しんけいべーちぇっとびょう

神経ベーチェット病

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

ベーチェット病は再発性口腔内アフタ、外陰部潰瘍、粘膜皮膚病変、眼病変を主症状とする原因不明の炎症性疾患で、日本の患者数は約2万人とされています。その10〜20%に中枢神経症状を呈する神経ベーチェット病であり、重症病態として特殊病型の一つの神経型に分類されます。ベーチェット病患者全体の男女比はほぼ1:1ですが、神経型に限ると男性優位です。神経症状はベーチェット病発病早期に出現することもありますが、遅発性に出現することが多く、平均すると発現時期はベーチェット病発診断確定後4~6.5年と報告されています。

大きく2つの病型があり、発熱や頭痛を主体に脳幹髄膜炎の病像で発症する急性型と、体のバランスの崩れや認知症や性格変化などの精神症状が前面に立ち、緩徐に進行する慢性進行型に分けられます。特に慢性進行型に対する現行治療の成績は十分とは言えず 、その克服は今後の課題です。

原因

ベーチェット病の原因は不明ですが、何らかの遺伝的素因に感染病原体やそのほかの環境因子が加わり、白血球の機能が過剰となり、炎症を引き起こすと考えらえています。遺伝的素因の中で最も重要視されているのは、白血球の血液型ともいえるヒトの組織適合性抗原であるヒト白血球抗原(HLA)の中のHLA-B51というタイプで、それ以外のヒトと比べると5~10倍高頻度に発症するとされています。世界的にみるとベーチェット病患者は地中海から中近東、日本を含む東アジアにかけて集積していますが、いずれもHLA-B51の頻度が多い地域です。そのほか、日本ではHLA-A26も多いタイプとされています。しかし、ハワイ移住した日本人にはほとんど発症がないこと、ベルリンに移住したトルコ人の発症率はドイツ人よりはるかに多いが、トルコよりは低くなることなどから、環境因子の重要性を裏付ける成績も蓄積されています。 

ベーチェット病になってもなぜ、神経症状が出る人と出ない人に分かれるか、その理由も明らかでありませんが、神経型、中でも慢性進行型患者は特にHLA-B51の頻度が高く、男性、喫煙者に多いという統計も示されています。また、眼病変の治療薬として使用されるシクロスポリンが急性型を誘発することがあり、神経型と診断された場合には使用してはいけません。

症状

急性型は発熱や頭痛、吐き気などの髄膜炎や脳炎などの症状で急激に発症します。また片麻痺や脳神経障害などの神経症状を併発することもあります。一般に治療反応性は良好で、症状は一過性に軽快しますが、一部の例で再発し、さらに再発を反復しつつ、以下の慢性進行型に移行する例もあります。

慢性進行型には急性型を反復しながら、あるいは潜在性に神経・精神症状が進行していきます。歩行時のふらつき、バランスがとりにくい、手先の細かい仕事ができない、言葉のもつれ、食事のときにむせるなど神経症状とともに、物忘れなどの認知機能の低下、温厚な人が怒りっぽくなる、几帳面な人がルーズになるなどの性格変化など精神症状も見られます。寝たきり状態になる方は以前より減りましたが、働きざかりの40-50才台で仕事の継続が困難になり、社会的な問題も生じます。

神経ベーチェット病は確実にベーチェット病と診断できることが前提ですので、類似した神経症状を示す他の病気と区別する上では、厚生労働省診断基準に挙げられる再発性口腔内アフタ、外陰部潰瘍、粘膜皮膚病変、眼病変などの主症状をはじめとし神経系以外の症状を確認することも重要です。

検査・診断

中枢神経病変の存在は頭部MRIをはじめとした画像検査や腰椎部に針を刺して脳脊髄液を採取する腰椎穿刺検査などで確認します。急性型では脳脊髄液中の細胞成分の増加が特徴的ですが、細菌やウイルス感染による髄膜炎を除外する必要があります。MRIで脳幹を中心に異常信号が描出されることもありますが、異常所見がないこともあります。一方、慢性進行型ではMRIでは脳幹部、小脳、大脳などの萎縮の進行がとらえられ、その症状の出方からも神経変性疾患との区別が問題になることもあります。しかし、髄液検査では変性疾患とは異なり、持続的なインターロイキン-6(IL-6)の上昇が特徴的で、中枢神経で慢性的な炎症を反映したものと考えられます。

治療

治療法は急性型と慢性進行型で異なります。

急性型の神経ベーチェット病

発熱、頭痛など急性期の脳髄膜炎を抑えるために中等量から大量の副腎皮質ステロイド、時には点滴によるステロイドパルス療法も行いますが、その反応性は一般に良好です。眼病変に対してシクロスポリンを使用している場合には中止し、再投与をしてはいけません。治療継続が必要な眼病変があれば、眼科の先生と相談し、アザチオプリンやTNF阻害薬であるインフリキシマブを考慮することになります。また、コルヒチンの再発予防効果が示されていますが、それでも再発を繰り返す例にはインフリキシマブを考慮します。

慢性進行型の神経ベーチェット病 

世界的には副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬が使用されていますが、日本の成績では副腎皮質ステロイド、シクロフォスファミド、アザチオプリンなどの有効性は乏しく、唯一、有効性が確認されたのはメトトレキサートのみで、これが主な治療薬になります。その投与方法は関節リウマチと同様に8-16mg週一回投与です。しかし、効果不十分な場合は、有効性の知見が蓄積しつつあるインフリキシマブの追加併用を早期から考慮すべきというのが専門医のコンセンサスです。

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