概要
肺アミロイドーシスとは、肺にアミロイドと呼ばれる異常なタンパク質が沈着することで引き起こされる病気です。アミロイドが肺に限局して沈着することもあれば、心臓や神経など全身各所に沈着する一連の流れのなかで肺にも病変がみられるというケースもあります。アミロイドの沈着する部位によって症状の出方は大きく異なります。無症状に経過することもまれではなく、健康診断などで偶発的に見つかることもあります。
原因
アミロイドと呼ばれるタンパク質が体内各臓器に蓄積する病気を、アミロイドーシスと呼びます。心臓や腎臓、神経など広い臓器にアミロイドの蓄積をみることがあり、この状態を全身性アミロイドーシスと呼びます。全身性アミロイドーシスの一環として肺病変が生じることがあり、この場合に肺アミロイドーシスが発症します。その一方、肺に限局してアミロイドが沈着し、肺アミロイドーシスが引き起こされることもあります。
アミロイドといっても、その種類は実にさまざまです。加齢現象と共にアミロイドが蓄積することもあれば、免疫関連のタンパク質を構成成分としてアミロイドが形成されることもあります。また、関節リウマチなど慢性的に炎症が生じている場合や、透析を長期間受けている場合にもアミロイドは蓄積されます。そのため、肺アミロイドーシスは、こうした状況を原因として発症することになります。
特に肺アミロイドーシスで問題となるのは、免疫異常に関連したものです。多発性骨髄腫と呼ばれる血液系のがんがあり、それに関連する形で肺アミロイドーシスが引き起こされることが知られています。
症状
肺アミロイドーシスは、肺の中でもどのように病変を形成するかはさまざまであり、部位によって呼吸器関連の症状を生じるかどうかは異なります。気管や気管支など、呼吸の通り道に病変が生じる場合には、空気の流れが著しく阻害される可能性があるため、咳や息苦しさなどの症状が出現します。
その一方、末梢部位に病変がある場合には、明らかな症状がなく経過することもあります。そのほか、肺アミロイドーシスでは気胸を起こすこともあり、突然の胸痛や息苦しさなどが現れる場合もあります。
また、肺アミロイドーシスは、全身性アミロイドーシスの一環として発症することもあります。全身性アミロイドーシスの症状には、心臓関連(息苦しさや咳、痰、むくみや動悸)、神経関係(しびれや感覚麻痺など)など多彩なものがあります。肺アミロイドーシスに関連した症状は明らかではなくとも、これら他臓器の症状が前面に出ることもあります。
なお、アミロイドーシス一般的に当てはまることとして、多発性骨髄腫や慢性関節リウマチなどを原因として発症することが知られています。そのため、これら基礎疾患に関連した症状(発熱や体重減少、関節の腫れなど)がみられることもあります。
検査・診断
胸部単純レントゲン写真やCT(エックス線を使って身体の断面を撮影する検査)、気管支鏡などを用いて検査します。アミロイドが蓄積していることを同定するために、病変部位からの組織を採取することも検討されます。ただし、肺の部位によっては組織を採取することが困難なこともあります。そのため、手術を行うことで得られた検体を用いて顕微鏡的に検査することで、肺アミロイドーシスの診断がつくこともあります。なお、アミロイドが肺以外にアプローチしやすい部位(たとえば皮膚など)に生じている場合には、別の組織からの組織採取も試みます。
治療
アミロイドの沈着が肺に限局しており、特に症状をきたしていない場合には積極的な治療介入をせず、注意深く経過観察を行うことがあります。ただし、肺アミロイドーシスの診断が確定できないことも少なくないため、確定診断のために手術による切除術が選択されることあります。
肺アミロイドーシスの病変部位が多い場合や、全身性アミロイドーシスの一環として肺アミロイド―シスが発症している場合には、切除術以外の方法が選択されます。アミロイドの構成物質に応じて治療方法は異なるため、基礎疾患を同定することが重要です。たとえば多発性骨髄腫に関連して発症している肺アミロイドーシスの場合であれば、化学療法をはじめとした治療介入が選択されます。
肺アミロイドーシスは、病変の広がり具合、基礎疾患によって治療方法が大きく異なるため、治療方法を決定するためには正確な診断を行うことが大切です。
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