インタビュー

減圧症の治療と予防―「無理のないスキューバダイビング」をすることが大切

減圧症の治療と予防―「無理のないスキューバダイビング」をすることが大切
近藤 豊 先生

順天堂大学大学院 医学研究科 救急・災害医学講座 主任教授

近藤 豊 先生

この記事の最終更新は2016年08月09日です。

減圧症の治療には「高気圧酸素療法」という再加圧治療が主流となり、重症の場合には入院して集中治療を受けることもあります。ただし重症の減圧症では後遺症が残ってしまうことも多いため、減圧症には予防が何よりも大切だといいます。減圧症の治療と予防について、ハーバード大学医学部外科学講座研究員の近藤豊先生にお話し頂きました。

減圧症の治療には、高気圧酸素療法と呼ばれる方法が適応となります。再度、酸素投与下で加圧することにより、気泡を消失させ窒素ガスを酸素へと置き換えることができます。そのため高気圧酸素療法は急性期の減圧症には有効な治療方法となりますが、これを実施できるチャンバー(膨張室)が設置してある医療機関は限られています。

そのような場合は、通常の100%酸素の吸入でも、ある程度は症状の改善が期待できます。

重症の場合にはアメリカ海軍治療表Table 6(通称:テーブルシックス)という治療法を使用します。

急激に圧を下げると減圧症を再発する可能性があるため、減圧症を治療するにはゆっくりと圧を下げることが大切です。この方法では約5時間程度(症状によって治療に要する時間は異なります)チャンバーに入り、時間をかけて治療を行います。

チャンバーには1人用の第1種装置と多人数用の第2種装置のふたつがありますが、重症の減圧症の治療には第2種装置の使用が望まれます。

なお、高気圧酸素療法は減圧症以外にも、壊死性筋膜炎、脳腫瘍突発性難聴、難治性下肢潰瘍などで使用されています。

症状によって様々ですが、通常Ⅰ型減圧症は外来通院で症状をみながら高気圧酸素療法等を実施し、Ⅱ型減圧症の場合には入院加療が必要になることが多いです。入院期間も人によって異なりますが、一般的には数日から数週間とされます。重症で集中治療等が必要になる場合には、入院期間はさらに長くなります。

減圧症後遺症が残った場合、長期的に高気圧酸素療法を実施することがあります。Ⅱ型減圧症ではリハビリテーションも有効だと考えられています。軽症の場合、最終的には軽快することが多いのですが、重症の場合には難治性のものも多く、発症した時点で完治は厳しいといわざるを得ない部分があります。そのため私は減圧症の予防が最も重要ではないかと考えています。

もちろん後遺症が残ったままでの潜水は厳禁ですから、症状が消失した後も一定期間は潜水できません。しかしながら、患者さんご本人が減圧症であるということの自覚がないために、潜水を続けてしまい症状が悪化するケースも多くみられます。

減圧症を予防するために重要なのは、「無理のないスキューバダイビングをする」ことです。飲酒後や体調が悪い場合の潜水は避け、潜水中に異常を感じたら早めに終了しましょう。

また、日常生活で規則正しい生活を心がけることも大切です。減圧症の予防はもちろん、減圧症以外の疾患にかかるリスクの低下にもつながります。たとえば喫煙は減圧症のリスクをあげるとともに、肺がん肺気腫などを発症する可能性が高くなるので控えましょう。また、日常的に適度な運動を心がけてください。

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