本記事では、武蔵野赤十字病院整形外科部長の山崎隆志先生に、腰椎すべり症とはどのような疾患なのかについて詳細に解説していただきます。
腰椎すべり症とは、腰椎自体が正常な位置からずれて神経組織を圧迫し、腰痛や下肢の麻痺など、様々な症状を呈するようになった状態を指します。また、腰椎すべり症は大別して、「腰椎変性すべり症」「腰椎分離すべり症」の2種類に分けられます。このうち頻度が高いのは変性すべり症です。また、分離すべり症は椎体のすべり度合が大きい場合もありますが、痛みなどの症状が出ないケースも珍しくありません。この場合、積極的な治療は行いません。腰椎変性すべり症・腰椎分離すべり症ともに、痛みがある場合でもまずは理学療法や薬物療法を選択し、思わしい結果が得られない場合に手術を選択するのが基本的な考え方です。
ただし、症状が非常に軽くても手術が必要な形成不全性すべり症という疾患があります。これは生まれつき骨の形成の状態が悪いために起こるすべり症です。腰椎の分離も伴っていることが多く、高度なすべりに進行し神経症状を呈する状態になる可能性が高いすべり症です。形成不全性すべり症の患者さんは、仙骨(骨盤の中央に位置する骨)が丸い形をしています。医師は画像診断などの検査を行う際に、このことを根拠に診断を行います。悪化防止のために手術をした方が有利とされています。
腰椎分離すべり症は、腰椎分離のための力学的脆弱性と長期間かけて腰椎の変性が進むことによって起こる疾患です。具体的には、分離した椎弓によって腰椎の変性が進み、腰椎が正常な位置からずれた状態を指します。
また、腰痛分離部分に骨棘(こっきょく 骨が棘のように飛び出した部分)が生じることがあります。そのため、神経組織が圧迫され、腰痛や下肢の麻痺、尿の出が悪くなるなどといった症状が出ることがあります。
腰椎変性すべり症は、加齢に伴って椎間板(腰椎の間にあるクッションとなる組織)や椎間関節が変性し、腰椎が正常な位置からずれてしまう疾患です。特に第4腰椎と第5腰椎の間に変性がよくみられます。腰椎の変性が進むと、腰椎が前方にすべり、馬尾神経を保護している管状の構造をしている脊柱管の内腔も狭くなります。(脊柱管狭窄症と呼びます)。この場合も、馬尾神経や分岐した神経組織(神経根)を圧迫して様々な症状を引き起こしやすくなります。
腰椎変性すべり症では、少ない距離ならば歩けるものの、長時間立ったり歩いたりしているとお尻や太ももの部分が痛くなって歩けなくなる症状(間欠性跛行)が現れやすくなります。ただし、少し座って休めば楽になってまた歩けることが多く、日によっても痛みの状態が変化することがあります。
疾患が悪化すると、腰痛や下肢痛だけでなく足に痛みやしびれが出たり、力が弱くなったりすることがあります。さらに重篤になると排尿や排便に障害が出ることがあるため、早期に治療を行い、日常生活においても腰部に負荷をかけないなどといった工夫をすることが重要です。
藤枝駅前クリニック 院長
藤枝駅前クリニック 院長
日本脊椎脊髄病学会 脊椎脊髄外科指導医日本整形外科学会 認定脊椎脊髄病医 ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター
東京大学医学部を卒業後、東京大学医学部付属病院分院、三楽病院、国立西埼玉病院にて診療に携わる。1995年より武蔵野赤十字病院入職。2002年より同院 整形外科部長、2012年より副院長就任。脊椎疾患で悩む患者の診療に携わり、脊椎手術は3000例を越える。(2015年時点)また、海外の紛争地および被災地での診療経験も多数。多くの国民の健康上の課題の一つとなった骨粗しょう症脊椎対策のエキスパートとして、医師の間からも評価を集めている。
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