概要
栄養失調とは、健康を維持するうえで必要なエネルギーや栄養素の摂取量不足によりもたらされた不健康状態を指します。医師によっては、低栄養や栄養不良といった呼び方が用いられることもあります。
栄養失調は開発途上国に多くみられ、現在の日本の経済・社会状況においてはまれですが、世界的には現在でも医学的、社会的に大きな問題となっています。また、昨今では高齢者の栄養不良状態が問題となっています。
原因として摂取不足、消化・吸収障害、代謝障害、神経性食欲不振症があります。再栄養が治療の基本ですが、急激な補充は心臓の不適応、電解質異常を来すため徐々に栄養の補充をすることが必要です。
原因
体重低下を伴う栄養失調は、食事で必要なエネルギー(カロリー)が摂取できていないことに伴います。特定の栄養素の不足は偏食や、何らかの事情により特定の栄養素を含む食品が摂取できない場合に起こります。
日本における栄養失調は以下の原因によることが多いです。
摂取不足
虐待により子どもに食事を与えない、あるいは栄養に関する知識が不足した状態での食品摂取などが原因になります。要介護高齢者では介護力不足により食事の提供が不十分な場合、薬剤による副作用、摂食嚥下障害(ムセなどがある場合)なども多く認められます。
消化・吸収障害
肥厚性幽門狭窄症、セリアック病、食道噴門弛緩症、慢性下痢症などに起因します。
代謝障害
先天代謝異常、甲状腺機能亢進症などにより栄養が正常に代謝できないことで起こります。
その他
早産、低出生体重児は乳糖などの消化吸収力が弱く、栄養失調をきたすことあります。
神経性食欲不振症は、心理的要因により過度に食欲制限をきたす疾患です。思春期~青年期の女性に多く、摂取不足による栄養失調をきたします。
開発途上国において高度な栄養(エネルギー)不足により起こる栄養失調をマラスムス、栄養のバランス不足(エネルギー摂取は比較的保たれるが、たんぱく質の摂取が不足)により起こる栄養失調をクワシオルコルといいます。
症状
下記のような症状が挙げられます。
- るいそう(やせ)
- 体重増加不良(成長・発育不良)
- 貧血
- 便秘
- 下痢
- 易感染性(感染症にかかりやすい状態)
重症になると低血圧、低体温、徐脈を認めることもあります。
特定の栄養素が不足することによる症状は、栄養素により多岐にわたりますが、以下に代表的なものを記載します。
ビタミンB1欠乏症
ウェルニッケ脳症を引き起こすことがあります。この場合、脳症関連の症状、眼球運動の異常、運動失調を来たします。脚気の原因にもなります。
ビタミンB12欠乏症、葉酸欠乏症
造血に関係するDNAの合成ができなくなり、巨赤芽球性貧血という貧血を生じます。
ビタミンC欠乏
皮膚・粘膜・歯肉の出血、創傷治癒の遅れ(傷がなかなか治らない)などを特徴とする壊血病という病態を生じます。
検査・診断
食事の状況、偏食の有無などの情報から栄養失調を疑います。
虐待による摂取不足の場合、保護者から正確な情報を得ることが難しい場合もあり、医療者・ソーシャルワーカー・児童相談所など多職種の連携により診断が行われます。神経性食欲不振症を疑う場合は、精神科・心療内科の医師が病歴聴取を行います。
栄養失調を疑う場合、身長・体重測定により、標準体重からどの程度低下しているのかを計算します。
栄養状態を評価する血液検査項目として、アルブミンというタンパクがあります。また、栄養障害の指標となるタンパクとして、rapid turnover proteins (プレアルブミン、レチノール結合タンパク、トランスフェリン)があり、いずれも低栄養時には低下します。
その他、甲状腺、コルチゾールなどのホルモン測定を行う場合もあります。
治療
脱水の予防、栄養の補充が中心となります。しかし、高度の栄養失調の状態から急激に再栄養を行うと、増加した血液量に心臓が適応できない、電解質の異常が生じる、などの状態(リフィーディング症候群)を引き起こすことがあります。そのため、再栄養は少しずつ行う必要があります。
特定のビタミンが欠乏している場合にはビタミン補充を行います。神経性食欲不振症は、精神療法、認知行動療法などにより治療を行います。
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