医療技術の進展により、あらゆる手術は低侵襲な(身体的な負担が少ない)手技へと転換しています。脳梗塞の予防や脳動脈瘤の補助的治療などで行われる「脳血管バイパス術」は、非常に細い血管を短時間で吻合する必要があり、難易度の高い手術手技です。
10年以上にわたり、1日50針の顕微鏡下縫合練習を年200日以上続け、「10万針の練習」を完遂された井上 智弘先生(NTT東日本関東病院 脳神経外科 部長)は、国内外で、バイパス術に関する講演やハンズオンセミナー(実習的学習)などの講師などを積極的に行っています。
2019年5月22日(水)〜24日(金)には、チェコ共和国で開催された研究集会に招聘され、講義とハンズオンセミナーを実施しました。
2019年5月22日(水)〜24日(金)に、チェコの南部、チェスケービデヨヴィッツェという街で、『10th NEUROSURGICAL MICROVASCULAR WORKSHOP(第10回 脳神経外科・微小血管研究集会)』が開催されました。会期中には多くの講演、セミナーなどが実施され、井上先生は1日目に講義を、2日目にハンズオンセミナーを担当されました。
Přibáň Vladimír(プシバン・ウラジミール)先生と、Jiří Fiedler(ジジ・フィードラー)先生の御二人が主催となられた当研究集会では、チェコ国内からはもちろんのこと、近隣国のスロバキアやウクライナ、遠くスコットランドなどからも受講生が集まり、活発な議論が繰り広げられました。
研究集会1日目には、チェスケービデヨヴィッツェ病院にて、いくつかのライブ手術が行われました。そのうちの1つはジジ・フィードラー先生が担当され、受講生は別会場でその映像を見ながら議論を行いました。
同日、後半はホテル・クラリオンに場を移し、いくつかの発表が行われました。井上先生は、事前に撮影した手術映像を流しながら講演を実施。受講生からの反響は大きく、会場は大いに盛り上がりました。
研究集会2日目には、チェコ科学アカデミー(Czech Academy of Sciences)に会場を移し、いくつかのハンズオンセミナーが行われました。
井上先生は「微小血管の吻合技術」の第一線で活躍する専門家として招聘され、ハンズオンセミナーを実施。井上先生による指導のもと、受講者は顕微鏡と人工血管(あるいは動物検体の血管)を用いて、血管吻合の技術を学びました。
このたび『10th NEUROSURGICAL MICROVASCULAR WORKSHOP』でハンズオンセミナーを実施するまでには、どのような経緯があったのでしょうか。
井上 智弘先生
研究集会主催者フィードラー先生が、私がヨーロッパの雑誌で発表したいくつかの論文を読み、興味を抱いてくださったことが事のはじまりです。その論文は脳血管バイパス術や頸動脈内膜剥離術(CEA)に関するもので、フィードラー先生はそれらの手術の前後で高次脳機能が悪化しないように手術する方法を追究されていました。
2017年の秋頃に日本でお会いし、フィードラー先生は当院で私の手術を見学されました。同じ分野に傾倒していたことや、年齢が近いこともあり、すぐに意気投合しました。
フィードラー先生からは、「ぜひチェコの若手医師に向けて、ハンズオンセミナーを!」とお誘いいただいただけでなく、実現に向けて各方面に掛け合ってもくださいました。そして、出会った翌年2018年の夏には、チェコの首都プラハで行われた学会に招聘いただき、講演をさせていただきました。
しかしこのときには準備が間に合わず、ハンズオンセミナーは実施できませんでした。そのため私たちは『10th NEUROSURGICAL MICROVASCULAR WORKSHOP』でハンズオンセミナーを実施することを目指して準備を進め、今回、ついにそれが実現したのです。
国内外で講義や講演を行われる井上先生ですが、若手医師にとってのハンズオンセミナーの重要性をどのようにお考えでしょうか。
井上 智弘先生
手術は、練習し続けなければ上達しません。一生懸命、手術の練習をして、実際にたくさんの手術を経験し、そして、最終的に論文にまとめる。妥協せずにこの繰り返しを続けることで、医師として一段高い「想像もしなかった世界」へ入っていくことができるはずです。
今回は、チェコの若手医師に向けてハンズオンセミナーを行うという、貴重な機会を得ました。これからも国内外問わず、熱意を持った医師たちに、私の持ちうる手術手技や考え方を伝えていきたいと思っています。
NTT東日本関東病院 脳神経外科 部長/脳卒中センター長
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