ほうしゃせんせいちょうえん

放射線性腸炎

同義語
放射線腸炎
最終更新日:
2023年11月17日
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2023/11/17
更新しました
2017/04/25
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概要

放射線性腸炎とは、子宮頸(しきゅうけい)がん前立腺がんなどに対する放射線治療後の腸管粘膜の炎症や浮腫(ふしゅ)壊死(えし)により、便通異常や消化管出血などの腹部症状をきたす病態です。婦人科系のがんや前立腺がんに対する放射線治療では全体の約20%前後に発症するといわれています。これらの骨盤内臓器に対する放射線治療後であるため直腸が好発部位となりますが、ほかの部位でも放射線照射する範囲内に腸管が含まれる場合には発症する可能性があります。

症状やメカニズムは、放射線治療から2か月以内に出現する早期障害と、治療後数か月から数年経過して現れる晩期障害とで異なります。早期障害では吐き気や嘔吐、水溶性の下痢、出血などがみられ、晩期障害では吐き気や嘔吐に加えて脂肪便や体重減少などがみられます。

放射線性腸炎でみられる症状はほかの病気でもよく見受けられます。そのため、診断にあたってはがんの既往歴や治療内容、特に放射線治療の有無、照射部位などを確認するための問診のほか、腸管内の異常を確認するための内視鏡検査が行われることがあります。

治療では、排便コントロールを含めた対症療法が中心となりますが、出血を伴う場合には内視鏡治療などが必要になることもあります。

原因

腹部や骨盤内への放射線照射により、腸管粘膜に炎症や浮腫、壊死をきたすことが原因です。

特に婦人科系疾患や前立腺疾患の放射線治療の後に発症することが多く、卵巣がん子宮頸がん前立腺がんなどの治療後に発症することがあります。放射線照射量が60Gy以上になると発症率が上昇するといわれています。

症状

放射線腸炎の症状は、治療後2か月ほどでみられる早期障害と、数か月から数年経過してからみられる晩期障害に分けられます。

早期障害では、吐き気や嘔吐、水溶性の下痢、出血、粘液の排出、しぶり腹*肛門痛(こうもんつう)などがみられます。晩期障害では吐き気や嘔吐に加え、発作性の激しい腹痛やしぶり腹、血便を伴う下痢、脂肪便、体重減少などがみられます。これら症状の有無は放射線照射範囲に含まれる腸管の部位によって異なります。

また、出血が続くことにより、貧血が進行して息切れや動悸といった症状がみられることもあります。

*しぶり腹:便意を感じるのに、ほとんどあるいは少ししか便が出ない状態。

検査・診断

放射線性腸炎でみられる症状はさまざまな病気によっても認められるため、診断のためにはほかの病気が隠れていないかを調べる必要があります。

そのためにまずは問診を行い、がんの既往歴の有無を確認します。既往歴があった場合には、そのときの治療内容、治療時期なども確認します。放射線治療歴があり、放射線照射範囲に含まれる消化管の粘膜障害が内視鏡的に確認できた場合はこの病態を強く疑います。

早期障害の場合には、問診や症状によって診断が確定するケースもあります。一方、晩期障害では、ほかの病気と鑑別するためにさまざまな検査が行われることがあります。この場合、血液検査を行って貧血や炎症反応の有無を調べたり、内視鏡検査によって粘膜の炎症や傷跡(瘢痕(はんこん))、血管拡張がないかを調べたりします。重症な場合は、腸管内に潰瘍(かいよう)や穴(瘻孔(ろうこう))、狭窄(きょうさく)ができていることもあります。

治療

早期障害と晩期障害とで以下のような治療が行われます。

早期障害に対する治療

早期障害の場合には、症状を和らげるための対症療法が中心に行われます。対症療法としては、薬物療法による排便コントロールなどが行われます。

また、放射線性腸炎による症状や腸管の状態などを考慮し、原疾患の治療を続けるかなどが検討されることもあります。

晩期障害に対する治療

晩期障害の場合には、排便コントロールに加え、内視鏡治療が行われることもあり、重症の場合は外科的手術が必要になることもあります。

血便がみられていても貧血がない場合には、排便コントロールを行って経過を観察します。しかし、血便によって貧血の程度が進行している場合には、“アルゴンプラズマ凝固法(APC)”と呼ばれる粘膜の血管拡張を焼灼(しょうしゃく)する内視鏡治療が考慮されます。

アルゴンプラズマ凝固法は、アルゴンガスという特殊なガスを用いて、障害された腸管の血管拡張を焼灼・凝固する治療法です。出血源となっている血管拡張を瘢痕化させることで止血効果が期待できます。効果的な治療法である一方、腸管粘膜の状態によってはかえって出血を増やしてしまったり潰瘍を作ってしまったりする恐れがあるため、弱い出力で複数回に分けて治療を行うことがあります。

また、狭窄が強い場合や瘻孔がある場合などは外科的手術を考慮することもあり、手術方法には、“病変部切除術”と“人工肛門造設術”があります。

このほか、症状に応じて薬物注腸療法や高気圧酸素療法などが行われることもあります。

注腸療法とは薬剤を肛門から注入する治療法で、放射線性腸炎によって弱くなった腸管粘膜を保護したり、出血しやすい血管を修復したりできる可能性があります。

高気圧酸素療法は圧力の高い装置内で酸素マスクから高濃度の酸素を吸入する治療法で、血管を新生することで腸管の創傷治癒を促すことなどが期待できるといわれています。

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