
減圧症の治療には「高気圧酸素療法」という再加圧治療が主流となり、重症の場合には入院して集中治療を受けることもあります。ただし重症の減圧症では後遺症が残ってしまうことも多いため、減圧症には予防が何よりも大切だといいます。減圧症の治療と予防について、ハーバード大学医学部外科学講座研究員の近藤豊先生にお話し頂きました。
減圧症の治療には、高気圧酸素療法と呼ばれる方法が適応となります。再度、酸素投与下で加圧することにより、気泡を消失させ窒素ガスを酸素へと置き換えることができます。そのため高気圧酸素療法は急性期の減圧症には有効な治療方法となりますが、これを実施できるチャンバー(膨張室)が設置してある医療機関は限られています。
そのような場合は、通常の100%酸素の吸入でも、ある程度は症状の改善が期待できます。
重症の場合にはアメリカ海軍治療表Table 6(通称:テーブルシックス)という治療法を使用します。
急激に圧を下げると減圧症を再発する可能性があるため、減圧症を治療するにはゆっくりと圧を下げることが大切です。この方法では約5時間程度(症状によって治療に要する時間は異なります)チャンバーに入り、時間をかけて治療を行います。
チャンバーには1人用の第1種装置と多人数用の第2種装置のふたつがありますが、重症の減圧症の治療には第2種装置の使用が望まれます。
なお、高気圧酸素療法は減圧症以外にも、壊死性筋膜炎、脳腫瘍、突発性難聴、難治性下肢潰瘍などで使用されています。
症状によって様々ですが、通常Ⅰ型減圧症は外来通院で症状をみながら高気圧酸素療法等を実施し、Ⅱ型減圧症の場合には入院加療が必要になることが多いです。入院期間も人によって異なりますが、一般的には数日から数週間とされます。重症で集中治療等が必要になる場合には、入院期間はさらに長くなります。
減圧症後遺症が残った場合、長期的に高気圧酸素療法を実施することがあります。Ⅱ型減圧症ではリハビリテーションも有効だと考えられています。軽症の場合、最終的には軽快することが多いのですが、重症の場合には難治性のものも多く、発症した時点で完治は厳しいといわざるを得ない部分があります。そのため私は減圧症の予防が最も重要ではないかと考えています。
もちろん後遺症が残ったままでの潜水は厳禁ですから、症状が消失した後も一定期間は潜水できません。しかしながら、患者さんご本人が減圧症であるということの自覚がないために、潜水を続けてしまい症状が悪化するケースも多くみられます。
減圧症を予防するために重要なのは、「無理のないスキューバダイビングをする」ことです。飲酒後や体調が悪い場合の潜水は避け、潜水中に異常を感じたら早めに終了しましょう。
また、日常生活で規則正しい生活を心がけることも大切です。減圧症の予防はもちろん、減圧症以外の疾患にかかるリスクの低下にもつながります。たとえば喫煙は減圧症のリスクをあげるとともに、肺がんや肺気腫などを発症する可能性が高くなるので控えましょう。また、日常的に適度な運動を心がけてください。
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。
関連の医療相談が10件あります
前立腺肥大症について治療(投薬・手術・慣れる等)を考えのアドバイスを下さい。
半年前に肺がん(9年前手術)の経過観察でPSA値が高いと指摘され、本日造影MRIを撮影しました。がんに関しては問題ありませんでしたが、画像で前立腺肥大(約5cm)を指摘されました。がん専門の大病院のため、詳細は泌尿器科へ紹介状を出すとの説明を受けました。 「前立腺肥大症」という言葉は聞いたことはありましたが、深く考えたことはなく、少し調べると「前立腺が卵ほどに大きくなり、尿の勢いが弱くなる・頻尿になる」とありました。今日の医師の話では、「尿の出が悪くなれば治療を検討」「頻尿はあまり関係ない」「投薬は一時的な対処で、根治には腹腔鏡手術」「大きくなるかは人それぞれ」とのことでした。 私は還暦を過ぎ、実際に尿の勢いが弱く、夜間も1〜2時間おきにトイレに行きます。ただし、加齢により排尿機能や体力が衰えるのは自然なことと考え、ある程度は受け入れてきました。老眼なら眼鏡を新調すれば済みますが、前立腺の腹腔鏡手術は身体的にも経済的にも負担が大きく、できれば避けたいと感じています。次回は来年2月に再診予定(画像検査なし)です。 AIに相談したところ、以下の回答が得られました。 ・軽症なら経過観察+薬物療法 ・生活に強い支障があれば手術 ・手術後は改善が見込めるが、加齢に伴い再肥大の可能性もある ・治療方針は「生活の質をどの程度改善したいか」で決めるのが現実的 私としては、命に直結しない限り、治療負担や予後の不確実さを考えると手術は避けたい気持ちです。今後の生活において、どのような考え方や対応が望ましいか、アドバイスをいただければ幸いです。
むくみをとる
前立腺がんの「抗がん剤治療」をしています。(全6回予定、5回終了) 段々と足にむくみが出るようになり、「利尿剤」(1錠)を飲み始め、最初はむくみが減少。しかし1週間で またむくみはじめ、「利尿剤」を2錠にしました。結果は同様で取れるのですがまた、むくみがひどくなりました。 ①利尿剤の量をこれ以上増やしてもいいのか? ②むくみをとる効果的な処置がありましたら、お教えください。
胸痛や胸部不快感の原因
以前にもこちらで質問をさせていただきました。その節はお世話になりました。 3ヶ月前から軽度の胸痛、息苦しさ 2ヶ月前から胸痛の頻度が上昇 現在の症状は胸骨周囲の軽度胸痛、吸気時の胸痛、時々胸部の違和感、息苦しさ、肩甲骨周辺の痛みなど 冠攣縮性狭心症疑い、心因性胸痛の疑いでホルター心電図と冠動脈造影CTを実施しました。 ホルター心電図…不整脈ほぼなし 冠動脈CT…狭窄所見なし ホルター心電図中にも息が吸いにくい、吸気時の胸痛、瞬間的な胸痛はありましたが、その上で異常はないと言われました。 現在コニールと鉄剤、半夏厚朴湯を内服しています。以下の点質問があります。 1.心臓由来の胸痛である可能性は低いですか? 2.他にどのような疾患と鑑別が必要だと考えられますか? 3.Ca拮抗薬を内服していると「胸痛の強さが軽減される」効果がありますか?それとも「胸痛の頻度が減少する」効果がありますか?
肝門部胆管がんステージ4の寛解に向けた今後の治療方法について
2024年4月の血液検査でガンマーGTが350を超えていて、ALPも250くらい、主治医からは肝臓でしょう、飲みすぎ等の指摘受けましたが、念のために5月上旬に再度検査受けて、連絡なかったので安心していたら腹部膨張感を感じたのが5月中旬、尿がすこしずつ黄色になったのが5月25日くらい、5月31日黄疸症状がありCT検査より胆管がんの疑いありと診断され、大分別府(自宅のある)の大学病院で再検査、6月3日より入院検査、胆管がんステージ4の確定診断、それからステント ERCPの治療、膵炎や薬物アレルギー、胆管炎をおこしながらも、6月17日より イミフィンジ(免疫阻害チェックポイント剤)とランダ、ジェムザールの抗がん剤の治療開始、当初は副作用、脱毛、口内炎、便秘等あったがクールがすすむにつれて改善、白血球(好中球)減少はあるものの、6クールまで進捗している、8月22日の造影CTで当初3センチほどの腫瘍は2.5センチ、10月18日の造影CTでは更に腫瘍が小さくなり2センチ、リンパ転移も縮小、播種なしの状態、身体もすごく調子が良い状態です、8クールまでは今のままの治療で、そこからはイミフィンジだけで経過観察していくとの事です、根治、寛解に向けて他の治療方法はないでしょうか、例えば重粒子や陽子線等 部分寛解まできているので完全寛解を目指していきたいと思います
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「減圧症」を登録すると、新着の情報をお知らせします