リスク
放射線療法では、正常組織に放射線が当たることで副作用が現れることがあります。副作用は主に照射する部位に生じるため、がんの種類や照射部位によって、どのような副作用が現れるかが異なります。全身症状が現れることもあります。
また、放射線療法の副作用は、治療期間中から治療後数か月の間にみられる“急性期”のものと、治療後数か月以降にみられる“晩期”のものに分けられます。一般的に急性期の副作用は治療後に軽快していきますが、一部の晩期の副作用は回復が困難であったり、回復に時間を要したりすることがあります。
これらの副作用に対しては、必要に応じて薬物療法や物理療法などが行われることもあります。
そのほか、放射線療法による治療中から治療直後には、日常生活における制限が生じることもあります。
急性期の副作用(全身症状)
急性期の全身症状としては、疲労感(だるさ)、吐き気・嘔吐、食欲不振、貧血、易出血性、頭痛などの症状が現れることがあります。
疲労感(だるさ)
放射線療法は正常組織にも影響を与えるため、その回復に体力を要するといわれています。そのほか、がん治療や通院に伴う肉体的・精神的疲労も影響すると考えられます。
個人でできる対策としては、栄養バランスのとれた食事を取ること、十分な休養を取ることなどが挙げられます。放射線療法中も適度な運動を行うことは推奨されていますが、医師に相談のうえ、無理のない範囲で行うとよいでしょう。
吐き気・嘔吐、食欲不振
口や食道、胃腸などの消化器への放射線の影響により生じます。十分に栄養を取るための工夫として、食べられるときに少量でも食事を取る、栄養価が高い食事を取るなどするとよいでしょう。
貧血、易出血性、易感染性
血液をつくる骨髄への放射線の影響により生じます。血液中の白血球や赤血球、血小板などが減少することが原因です。定期的な血液検査が行われる場合もありますが、気になる症状があるときは医師に相談しましょう。
急性期の副作用(照射部位の症状)
放射線が照射される部位により症状が異なります。多く見られるのは皮膚や粘膜に関する症状です。
皮膚に関する症状
放射線を照射した部位の皮膚に、乾燥、赤み、かゆみなどの症状が現れます(皮膚炎)。色味の変化が残ることもあるほか、汗をかく機能(汗腺)に影響が生じた場合は汗をかきにくくなることもあります。
皮膚炎を重症化させないためには、セルフケアも重要です。照射部位の皮膚に負担をかけず、清潔に保ち、保湿を心がけるとよいでしょう。たとえば、熱いお湯での入浴やサウナの利用を控える、強くこすらない、直射日光を避ける、締め付けのない衣服を選ぶなどのケアが考えられます。保湿剤や塗り薬などを使用したい場合は、事前に医師に相談するとよいでしょう。
粘膜に関する症状
口や喉、食道、消化管、泌尿器(膀胱、尿道など)の粘膜に放射線の影響が及ぶと、炎症症状が現れます(粘膜炎)。炎症が生じる部位により症状は異なります。たとえば口内の粘膜に炎症が生じると、痛みのほかに、飲み込みにくさ、声のかすれ、口内の乾燥などの症状が現れます。
口内の粘膜炎では、口内を清潔に保つことが重要です。そのほか、食事を食べやすい形態にする(柔らかくする、飲み込みやすくする)、刺激の強い飲食物を避けるなどの工夫も大切です。消化管や泌尿器の粘膜炎でも、症状に合わせて食事内容を工夫したり、刺激の強い飲食物は避けたりするとよいでしょう。
脱毛(頭皮に関する症状)
頭皮に放射線の影響が生じた場合、脱毛の症状が現れます。治療開始後2~3週間ほどで脱毛が始まり、治療終了後は3~6か月ほどで発毛を実感することが多いとされています。放射線の照射量が多い場合などは、脱毛の程度や治療後の発毛に影響を与えることもあります。気になる事柄がある場合は事前に確認するのもよいでしょう。
頭皮のケアにおいても、皮膚と同様に清潔を保つことが大切です。毛髪が抜けると洗髪に不安を感じることもありますが、清潔を保つことで頭皮の状態の悪化を防ぐことができます。炎症が生じている場合は強くこすらず優しく洗い、タオルでこすったりドライヤーの温風をあてたりしないようにしましょう。
整容面(見た目)のケアとしては、帽子、バンダナ、医療用ウィッグ(かつら)が使用されることが多くあります。これらを使用する場合も、頭皮にやさしい、刺激の少ないものがよいとされています。また、頭皮の蒸れを避けることも大切です。
医療用ウィッグもさまざまな種類のものが販売されています。整容面のケアにおいては、がんの治療や日常生活に前向きになれるよう、ご自身にあったものを選択するとよいでしょう。
晩期の副作用
晩期の副作用も、急性期のものと同様に放射線照射部位によって異なります。たとえば、放射線の頭部への影響では認知機能の低下、胸部への影響では肺炎など、生殖器への影響では不妊につながることがあります。そのほか、“二次がん”と呼ばれる新たながんが生じることもあります。
これら晩期の副作用はあまり発生しないといわれています。二次がんについても、その発生頻度は非常にまれです。放射線療法の治療計画は、重篤な副作用を生じないよう注意を払って計画されています。必要以上に副作用を恐れず、心配な事柄があれば医師に相談するとよいでしょう。
日常生活上の注意・制限
放射線療法による治療中から治療直後には、体調面に十分に配慮すること、照射部位(皮膚)に負担をかけないことが重要です。
体調面への配慮としては、栄養バランスのとれた食事をしっかり取ることや、十分な休息を取ることが大切です。特に治療中は疲れやすくなっています。運動については医師に相談したうえで行うのがよいでしょう。
照射部位のケアとしては、直射日光を浴びないこと、入浴はゆるめのお湯にすること(シャワー浴も可)、毛の処理(剃毛)を控えること、そのほか照射部位への負担となる刺激を避けることなどが挙げられます。塗り薬などを使用する際は医師の指示に従いましょう。温泉やサウナ、プールなども避けたほうがよいとされています。
また、内部照射を行うために、放射線を出す薬剤などを服用している場合は、特別な管理が必要です。入浴やトイレの使用、衣服の洗濯などに注意が必要になることが多いため、医師の指示に従いましょう。
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