淋菌感染症とは代表的な性感染症のひとつで、淋菌という細菌によって引き起こされます。この感染症には、男性と女性とで患部や症状が異なるといった特徴があります。
多くの人が性感染症に関する正しい知識を持てるよう自らも積極的に情報発信し、親身な対応と豊富な経験や知識をいかした診療に定評のある尾上泰彦先生に伺いました。
「淋」には「しずく」という意味があります。この字が使われるのは、炎症が起きて尿道が狭くなると、痛さのあまり尿を「しずく」のようにタラタラとしか出せなくなるところから来ているそうです。
性感染症のひとつである淋菌感染症は、性器クラミジア感染症に次いで頻度の高い性感染症と言われており、1回の性行為による感染伝達率は30%程度と考えられています。
男性では主に尿道、女性では子宮頸部に感染するほか、近年ではオーラルセックスなどの性行動の多様化により咽頭や直腸への感染、体液のついた手指がふれたことによる結膜への感染も増加しており、性活動が盛んな10代から30代の方、特に男性の患者さんに多い性感染症です。
淋菌に感染すると、排尿時に痛みを感じる、尿道から黄色もしくは白い膿が出てくるといった症状があらわれます。しかし淋菌感染症の症状は感染者のうち、男性は約5%、女性では約80%の人には症状が出ません。自覚症状がないため感染に気づかず、性交を通じてパートナーも感染させてしまう、淋菌感染症を放置してしまうことにより感染を重症、拡大化させてしまうといったケースも多く、最悪の場合不妊の原因につながることもあります。
淋菌感染症について詳しくはこちらの記事もご参照ください「淋菌感染症とはどのような病気か」
男性では尿道から、女性では子宮頸管から分泌物を採集し検査を行います。
淋菌に感染しているか検査する方法には大きく分けて下記の3種類があり、いずれかの方法により行われます。
淋菌は生殖器だけでなく咽頭に感染しているケースもあります。遺伝子増幅検査のうち古いPCR法は咽頭に住み着いている常在菌(非病原性菌)に反応してしまうため、口腔内の検査では新しいTaqManPCR法、SDA法もしくはTMA法が用いられます。
淋菌の検査をするときの注意点として、病院に行くときは2~3時間は排尿を我慢して下さい。また抗生物質は検査の結果に影響を与えてしまうので、検査前10~14日間の服用は避けるようにしましょう。
検査の結果陽性反応が出ると、抗生物質を使用した治療を開始します。日本性感染症学会が定めるガイドラインには、病変のある部位に応じて使用する薬剤が定められており、確実に有効な薬剤としてセフトリアキソン、セフォジジム、スぺクチノマイシンの注射薬3剤があげられています。アメリカなどでは、経口薬のアジスロマイシン 2gを1回処方することもあります。
治療により淋菌が消失したかを確認するために、投薬期間の終了後に淋菌潜伏期間と考えられている3~7日ほどの期間を設け、その後に治癒判定検査を行います。
淋菌感染症は、性器と咽頭と同時感染していることもあります。性器の治療が終了しても咽頭の治療が不完全だと、淋菌の再感染の原因になることもあるために注意が必要です。
淋菌が生殖器に感染すると痛みや分泌物といった症状がありますが、自覚症状があるかは男女によって大きな差が見られます。そのため感染に気がつかずに重症化したり、感染を拡大させてしまうケースが多く見受けられます。
詳しくは「抗生物質への耐性を持つ淋菌の登場」でも述べますが、抗生物質への耐性を持つ淋菌が登場しつつあります。
淋菌感染症に限らず性感染症を予防するためには、上記のような点を心掛けましょう。
プライベートケアクリニック東京 院長
尾上 泰彦 先生の所属医療機関
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