概要
炭疽とは、炭疽菌という細菌による感染症です。主に動物からヒトに感染し、ヒトへの感染源としてはウシやウマなどの草食動物が中心です。炭疽菌に感染した動物の組織や血液などとの直接接触や、生肉の摂取などによってヒトに感染し、ヒトが感染した場合には主に皮膚、腸、肺が障害されます。
炭疽は世界のさまざまな地域で発生していて、全世界における年間発症件数はヒトで2万人、動物で100万頭にのぼるといわれています。一方、日本での発生頻度は低く、ヒトでは1994年、動物では2000年の報告を最後に発生していません。しかし、炭疽菌の芽胞は土の中で長い期間生存するため、今後発生するリスクがないとはいえません。
炭疽は未治療の場合、死に至ることがある病気です。そのため、感染動物に触れたなど炭疽菌による曝露が明らかな場合には、症状の有無にかかわらず直ちに処置が必要です。
原因
炭疽の原因は、細菌の一種である炭疽菌による感染です。主にウシやウマ、ヤギ、ヒツジなどの草食動物からヒトに感染します。
ヒトの病型としては、感染経路に応じて“皮膚炭疽(経皮感染)”“腸炭疽(経口感染)”“肺炭疽(吸入感染)”の3つに大きく分けられます。このうち自然感染の95%以上を占めるのが皮膚炭疽で、感染動物やその動物製品(皮・毛・羊毛など)、感染動物に汚染された土壌に直接触れ、皮膚の傷から菌が入り込むことで感染します。感染動物と直接接触することが大きな原因となるため、炭疽は特に家畜やその加工品を扱う仕事をしている人に多くみられます。
腸炭疽、肺炭疽はいずれも発生頻度がきわめて低いですが、感染動物の肉や食品を生あるいは十分に加熱調理せずに食べたり、飛散した炭疽菌の芽胞を口や鼻から吸入したりすることでも感染します。
腸炭疽と肺炭疽ではヒトからヒトへの感染は通常起こりません。しかし、皮膚炭疽においては感染した皮膚への接触によってヒトに伝播する場合があります。
症状
炭疽菌に感染した場合、感染経路が皮膚であれば皮膚が障害され、経口感染では腸、吸入感染では肺が障害を受けます。そのため、感染経路によって症状が大きく異なります。
皮膚炭疽
1~7日の潜伏期間を経て、感染した皮膚に発疹が出現します。通常痛みはありませんが、かゆみを伴うことがあります。
また、この発疹の周囲に水疱ができ、やがて水疱が破れて黒いかさぶたになります。近くのリンパ節に感染が及ぶほか、血液中で菌が増殖して敗血症を起こすこともあります。未治療の場合、致死率は10~20%とされています。
腸炭疽
感染動物の肉や食品を食べた後、2~5日程度で発症し、嘔吐、悪心、食欲不振、発熱などの症状が現れます。激しい腹痛や吐血、血液の混じった下痢がみられることもあります。
このような症状の後にショック、死亡に至ることがあり、未治療の場合の致死率は25~50%とされています。
肺炭疽
飛散した炭疽菌の芽胞を吸入することによって、初めは軽度の発熱や全身倦怠感、筋肉痛など、インフルエンザ様の症状がみられます。数日すると発熱、呼吸困難、発汗、チアノーゼなどが出現し、この段階になると通常24時間以内に死に至ります。
検査・診断
炭疽の診断には炭疽菌の存在を証明することが必要です。そのために、感染した皮膚や便、肺の周りの体液を採取して、顕微鏡による観察や、培養検査が行われます。
また、血液中の炭疽菌の遺伝物質や毒素に対する抗体検査や、肺炭疽の場合には胸部X線やCTなどの画像検査が行われることもあります。
治療
炭疽の治療は抗菌薬による薬物療法が中心です。抗菌薬としては、ペニシリン系薬剤、クロラムフェニコール系薬剤、テトラサイクリン系薬剤、エリスロマイシン系薬剤、ストレプトマイシン系薬剤、フルオロキノロン系薬剤などが用いられます。
皮膚炭疽の軽症例では自然治癒率が高いため、このような薬剤を7~10日投与します。重症例では抗菌薬以外に、外科的治療や全身管理(酸素投与・気道確保・補液・昇圧剤投与など)も必要になることがあります。
予防
炭疽の予防には、感染動物やその加工品、汚染された土との接触を避けることが大切です。衣服が汚染された可能性のある場合には、直ちに脱衣し、他の衣類とは別にして消毒や滅菌処理を行ってください。
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夜だけのこもり熱?
6歳の女児ですが、 あったかいホテルの部屋や、暖房の効いた部屋にいた後、寝始め、夜中に微熱のように37.4程度まで体温が上がっていることがあります。 朝になると必ず平熱になっており、あれはなんだったんだろうと言うことが最近ちょくちょくあるのですが、 単に体に熱がこもっているだけなのでしょうか。 耳鼻科、小児科でも鼻炎ぎみとは言われているので、年中オロパタジンは飲んでいるのですが、 鼻炎で微熱になることもあったりしますか? もちろん、インフルやコロナも流行っているので心配ですが…熱が下がるので受診してもという状態です。
ウイルス性のガゼで無く、様子見の診断について、いつまで。
9月23日頃から、喉に少し違和感があり、咳は、1度出たら続けて出る。止まったらしばらく出ないの繰り返しで放置してました。 9月29日の夕方から身体がだるくなり、30日に体温が38℃超えてました。 ここから、しばらく起き上がれなく、寝て過ごして、月曜日の朝に病院に行きました。 発熱しているとのことで発熱外来で調べてもらいましたが、朝体温測ったら37.7℃あったのですが、病院で測ったら36.7℃になってました。ウイルス検査はコロナ、インフル共に陰性でしたので、症状が落ち着いているので様子見にしましょうということで終わりました。 自宅に帰り、再度体温を測ったら36.7℃だったので、もう治るかなと思ったのですが、夜に測定すると、37.7℃に戻ってました。その日は解熱剤を飲んでねて、今朝体温測ると37.7℃から変わっていなかったです。咳はずーっと、喉が痛いのもあるし、普段出ないが、1度出ると続けて出て、一通り咳をしたらまた落ち着くといった感じです。咳の時は痰もでます。 病院では、症状落ち着いてるので様子見でしたが、まだ、戻ってきました。このまま様子見で問題なさそうでしょうか? あと、最近の発熱外来ってやつは、問診のみで直接見てもらえないパターンになってますね。コロナ前は、喉の炎症を見て消毒してくれたり、聴診器で調べてくれたりしてたのですが、最近はしてくれないものなのでしょうか? もう一度病院に、発熱状態で行って、コロナやインフルエンザではなかったのですが、症状が戻ってきたので普通の外来で見て貰えませんか?というのは出来るものなのでしょうか?
今後の治療方針、病院を変える?がわからない。
現在、咳とたんが続いており、当初、副鼻腔炎と耳鼻科から診察され、投薬してもらった。 副鼻腔炎はよくなったが、咳とたんがつづいており、8月の後半から、たまに行き苦しい症状(息を思い切り吸い込めない&息を大きく吸わないともやもやする&外出時に多少の息苦しさを感じる(水を飲めば落ち着く))ような症状がでている。 耳鼻科に通院し、カルボシステインと気管支に良い漢方、先週から吸引のお薬の処方があったが、改善しているように見えない。 どうすればいいでしょうか。 8月上旬 コロナ発症、咳と痰がのこる・・・咳止めが処方され、おそらくこのせいではないか。 8月中旬 コロナの終わりかけ 念のためレントゲンと血液検査・・・現段階で問題なし 8月下旬 行き苦しさが少しでてくる・・・コロナ時に処方された去痰とアレルギーの薬を飲む 同下旬 耳鼻科に通院開始・・・副鼻腔炎の診察、アレルギーの血液検査・・・問題なし 9月中旬 耳鼻科・・・気管支の薬に切り替え 耳鼻科は3度ほど通院 副鼻腔炎のおさまりはファイバースコープで確認 2週間分の薬をわたされていて、治らなければもう一回来てもいいと言われている (予約はとっていません) 元々、エアコンの風で咳きこむ、強いにおいやホコリで咳きこむなどの自覚症状はあったが、 おそらくコロナのせいで、気管支があれてしまったのではないか、と自分では考えており、 もしそうであれば、内科などに変えたほうがいいのか、迷っています。
呼吸がしずらく、発熱、だるさ、咳痰が出て食欲不振の為、体重減少。
今月初め頃、左胸の痛みが酷く救急車で救急へ受診、コロナ抗原検査では陰性、左胸の痛みのため心電図をして、異常なし、帰宅。 その後、咳痰が出てきたので、呼吸器内科へ受診、レントゲンでボヤけがあった為CTを取りに別の病院へ、 次の診療まで待てないくらい悪化したためクリニックへ、気管支拡張(貼る)と抗生剤をもらい。 その後、CTの結果が出たのでクリニックへ、肺化が悪化していた為クリニックでは対応出来ないと言われ、総合病院へ紹介され、違う抗生剤を処方、次回の診断は10月になりました。 クリニック受診から、総合病院へ転院までで3週間かかってしまいました。 スマホで検索したら、入院して抗生剤の点滴を1〜2週間投与と拝見したのですが、最初のクリニックで抗生剤も貰えてなく、悪化してしまいました。 このまま入院せず、処方の抗生剤で完治するのか、 また処方せん薬局では、抗生剤の在庫が不足していると言われたらしく、投薬治療も出来るかも不安になってしまいました。 このまま総合病院で治療してもらっていて、完治するのでしょうか? あと、肺炎と膿がなくなったら、肺の機能は改善されるのか教えて下さい。よろしくお願い致します。
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