概要
皮膚結核とは結核菌に感染することで、皮膚に病変(病気による変化)が生じる疾患の総称です。また、皮膚結核は、真性皮膚結核と結核疹に分けられます。真性皮膚結核は全体の15%、結核疹は85%を占めます。
結核菌に感染しても、ほとんどの人は免疫の力によって何も症状が現れませんが、感染者の約10%は何らかの症状が現れるといわれています。結核菌の感染によって何らかの症状が現れることを発病といいますが、皮膚結核は発病者の0.1%に現れるに過ぎず、非常に珍しい病気です。
原因
結核菌に感染することによって発症します。皮膚結核は、結核菌が直接皮膚に病巣をつくる真性皮膚結核と、結核菌に対するアレルギー反応によって皮疹が生じる結核疹の2つに分けられます。
真性皮膚結核
結核菌が直接皮膚に病巣を作る病気です。肺やリンパ節、骨、筋肉などの結核病変が皮膚にまで及んだものを皮膚腺病と呼び、皮膚結核のなかではもっとも多い病気です。
他には、結核菌に最初に感染したときに血行性に皮膚に感染して病巣を結節したものが、免疫力が下がったときに結核菌が再活性化して生じる尋常性狼瘡、結核菌に免疫がある人の皮膚に新たな結核菌が侵入して生じる皮膚疣状結核があります。
結核疹
結核菌に対するアレルギー反応によって生じる皮疹です。結核菌は体内に侵入するとまず肺のなかに病巣を作りますが、それが血液に乗って全身に行きわたり、皮膚にまで及んだときに生じるアレルギーと考えられています。
症状
それぞれの皮疹によって症状は異なります。
真性皮膚結核
皮膚腺病は首にできやすく、痛みのない皮下結節が生じ、結節と皮膚につながりができて、そこから膿が出てくることがあります。通常、膿が排出される状態では発赤や熱感を伴うものですが、皮膚腺病ではこれらを伴わないため、冷膿瘍と呼ばれています。
また、尋常性狼瘡は、顔面や首を中心に赤褐色の皮疹が散在します。皮疹同士がくっついて大きな病巣となり、長い時間をかけて有棘細胞がんという皮膚がんに進行することもあるため注意が必要です。皮膚疣状結核は、手足の指先などの傷つきやすい部位に多く出現します。
結核疹
代表的な結核疹は、結節性紅斑と呼ばれるもので、下腿や前腕に皮下結節が生じ、発熱や関節痛、膿の排出を伴うことがあります。
また、アレルギー反応によって血管炎を生じる丘疹壊疽性結核疹は、1cmほどの皮疹が多発し、潰瘍となって瘢痕を残して治りますが、皮膚全体では新旧の皮疹が入り混じった状態となるのが特徴です。
陰茎にのみできる丘疹壊疽性結核疹を陰茎結核疹と呼びますが、痛みを伴う潰瘍が陰茎にでき、陰茎癌と同じような見た目から、鑑別(見分けること)が重要になります。
検査・診断
診断には結核菌の存在を確認する必要があります。
血液検査
QFT検査やT-SPOT検査などのIGRA検査によって結核菌に感染しているかどうかを調べます。かつてはツベルクリン反応試験が一般的でしたが、ツベルクリンは、結核の予防接種であるBCGにも反応するため、より正確な感染の有無を調べるにはIGRA検査が必要です。
培養検査
皮疹の組織や膿を培養して結核菌の存在を調べる検査です。また、結核の培養には時間がかかるため、簡易的に行う検査としてPCR法という遺伝子検査があります。
しかし、特に結核疹の場合には結核菌が検出されないこともあるため注意が必要です。
喀痰検査、胸部レントゲン検査
皮膚結核が疑われたり、診断されたりした場合には、必ず肺結核の有無を調べる検査を行います。結核菌は感染すると肺に病巣を作り、発病すると肺の病巣から結核菌が排出され空気感染を生じます。そのため、肺の状態を確認し、肺結核を発症していないかを調べます。
治療
基本的には肺結核と同様の4剤または3剤を併用しての化学療法を行います。標準的には、抗結核薬4剤を2か月、2剤を4か月の計半年間の治療が行われます。肝機能障害がある方や高齢者の方には3剤で対応します。
抗結核薬は皮疹や肝機能障害を生じやすく、慎重に投薬を行う必要があります。また、副作用が強い場合には治療を中断することがあります。
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