「腹腔鏡手術は、器具を介して手術を行うため、一般的には開腹手術よりも時間がかかってしまいます。しかし、経験を積むとその差はなくなります。たとえば、竹馬に乗って走るより、そのまま走ったほうが速く走れます。ですが、練習すれば竹馬に乗っていても速く走ることができるのと同様です。」とがん研有明病院 婦人科医長の金尾祐之先生はおっしゃいます。本記事では、腹腔鏡手術に医師の技術が求められることについて、お話しいただきました。
記事1「婦人科における腹腔鏡手術のメリットとデメリット-真のメリットとは」でも述べたとおり、腹腔鏡手術の重要なメリットは次のようなものであると考えています。
がん治療では、がんを安全に取り除いて根治性を高めるということが重要になります。上記のような腹腔鏡手術のメリットは、その最重要である「がんを安全に取りきる」という目的を達成するために非常に有用です。しかし、前項(参考記事「婦人科領域の腹腔鏡手術の適応-卵巣がん、子宮肉腫では使えるのか」)で述べたとおり腹腔鏡手術には弱点もあるため、すべてのがんではなく、腹腔鏡手術のメリットが活きるがんに使用されることが望ましいと考えます。
腹腔鏡手術のデメリットのひとつに、術者による技術の差が大きいということが挙げられます。一般的に、腹腔鏡手術は開腹手術よりも時間を要するといわれています。なんらかの機械・器具を介するよりも、自らの手で行うほうがスムーズであるのは容易に想像ができることでしょう。しかし腹腔鏡手術の経験が豊富な医師では開腹、閉腹の時間がかからない分、開腹手術よりも腹腔鏡手術のほうが手術時間が短くなる場合もあります。手術は、その医師の技術や経験に左右されるということを念頭に置いておくと良いのではないでしょうか。
また、合併症においても同様のことがいえます。経験が少ない医師が手術を行えば、開腹手術においても腹腔鏡手術においても、合併症が起こる危険性があります。腹腔鏡手術だから開腹手術よりも合併症が増えるということはなく、あくまでも施設や医師によって、手術時間や合併症の頻度などは異なります。
腹腔鏡手術において医師側が感じるデメリットに、触覚がなくなるということが挙げられます。開腹手術では、手でがんの広がりなどを確認できますが、腹腔鏡手術では器具を用いるため、手で体内を触れることができなくなります。しかし、触覚を感じることはできると考えています。腹腔鏡手術の経験を積めば、視覚や器具を介した触覚でも、がんの広がりや臓器の硬さなどはわかります。また手と同じような感覚で器具を動かすこともできます。このように、腹腔鏡手術は医師の技術を高めることによって、触覚というデメリットを補うこともできるのです。
がん研有明病院 婦人科 部長
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