概要
有機酸代謝異常症とは、体の中でアミノ酸を分解する過程で、アミノ基が外れた後の有機酸の分解に関わる酵素の遺伝的な異常を原因とする病気を指します。有機酸代謝異常症には数多くの病気が含まれていますが、代表例としてメチルマロン酸血症、プロピオン酸血症などがあります。
原因
有機酸代謝異常症は、アミノ基が外れた後の有機酸の分解に関わる酵素の遺伝的な異常(先天的な欠損)が原因です。
身体に食べ物として取り入れられたタンパク質は、さらに細かい成分である「アミノ酸」に分解されます。アミノ酸はさらに数多くの酵素がはたらき体に利用されていきますが、この過程に必要な酵素が先天的に体の中でつくれない場合、有機酸という物質が体内に蓄積します。
正常では、これらの有機酸が高度に蓄積することはありませんが、酵素が欠損している患者さんでは、代謝できないアミノ酸を多く含む食品を過食することで、有機酸が高度に蓄積します。蓄積した有機酸は、直接的にもしくは間接的に臓器障害や酵素反応を障害することで、患者さんにさまざまな症状を来します。
有機酸代謝異常症には数多くの病気が含まれており、どの酵素が異常を示すかによって病名が異なってきます。具体的には、メチルマロン酸血症、プロピオン酸血症、イソ吉草酸血症など数多くのものが含まれています。
症状
症状発現の契機は、制限すべきアミノ酸を過剰に摂取した場合と、種々の感染症時に栄養が十分摂取できず、内タンパクの崩壊によるタンパク負荷を来した場合に分けられます。これらをきっかけとして、急激に症状が悪くなる場合があります。具体的には、呼吸回数が増えたり、逆に無呼吸になったりします。また、けいれん発作や意識障害、顔色不良、嘔吐などの症状がみられることもあります。急速に状態が悪化すると、命に関わる場合もあります。
また、慢性的な経過のなかで明らかになる症状もあります。発達面の遅れがみられたり、それまでできていたことができなくなる(たとえば、歩けていた子が、歩けなくなるなど)退行と呼ばれる現象がみられたりすることもあります。また、全身の筋力が弱かったり、意識とは関係ない運動を示すようになったりすることもあります。
検査・診断
有機酸代謝異常症は、出生後すぐに行われる「マススクリーニング検査」と呼ばれる検査によって指摘されることもあります。この場合には、より早期に治療を開始することが可能です。
そのほかには、血液検査や尿検査、酵素活性測定、遺伝子検査などでどのようなタイプの有機酸・酵素が問題となっているのかを特定します。また、病状が急激に悪くなることもあるため、全身状態を評価することを目的として、頭部MRI(磁気を使い、体の断面を写す検査)などがおこなわれる場合もあります。
治療
食事療法と薬物療法を中心に治療をおこないます。タンパク質を過剰に摂取することで症状が誘発される可能性があるため摂取量を控え、タンパク質以外のものからのエネルギー摂取を心がけることが大切です。食事からのタンパク質を制限する代わりに、特殊ミルクを用いて不足しがちなアミノ酸を補給することも必要です。どのような種類の特殊ミルクを摂取するかは病気によって異なります。薬物療法としては、病状に応じてカルニチン、ビタミンB12、ビタミンB2などが適応になることがあります。
これらの対応をおこなっても、症状が急速に悪化することもあります。この際には、輸液や透析など複数の治療を組み合わせて治療がおこなわれます。嘔吐、下痢などを起こす感染症に罹患した場合は、低カロリーによる内タンパク負荷から有機酸血症の急性増悪をきたすことも考えられるため、輸液による水分、ビタミン剤の補充とカロリー管理が重要です。
症状の増悪(悪化)を何度も繰り返す方は、日常生活に対しての支障も大きく、かつ後遺症を残すリスクも伴います。そのため、状況や状態によっては、肝移植といった方法も検討されます。
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