概要
軟骨無形成症とは、軟骨が正常に形成されないことを原因として、低身長になったり、手足が著明に短くなったりする特徴を有する骨疾患の一つを指します。
軟骨無形成症は、小児慢性特定疾患及び難病指定を受けている病気の一つです。2万人に1人ほどの頻度で発症すると考えられており、日本全国で6,000人ほどの患者さんがいると推定されています(2018年12月時点)。
軟骨無形成症の根本的な治療方法はなく、身体的特徴に関連した起こりうる合併症に対して適宜対応することになります。低身長や手足が短い低身長の程度は強く、最終身長は130cmほどです。身長が低い、手足が短いと言った身体的な特徴から、日常生活に不備をきたすことも多い病気になります。
原因
軟骨無形成症とは、軟骨が正常に形成されないために、正常な骨の成長が阻害されています。軟骨は骨が長くなるのに必要不可欠な骨の構成成分です。しかし、軟骨無形成症では、この機能がうまくはたらかなくなってしまっています。その結果として、身長であれば低身長になり、手足の骨であれば手足が短くなるといった症状につながります。
軟骨無形成症は、正常な骨の成長過程に重要な役割を果たしている遺伝子(FGFR3遺伝子)に異常が生じていることが知られています。この遺伝子の異常によって、骨の成長に必要なアミノ酸が変化してしまい、軟骨無形成症を発症する場合が多いことが分かっています。また、軟骨無形成症は、「常染色体優性遺伝」と呼ばれる遺伝形式を取ります。この遺伝形式では、両親どちらかが軟骨無形成症である場合、そのお子さんが同様の病気を発症する可能性は50%です。しかし、両親ともに健康であるにもかかわらず、お子さんが軟骨無形成症を発症することもあります。この場合は、遺伝子に突然の異常が生じたためであると考えられます。
症状
軟骨無形成症の症状は、骨が長くなれないことに起因した症状が主要症状になります。出生後から手足は短い傾向にあり、成長と共に(特に乳幼児期以降)低身長が目立ってきます。手足の短さは、上腕や大腿部の短さが顕著です。頭蓋骨の成長に関しても影響を受けるため、特徴的な顔貌を呈することも知られています。
骨の成長が阻害される結果、骨に囲まれた空間が充分量形成されなくなり、それに伴う症状を見ることもあります。たとえば、脳や脊髄が存在する空間が充分に発達できなくなり、突然の呼吸停止や手足の麻痺、水頭症などの症状を呈することもあります。これら症状は特に乳幼児期に注意すべき症状です。無治療の場合には、2〜5%で突然死が生じると報告されていますが、原因の多くは呼吸停止による突然死であると考えられています。
耳や鼻の空間にも影響が及び、中耳炎や鼻炎を起こすこともあります。中耳炎は慢性化しやすく、難聴につながるリスクも伴います。成人になると、脊柱が狭くなることと関連して、足を動かすと痛みが生じやすくなったり、しびれ、麻痺、排尿障害などの症状を呈したりすることもあります。
検査・診断
軟骨無形成症の診断に際しては、レントゲン写真を中心に行われます。撮影に関して特に重要な部位は、頭蓋骨、脊柱、骨盤、両下肢、両手であり、各部位に応じた特徴的な所見を参考に軟骨無形成症の診断がなされます。
軟骨無形成症では、ほとんどの症例がFGFR3遺伝子の異常をもとにして発症することが知られています。したがって、この部位を重点的に検索するための遺伝子検査が行われることがあります。
治療
軟骨無形成症の根本的な治療方法はありません。そのため、生じうる合併症を予測しながら、適宜治療介入を行うことが重要になります。新生児期、乳児期においては脳や脊髄が圧迫されることから突然死を生じることがあります。画像検査にて圧迫されることが予見される場合には、突然死を避けるために外科的な除圧術を行うことがあります。また、水頭症を発症することもあるため、水頭症に対してのシャント術を行うこともあります。
成長するに従い、中耳炎や鼻炎などを呈することで、難聴につながることもあります。そのため、これらに対するアプローチも必要になります。
低身長や手足が短いことに起因して、社会的活動が広がるにつれて日常生活に支障が生じることもあります。具体的には、電車の改札に手が届かない、排便後の処理で後ろに手が届かない、エレベーターのボタンに手が届かない、などです。こうしたことを未然に予測し、整形外科的に骨延長術などのアプローチが取られることもあります。
さらに成人期になると、脊柱管狭窄症を発症することが多いですが、特異な形態のため重症化しやすく、また難易度の高い手術が必要となりがちですので、専門的な医療機関の受診をおすすめします。また、出産に際しては骨盤が狭いことから難産になることが予測されるため、帝王切開が取られることも多いです。
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