原因
脊髄小脳変性症は原因によって遺伝性と孤発性、そのほかの3つに分類されます。
遺伝性(遺伝性脊髄小脳変性症)
遺伝性脊髄小脳変性症は、遺伝子の異常が原因で発症します。原因遺伝子はこれまでに30型以上が判明しており、中でももっとも発症頻度が高いのはMJD1遺伝子の異常による脊髄小脳変性症3型(マシャド・ジョセフ病*)です。
遺伝子は人間の体を構成する設計図のようなもので、両親から1本ずつ受け継ぐ常染色体と、性別を決定する性染色体があります。遺伝性脊髄小脳変性症は、主に常染色体の異常によって発症します。常染色体異常による病気の遺伝の仕方には、2本のうちいずれか1本の遺伝子の異常によって病気を発症する常染色体顕性(優性)遺伝と、2本の遺伝子の両方に異常があることで初めて病気を発症する常染色体潜性(劣性)遺伝があります。遺伝性脊髄小脳変性症はどちらの遺伝形式でも発症しますが、多くは常染色体顕性(優性)遺伝によって発症します。
*マシャド・ジョセフ病:歩行時にふらつく、思うように手を動かせない、ろれつが回らないなどの運動失調症状に加え、自分の意思に反して体が動いてしまうジストニア、筋肉が緊張し体がこわばってしまう筋固縮症状などがみられる。
孤発性(孤発性脊髄小脳変性症)
孤発性脊髄小脳変性症の原因としては、多系統萎縮症と皮質性小脳萎縮症という病気がありますが、多系統萎縮症が原因の大半を占めます。多系統萎縮症の明確な原因は解明されていませんが、多くの患者の脳細胞(希突起膠細胞)内にα-シヌクレインというタンパク質が凝集してできた、封入体と呼ばれる通常ではみられない物質が確認されています。そのため、多系統萎縮症の発症には封入体が関与していると考えられています。
一方、皮質性小脳萎縮症は、小脳の運動機能に関わるプルキンエ細胞の異常によって発症すると考えられています。
そのほかの原因によるもの
そのほかのタイプはまれですが、両足がつっぱって思うように動かせなくなる痙性対麻痺などが挙げられます。痙性対麻痺は脊髄損傷や脊髄梗塞、脳性麻痺、ウイルス感染症(HTLV-1関連脊髄症)などが原因になるほか、遺伝性のものもあります。
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