概要
掌蹠角化症とは、手のひらや足の裏の皮膚が異常に分厚くなった状態を指します。先天性の原因、後天性の原因があり、皮膚以外の内臓臓器に異常が生じるものもあります。具体的には歯周病を伴うタイプや心疾患を合併するタイプのものが挙げられます。
掌蹠角化症では、皮膚の局所症状に着目するのではなく、全身疾患の一症状として捉えて対応することが重要です。
原因
掌蹠角化症は、皮膚の角化に関連してケラチンと呼ばれるタンパク質が重要であることが知られていますが、先天性の掌蹠角化症では主に遺伝子レベルの異常が原因となってケラチンの異常が生じます。
先天的に発症するタイプ
先天性の掌蹠角化症には、さまざまな遺伝子異常が関連していることが知られています。具体的には、以下のような病気が含まれます。
- ウンナ・トスト型掌蹠角化症
- フェルネル型掌蹠角化症
- 長島型掌蹠角化症
- ビヨン・ルフェーブル症候群
など
具体的にどのような遺伝子異常が原因となっているか判明しているものもあれば、明らかになっていないものもあます。
先天性の掌蹠角化症は、疾患によって常染色体優性遺伝や常染色体劣性遺伝といった遺伝形式などをとります。また、家族歴(近親者でその病気にかかったことがある人がいること)がない状態で突然発症的に発症することもあります。
後天的に発症するタイプ
後天的に発症するタイプは、悪性疾患を原因として生じることがあります。内臓のどこかに原因があるにもかかわらず、皮膚に症状が引き起こされることがあります。
皮膚の変化がきっかけとなって、内臓に隠れているがんが診断されることがあり、このような症状の出方をデルマドロームと呼びます。
また、中年期以降の女性に発症する更年期角化症も後天性の掌蹠角化症として知られています。そのほか、薬剤、感染症なども原因となります。
症状
手のひらや足のうらの皮膚が分厚くなるといった症状がみられます。皮膚が分厚くなる様相は病気によってさまざまであり、一部分だけが分厚くなるものがある一方、皮膚全体が均質に分厚くなるものもあります。手足のにおい、カビの繁殖などもみられることがあります。
さらに皮膚症状が出てくる時期もさまざまであり、生後間もなくから皮膚変化がみられるものがあれば、更年期以降に現れるものもあります。また、たとえば長島型掌蹠角化症では、手を水に付けることで皮膚の一部が白く色が変化します。
皮膚症状以外に、掌蹠角化症の原因によっては別の症状がみられることも知られています。たとえば、歯周病を発症しやすいタイプ、耳の聴こえに影響があるタイプ、心筋症からの突然死のリスクを伴うタイプ、内臓にがんを合併するタイプ(たとえば食道がん)など、さまざまなものが知られています。
検査・診断
皮膚の変化が生じた時期、皮膚病変の分布状態、合併症の有無、家族歴の有無などをもとにして診断が行われます。掌蹠角化症のタイプによって皮膚の分厚くなり方が顕微鏡的に異なることも知られているため、皮膚の一部を用いて病理組織学的な検査を行うこともあります。
また、先天性の掌蹠角化症では原因となる遺伝子異常が特定されているものもあるため、主に血液を用いた遺伝子検査が検討されることもあります。
後天的に発症した掌蹠角化症では、内臓疾患や薬剤、感染症などが隠れていることもあります。根本的な原因となっている疾患を見落とすことのないよう、適宜検査が検討されます。
治療
治療は、分厚くなった皮膚を柔らかくすることを目的として行われます。後天的な掌蹠角化症では、基礎疾患に対するアプローチ(たとえば食道がんに対しての治療や原因薬剤の中止など)が根治的な治療になります。
掌蹠角化症では外用薬治療が中心であり、ワセリン、ビタミンD3製剤、ステロイド抗菌薬・抗真菌薬入りの外用薬などが使用されます。どの薬剤が効果を示すかは、季節や個人などによっても異なるため、実際に使用してみて適切なものを選択することになります。
皮膚の分厚さが強い場合には、外科的に切除することも検討されます。また、重症例においてはレチノイドの内服が検討されます。
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