びょうげんせいだいちょうきんしょくちゅうどく

病原性大腸菌食中毒

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

病原性大腸菌食中毒とは、食べ物などを経由して病原性をもつ大腸菌を摂食することで起こる食中毒です。

大腸菌は、普段から人の消化管のなかに生息している細菌ですが、病原性をもつ菌が複数います。それぞれ、発症時間までの潜伏期間や病態などは異なりますが、感染すると基本的には下痢や腹痛といった消化器症状が現れます。

原因

病原性を有するタイプの大腸菌は、大きく分けて以下の5つが挙げられます。

  • 腸管病原性大腸菌
  • 腸管組織侵入性大腸菌
  • 腸管毒素原性大腸菌
  • 腸管出血性大腸菌
  • 腸管凝集接着性大腸菌

それぞれの大腸菌はいくつかの異なった性格を有していますが、なかでも重症度の観点から腸管出血性大腸菌が重視されています。

腸管出血性大腸菌は、O-157を代表とする大腸菌が含まれるグループであり、ベロ毒素と呼ばれる毒素を産生します。毒素の作用によって病状が重症化することがあり、溶血性尿毒症症候群と呼ばれる合併症を生じることがあります。ユッケやレバ刺しなどの食形態から食中毒として発症することがあり、日本において集団発生の事例が報告された過去もあります。

そのほかのタイプの病原性大腸菌による食中毒は、主には発展途上国を中心にみられることが多いです。衛生環境の整っていない場所では、病原性を持つ大腸菌によって食物が汚染されていることがあり、これらを経口摂取することで食中毒を発症することがあります。

症状

原因となる食物を摂取してから一定時間の潜伏期間をおいて、症状が出現します。潜伏期間は原因となる大腸菌の種類によってさまざまですが、半日から長い場合には1週間近く経ってから症状が現れる場合もあります。基本的には、下痢や腹痛といった腹部症状が主体となりますが、血便や発熱を伴うこともケースもみられます。

病原性大腸菌食中毒のなかでも日本において特に注意が必要なのは、腸管出血性大腸菌によって引き起こされる溶血性尿毒症症候群の発症です。溶血性尿毒症症候群を発症すると、めまいやだるさ、動悸や運動時の易疲労感といった貧血症状が生じます。また出血傾向を伴うことも特徴であり、粘膜出血や消化管出血が起こることもあります。さらに急速に腎機能が障害を受け、尿が出なくなったり、けいれんや意識障害といった中枢神経に関連した症状がでることもあります。

検査・診断

便を用いて病原性を有する大腸菌を特定することで診断します。

病原性大腸菌はタイプによって特徴的な遺伝子を持っていますが、こうした特徴的遺伝子を調べることを目的としてPCR法と呼ばれる方法が選択されます。また原因となった食品を特定するために、食品を用いて同様の過程を踏むこともあります。

さらに溶血性尿毒症症候群の合併を調べるために、貧血・血小板減少・腎機能障害・中枢機能障害を評価する血液検査やMRI(磁気を使い、体の断面を写す検査)などがおこなわれることもあります。またベロ毒素を調べるための検査も検討されます。

治療

基本的には、対症療法(症状に合わせた治療)が中心となります。脱水にならないように、水分・電解質・糖分のバランスが取れた水分補給を行うことが重要です。腹痛や吐き気のために多くの水分を同時に摂取できないこともありますが、少量ずつでも構わないのでこまめに水分補給を行うことが大切です。口からの水分補給が難しい場合には、点滴による補液も検討されます。またケースによっては、抗生物質の使用についても考慮されることがあります。

溶血性尿毒症症候群が合併した場合には、集学的な治療(複数の治療法を組み合わせて治療を行うこと)が必要とされます。

予防

病原性大腸菌食中毒は、食品を介して発症する病気です。

肉やレバーなどは病原性大腸菌によって汚染されている可能性があるため、適切に調理することが大切です。また衛生環境が整っていない場所では、野菜や水も汚染されている可能性があるため、調理状況に注意し、煮沸した水やミネラルウォーター以外は飲まないなどの対策を検討することが大切です。

 

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