せきずいしょうのうへんせいしょう

脊髄小脳変性症

同義語
SCD
最終更新日:
2024年10月29日
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2024/10/29
更新しました
2017/04/25
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概要

脊髄小脳変性症とは、運動機能を司る小脳の異常により手の震えや歩行時のふらつきなどの運動失調症状がみられる病気の総称で、国の指定難病の1つです。

脊髄小脳変性症は、遺伝によって発症する遺伝性のものと、遺伝以外の原因による孤発性のもの、そのほかの原因によるものの3つに分類され、約7割が孤発性だといわれています。いずれの場合にも、歩行や日常生活動作などが困難となる運動失調症状が現れ、徐々に進行します。

現時点では、脊髄小脳変性症を根治させる治療法は確立されていないため、発症した場合は現れた症状に対する対症療法が行われます。

原因

脊髄小脳変性症は原因によって遺伝性と孤発性、そのほかの3つに分類されます。

遺伝性(遺伝性脊髄小脳変性症)

遺伝性脊髄小脳変性症は、遺伝子の異常が原因で発症します。原因遺伝子はこれまでに30型以上が判明しており、中でももっとも発症頻度が高いのはMJD1遺伝子の異常による脊髄小脳変性症3型(マシャド・ジョセフ病*)です。

遺伝子は人間の体を構成する設計図のようなもので、両親から1本ずつ受け継ぐ常染色体と、性別を決定する性染色体があります。遺伝性脊髄小脳変性症は、主に常染色体の異常によって発症します。常染色体異常による病気の遺伝の仕方には、2本のうちいずれか1本の遺伝子の異常によって病気を発症する常染色体顕性(優性)遺伝と、2本の遺伝子の両方に異常があることで初めて病気を発症する常染色体潜性(劣性)遺伝があります。遺伝性脊髄小脳変性症はどちらの遺伝形式でも発症しますが、多くは常染色体顕性(優性)遺伝によって発症します。

*マシャド・ジョセフ病:歩行時にふらつく、思うように手を動かせない、ろれつが回らないなどの運動失調症状に加え、自分の意思に反して体が動いてしまうジストニア、筋肉が緊張し体がこわばってしまう筋固縮症状などがみられる。

孤発性(孤発性脊髄小脳変性症)

孤発性脊髄小脳変性症の原因としては、多系統萎縮症と皮質性小脳萎縮症という病気がありますが、多系統萎縮症が原因の大半を占めます。多系統萎縮症の明確な原因は解明されていませんが、多くの患者の脳細胞(希突起膠細胞(きとっきこうさいぼう))内にα-シヌクレインというタンパク質が凝集してできた、封入体と呼ばれる通常ではみられない物質が確認されています。そのため、多系統萎縮症の発症には封入体が関与していると考えられています。

一方、皮質性小脳萎縮症は、小脳の運動機能に関わるプルキンエ細胞の異常によって発症すると考えられています。

そのほかの原因によるもの

そのほかのタイプはまれですが、両足がつっぱって思うように動かせなくなる痙性対麻痺(けいせいついまひ)などが挙げられます。痙性対麻痺は脊髄損傷脊髄梗塞(せきずいこうそく)脳性麻痺、ウイルス感染症(HTLV-1関連脊髄症)などが原因になるほか、遺伝性のものもあります。

症状

脊髄小脳変性症の症状はさまざまですが、いずれも運動機能を調整する小脳が障害されることで以下のような運動失調症状が現れます。

  • ろれつが回らない
  • 手を器用に動かせない、動かそうとすると震える
  • 歩行時にふらついたり転んだりする

また、感覚の鈍さやしびれなどの末梢神経障害(まっしょうしんけいしょうがい)のほか、動作が乏しくなったり筋肉がこわばったりするパーキンソン症状を伴うこともあります。さらに、若年で発症する場合には、てんかん知的能力障害、意思とは無関係に体が動く不随意運動を合併するケースもあります。

検査・診断

脊髄小脳変性症が疑われる場合には、問診や神経学的診察、画像検査、遺伝学的検査などが行われます。

問診では、これまでの病歴や家族内に同様の症状がみられる人がいないかなどを確認します。家族内で脊髄小脳変性症を発症した人がいる場合には、確定診断や病型の診断のために遺伝学的検査を行うケースもあります。

神経学的診察では、刺激に対する体の反応や反射などを確認し、麻痺の有無や程度を調べます。画像検査では、必要に応じてCT検査やMRI検査、アイソトープを用いてCT撮影を行う脳血流シンチグラフィ、糖質の代謝機能を調べるPET検査などが行われます。

治療

現時点で脊髄小脳変性症の根本治療は確立されていないため、主に症状に対する薬物療法などの対症療法が行われます。

たとえば、運動失調症状に対してはタルチレリン水和物という薬が用いられます。タルチレリン水和物には、運動失調症状の進行を緩める作用が期待できます。パーキンソン症状がみられる場合には抗パーキンソン病薬を用います。

薬物療法のほか、運動機能の維持のためにリハビリテーションが行われることもあります。遺伝性痙性対麻痺HTLV-1関連脊髄症に対しては、2023年10月からロボットスーツの装着による歩行リハビリテーションが保険適用されました。このほか、症状の進行によって飲み込みが困難になった場合には、鼻から挿入したチューブや胃に増設した胃ろうに直接栄養を投与する栄養療法が行われることもあります。

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