概要
肺アミロイドーシスとは、異常な構造のタンパク質(アミロイド)がさまざまな臓器に沈着するアミロイドーシスの中で、肺の組織に沈着し、機能障害を引き起こす病気です。肺アミロイドーシスは大きく2つに分類され、アミロイドが肺を含めた全身のさまざまな臓器に沈着する“全身性アミロイドーシス”と、肺など1つの臓器のみに沈着する“限局性アミロイドーシス”に分けられます。
アミロイドーシスには遺伝性のものと非遺伝性のものがあり、非遺伝性のものは骨髄腫などの血液腫瘍や加齢、遺伝子変異、関節リウマチなどの慢性炎症性疾患、長期にわたる透析などが発症の原因として考えられています。アミロイドーシスを発症するタンパク質は現在30種類以上(2024年12月時点)あるといわれ、種類によって治療内容が異なります。
発症すると、喘鳴(呼吸をするときにゼーゼーなどの音がする状態)や咳、呼吸困難などの症状がみられることがありますが、限局性アミロイドーシスの場合では無症状のことも多く、健診の画像診断時に肺の異常がみられ、発覚することもあります。
原因
肺アミロイドーシスはアミロイドと呼ばれる異常なタンパク質が肺の組織に沈着することによって発症します。そのタンパク質の種類によっていくつかの病型に分けられます。
- AL(原発性)アミロイドーシス……免疫に関わる抗体のタンパク質からアミロイドが作られる。
- AA(続発性)アミロイドーシス……関節リウマチなどの炎症が長く続くことによって引き起こされる。
- 遺伝性ATTRアミロイドーシス……遺伝子変異による異常タンパクの産生によって引き起こされる。
- 野生型ATTRアミロイドーシス……加齢が原因の1つと考えられるが、詳しい原因は不明。
- 透析関連アミロイドーシス……長期間の透析治療によって引き起こされる。
症状
肺アミロイドーシスは、発症すると喘鳴、咳、呼吸困難などの症状が現れ、アミロイドーシスの病型によって症状の程度や進行の速さはそれぞれ異なります。肺以外にもアミロイドが沈着すると、腎臓の場合はネフローゼ症候群、心臓の場合は心不全など各臓器のさまざまな機能障害を引き起こします。
検査・診断
肺アミロイドーシスが疑われる場合は、以下のような検査が行われます。
画像検査
ほかの呼吸器疾患との鑑別を行うためにX線やCTなどによる画像検査を行います。画像検査のみでは診断を確定できないため、精密検査が必要となります。
気管支鏡検査
内視鏡を口から挿入して気管支の内部を詳しく検査します。
肺生検
肺の組織を一部採取し、アミロイドの有無を調べる検査です。肺アミロイドーシスの確定診断を行うために必要な検査になります。
血液検査
アミロイドーシスの病型を鑑別するために血液検査を行い、アミロイドのもととなるタンパク質を調べます。
治療
治療は沈着するアミロイドの種類によって異なります。ALアミロイドーシスでは抗がん薬治療、幹細胞移植が行われ、AAアミロイドーシスでは抗リウマチ薬の投与によりアミロイドのもととなるタンパク質の産生を減らす治療が行われます。ATTRアミロイドーシスでは、もとのタンパク質がアミロイドになるのを抑制する内服薬とともに、遺伝性であれば肝移植や異常な遺伝子の働きを抑える遺伝子治療により異常なタンパク質の産生を抑制します。透析関連アミロイドーシスの場合は透析液や透析膜の改良による予防、専用の透析膜による進行抑制が行われています。
また、どの病型のアミロイドーシスも一度沈着したアミロイドを組織から除去する治療はなく、呼吸困難などが生じた場合は酸素投与などの対症療法が行われます。
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