概要
網膜振盪症とは、目に外側から衝撃が加わることにより網膜にむくみが生じ、網膜が白濁した状態をいいます。
“もの”は、その色や形が光として目の中に入り、網膜に映し出されます。網膜の中心部には黄斑部といって色や形を識別する役割を持つ部分があり、そこには視神経が集中しています。網膜に映し出された情報は視神経を通じて脳へと伝わることで、ものを像として認識することができます。網膜振盪症は無症状のまま経過し自然に治るケースが多いですが、網膜剥離が生じたり、黄斑部に白濁が及んだりすると、視力低下が生じる可能性があります。
原因
網膜振盪症は、目への鈍的な衝撃が原因となって発症します。たとえばスポーツの際に肘やボールが目に当たったり、何らかの理由で目のあたりを打撲してしまったりした場合に起こることがあります。
症状
網膜振盪症は網膜周辺部に起こることが多く、自覚症状はほとんどありません。しかし、黄斑部に病変が及ぶと視力低下が生じる可能性があります。
検査・診断
目をぶつけた時に生じる病気は網膜振盪症だけでなく、網膜剥離、外傷性虹彩炎、前房出血、虹彩離断などがあります。そのため、さまざまな病気を視野に入れて検査を行う必要があります。具体的には視力検査のほか、眼圧検査、細隙灯顕微鏡検査、眼底検査などが行われます。
眼圧検査
眼圧検査とは、目の中の圧力を測定する検査です。眼圧とは目の中を満たす房水という液体の圧力のことです。眼圧検査には目に直接測定器具をあてる方法と、風をあてて測定する方法があります。房水は目の形状を保つために一定の眼圧を保っており、正常な眼圧は10〜21mmHgといわれています。
外傷性虹彩炎や前房出血、虹彩離断が出現した場合には眼圧が異常となることがあります。
細隙灯顕微鏡検査
顕微鏡から出る細隙光(スリット状の光)を目に当てながら、高倍率に拡大して目を調べる検査です。目の表面や内部の様子を詳しく調べることができるほか、まぶたや目の周辺の皮膚も確認できます。水晶体や硝子体、網膜、視神経について詳しく調べる必要がある場合には、瞳孔を拡げる目薬を用いて検査を行うこともあります。
外傷による虹彩炎や前房出血が生じていないかなどを検査します。
眼底検査
検眼鏡と呼ばれる装置を使用し、目に光を当てて網膜、視神経などの目の内部を詳しく調べる検査です。細隙灯顕微鏡検査と同様に、目の内部を詳しく調べるために、瞳孔を拡げる目薬を用いることもあります。
網膜振盪症の範囲や程度を検査することができます。
治療
網膜振盪症の多くは数週間の経過で網膜の白濁部分が消失して自然に治るため、特に治療の必要がないことが一般的です。しかし、網膜振盪症が重度の場合は白濁部分の網膜が萎縮して網膜裂孔を生じることがあるため、注意深く経過観察を行う必要があります。網膜裂孔が出現した場合は眼球の内側にある網膜が剥がれる網膜剝離に至ることがあるため、レーザー治療や手術が必要になります。
また、黄斑部に病変が及んだ場合は、視力障害が残ったり外傷性黄斑円孔が生じたりすることもあり、症状に応じた治療が必要になります。
この記事は参考になりましたか?
なお、こちらで頂いたご意見への返信はおこなっておりません。医療相談をご要望の方はこちらからどうぞ。
「網膜振盪症」を登録すると、新着の情報をお知らせします