ろうねんきせいしんびょう

老年期精神病

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

老年期精神病とは、高齢者において幻覚・妄想などの精神病症状がみられる病気を総称した呼び名で、正式な診断名ではありません。そのため、老年期精神病には正確な定義はありません。ここでは、老年期に幻覚、妄想を来す病気について説明します。

原因

老年期における幻覚妄想状態は、以下4つに分類されます。

  • 身体や脳の病気を主な要因する幻覚妄想状態:せん妄認知症よる幻覚妄想など
  • 薬物を主な要因とする幻覚妄想状態:アルコール、身体疾患や精神疾患の治療薬による幻覚妄想
  • 老年期に初めて発症した、上記2つに分類されない機能性幻覚妄想状態:心理、環境、状況的ストレス要因によるもの、遅発性の統合失調症など
  • 若年発症の統合失調症を経験した高齢者(広義の統合失調症圏障害)

ただし、高齢者の場合、身体の病気や薬物、ストレスと幻覚妄想状態の関連があるのかどうか、明確に分類できないケースも少なくありません。そのため、それぞれの要因を慎重にみて、どの要因がどの程度症状に関与しているかを検討し、治療方法の決定や介護、環境調整に反映させる必要があります。
 

症状

認知症が背景にある幻覚妄想

  • 認知症の初期や認知機能障害の目立たない時期に幻覚妄想が出現し、のちに記憶障害や判断力障害、見当識障害が現れる場合があります。(認知症の行動・心理症状:BPSD)
  • 認知症がある場合の妄想の内容としては、物盗られ妄想が最も多くみられます。また、以下のような妄想がみられることもあります。
  • 身体や生命の安全への危険、虐待されているなどの被害感を主徴とする妄想
  • 自分の内部や周囲に人がいるといった妄想
  • 見当識障害や状況認知の障害に起因した妄想
  • 嫉妬妄想など家族に関連した妄想 など

このほか、難聴や視知覚障害が妄想、音楽性幻聴や妄想となる場合もあります。

機能性の幻覚妄想状態(広義の統合失調症圏障害)

統合失調症は、一般的に若年(10代後半~30代前半)で発症することが多いとされています。統合失調症が老年期または初老期に初発するかどうかについては議論があり、かつては初老期以降に発症するものを遅発性統合失調症として区別していました。現在は統合失調症の発症年齢についての制限は撤廃され、高齢での発症も認められています。

初老期以降に初発する統合失調症の症状としては、被害妄想や幻覚などの陽性症状が優位に経過するものの、感情や社会機能が保たれており、自発性の低下などの陰性症状は目立たないことが特徴的です。
 

検査・診断

老年期精神病は正式な診断名ではありません。幻覚や妄想を来している要因などをみて、それぞれに応じた治療方針などを選択します。

幻覚妄想状態がある高齢の患者さんの場合、検査や治療の必要性を理解することが難しいこともあります。そのため、検査の際には患者さんを刺激して興奮させないような配慮が求められます。患者さんのご家族は、問診の際に患者さんのもともとの性格を伝えるなど、積極的に情報を提供することが大切です。

治療

薬物治療について

高齢者に薬物治療を行う場合、身体疾患の合併やその治療薬の影響について考慮する必要があります。抗精神病薬の内服に伴う呼吸、循環器系の抑制や脱力、転倒などの過鎮静や錐体外路症状の出現に留意し、少量から処方することが推奨されます。

認知症に伴う幻覚妄想状態の治療

治療者は、患者さんの認知症の程度や要介護度を確認し、主に患者さんの介護を担当している方(ご家族など)と話し合ったうえで、どこまで介入可能であるかを判断します。治療においては患者さんとご家族、地域の介護担当者との良好な関係をつくることも重要です。

機能性幻覚妄想状態の治療

老期初発の機能性幻覚妄想状態(遅発性統合失調症圏障害)では、アレルギー反応や飲酒歴についての聴取がなされることがあります。薬物療法としては非定型抗精神病薬の少量投与が有効であるとされています。
 

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