睡眠不足、運動不足により食生活に影響が及ぶこともあります。

また、周囲の愛情を感じながら過ごすことも成長には大切で、心理的ストレスを感じる環境に置かれると成長に遅れが出ることがあります(愛情遮断症候群)。

検査の結果、低身長を引き起こす病態がなければ、体質性の低身長あるいは両親またはどちらかの親が低身長であることが原因の家族性低身長であると考えられます。

成長曲線で-2.0SDを大きく下回らず、曲線に沿って伸びていれば大きな問題はないでしょう。多くは病気に伴う低身長ではなく、検査で明らかな異常がなければ治療の対象とならないため経過を見ます。

低身長と判断された子どものうち治療が必要な病態が見つかるのは10%以下と少数で、必要に応じて成長ホルモン補充療法による治療が行われます。この治療の適応となるのは成長ホルモン分泌不全性低身長症ターナー症候群、プラダー・ウィリ症候群、ヌーナン症候群、SGA性低身長症、軟骨異栄養症(軟骨無形成症、軟骨低形成症)、慢性腎不全による低身長です。成長ホルモン補充療法は原因となる病気により適応基準がそれぞれ定められており、この基準を満たせば治療が可能です。

上記のうちSGA性低身長症を除く6つの病気については、埼玉県立小児医療センターでは通常、小児慢性特定疾病医療費助成制度の認定基準を満たした場合、各自治体に医療費助成を申請し承認を得たうえで治療を開始します。成長ホルモン分泌不全性低身長症に関してはその基準を満たさなくても通常の保険診療で治療を受けられることもあります。SGA性低身長症は一定の基準を満たせば保険診療で治療が可能です。

ターナー症候群、ヌーナン症候群は治療の適応となる身長の基準値が高く設定されています。ただし、ヌーナン症候群では特に乳幼児期に腫瘍(しゅよう)ができやすい体質であるため、治療にあたってはご家族にリスクについて十分ご理解いただく必要があります。

お子さんの身長が低いと感じていても「遺伝だから仕方がない」「何もないかもしれないのに病院に行くのは気が引ける」などと受診をためらっている保護者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、子どもが成長できる期間は決まっています。気になったらかかりつけの小児科に相談して、場合によっては検査ができる医療機関を紹介してもらうとよいでしょう。検査で異常が見つからなくても、医師が直接診察し、成長曲線を確認することで気付く点もあり、生活面でアドバイスを得られるかもしれません。

成長曲線を簡単に作成できるウェブサイトもあるので、まずは成長記録をつけてみてください。標準曲線が-2.0SD~+2.0SDから大きく外れていなければ特に問題はありませんが、もし-2.0SDを下回るとき、特に-2.5SD以下であるときは医療機関への受診をおすすめします。また、身長が-2.0SDを超えていても伸び方が急に鈍くなったとき、特に二次性徴(思春期になって表れる男女の体の変化)が始まる前の段階であれば早めに受診したほうがよいでしょう。手足のバランスが悪い、首が太くて短い、二次性徴が進まないなど、ほかに気になる症状を伴う場合も受診を検討してください。

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