概要
斜頸とは、首が左右のどちらかに曲がり、反対側への運動が制限される症状のことです。
いわゆる、「首をかしげた」状態が維持されているものであり、生まれつきのものや炎症・外傷などによって首の骨に異常が生じるものなど原因はさまざまです。
そのなかで、最も頻度が高いのは、生まれつき首の筋肉が硬く縮まることで生じる先天性筋性斜頸ですが、先天性筋性斜頸の約90%は特別な治療を必要とせず、生後一歳半までに自然に治るとされています。
先天性の場合は新生児から乳幼児にかけて見られる症状ですが、後天性の場合では高齢者に発症することもあり、発症の年齢層は幅広いといえます。また、斜頸の治療方法は、原因となる病変によって異なり、先天性筋性斜頸のように基本的に治療する必要がないものもあれば、適切な治療を行わなければ症状が改善しないものもあります。
原因
斜頸の原因は、大きく分けて生まれつきの先天性と何らかの炎症や外傷が原因で生じる後天性に分けられます。
先天性
先天性斜頸は頻度が高く、特に先天性筋性斜頸は最もよく見られる斜頸です。先天性筋性斜頸は、後頭部と鎖骨・胸骨をつなぐ胸鎖乳突筋が出産で産道を通る際に過剰に伸展してしまい、筋線維がダメージを受けることで筋肉が硬く縮まった状態になることが原因だと考えられています。
また、生まれつき首の骨に奇形がある骨性斜頸、斜視が原因となって物を見るときに常に首を傾ける習慣が身についてしまう眼性斜頸も先天性に分類されます。
後天性
後天性で多いのは、中耳炎や扁桃炎、歯科治療による炎症が首にまで波及することによって、首の骨を構成する7個の骨のうち、一番目(環椎)と二番目(軸椎)の骨が固定されて首を回すことができなくなる炎症性斜頸です。
また、首の火傷やケガが原因で皮膚が拘縮してしまう瘢痕性斜頸、内耳や小脳など体の平衡感覚を司る部位に腫瘍や出血などが生じることで常に首を傾ける状態となるものなどさまざまな原因があります。
症状
斜頸は、首が左右どちらかに常に傾いている状態のことであり、見た目から容易に判断することができます。しかし、首が傾く以外の症状の現れ方は原因によって大きく異なります。
最も頻度が高い先天性筋性斜頸は、胸鎖乳突筋が瘤のように腫れ、生後2~3週間でもっとも大きくなり、その後は徐々に小さくなりますが、その後胸鎖乳突筋が硬く縮まって、患側への斜頸が目立ちはじめるのが特徴です。
多くは1歳半までに自然に治りますが、斜頸の程度が重度な場合や1歳半以降も斜頸が治らない場合には、頭蓋骨や顔面に変形が生じることも少なくありません。また、眼性斜頸では斜頸の他に斜視が見られ、通常は生後6か月以降に斜頸が顕著に現れます。
一方、後天性斜頸のなかでも炎症性斜頸は小児に生じやすく、首の動きが悪くなり、無理に首を動かすと痛みを生じるのが特徴で、リンパ節の腫れや発熱などの症状が見られることもあります。
また、内耳に障害による斜頸では耳鳴りやめまいなどが生じ、小脳の病変が原因となる斜頸では、めまいや種々の神経症状を併発することもあります。
検査・診断
斜頸は見た目から診断することができますが、原因を探るためにさまざまな検査が行われます。
診断の際には画像検査が重要であり、骨性斜頸や炎症性斜頸が疑われる場合にはレントゲン検査やCT検査が行われます。特に炎症性斜頸は、中耳炎などの炎症性疾患のあと急速に発症するため、発症前の炎症性疾患の有無が重要な情報となります。
レントゲン検査では、環椎と軸椎の固定を確認するために開口位という口を開けた状態で首のレントゲン写真を撮る検査が行われます。
また、眼性斜頸や内耳の異常が疑われる場合には眼科や耳鼻咽喉科の医師による診察が行われ、斜頸の原因となる病気がないかを確認します。
治療
治療法は原因によって異なります。最も頻度が高い先天性筋性斜頸では、特別な治療をしなくても首が傾いている反対側から刺激を与えて振り向かせるような訓練を繰り返すことで1歳半までに90%で改善が見られます。
しかし、傾きが強い場合や1歳半以降も症状が継続している場合には、首をまっすぐにする装具を着用したり、手術が必要になったりすることもあります。
一方、骨性斜頸では、成長に伴って運動障害が出たり、外見上の問題が大きくなったりした場合に骨奇形を修正するための手術が行われます。
また、後天性で多い炎症性斜頸では、通常は原因となる炎症性疾患が治れば斜頸も改善します。しかし、首の安静が必要となり、関節が固定された状態が続く場合には首の牽引が行われることもあります。
そのほか、内耳や小脳の異常によるものでは、それぞれに合わせた原因疾患の治療が優先的に行われます。
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