概要
膝関節脱臼とは、下腿に相当する脛骨と、太ももを構成する大腿骨の位置関係がずれてしまっている状態を指します。
膝関節周囲には神経や動脈、靭帯など重要な器官が存在しており、膝関節脱臼が生じることでこれらが同時に損傷を受けることもあります。
膝関節脱臼はまれな外傷ではありますが、強い外力によって引き起こされ、膝関節の機能障害を残すことも懸念されるため注意が必要です。
原因
膝関節に対して強い外力が加わることを原因として発症します。外力が生じる状況としては、交通事故によるものが多いです。また、フットボールやラグビーといったスポーツの際に生じることもあります。
膝関節脱臼が生じる状況は非常に強い力が加わるものであることもまれではなく、膝関節の脱臼以外にも、そのほかの部位に外傷を伴うこともあります。
また、膝関節周囲には多くの靭帯や動脈、神経も存在しています。たとえば膝関節が過度に進展することで脱臼は引き起こされますが、この際には膝関節の安定性を保つ靭帯が断裂します。
膝関節脱臼の治療を考えるうえで、こうした靭帯・動脈・神経損傷の状況を正確に評価することもとても大切です。
症状
大腿部と下腿との位置関係の変形が見た目からわかります。また、膝関節の腫れや痛み、出血斑がみられることもあります。膝関節の靭帯断裂が生じることで、膝関節の安定性が損なわれることもあります。
動脈や神経が同時に損傷を受けることがありますが、この場合には下肢の腫れや冷感、感覚麻痺などといった症状が起こることもあります。症状の程度が強い場合には、下肢にコンパートメント症候群が生じたり(下肢がパンパンに張ってしまい、強い痛みが生じる)、膝から下の下腿が壊死しまったりすることも懸念されます。
また、膝関節の機能が著しく損なわれることもあり、歩行がうまくできない、正座ができないなど、通常の日常生活にも支障が生じることもあります。
検査・診断
膝関節脱臼の検査・診断では、膝のレントゲン写真を撮影して膝関節における骨の位置関係がずれていることを確認します。さらに、超音波検査を用いて膝関節の状態を確認することもあります。
また、レントゲン検査や超音波検査は、診断の際に用いられるだけではなく、治療の効果を評価するために施行されることもある検査です。
治療
程度に応じて保存療法や手術療法がそれぞれ検討されます。軽度の場合は、骨の位置関係を徒手的に整復した後、シーネやギプス、リーメンビューゲル装具などを用いて固定する保存療法が選択されます。
脱臼の程度が強い場合には、保存療法で充分な治療効果を得ることができないこともあります。その際には、手術による治療介入も検討されます。
膝関節脱臼は、外傷として生じることがある一方、まれではありますが生まれながらにして脱臼していることもあります。その場合は、股関節脱臼やそのほかの症候群、髄膜瘤などに関連して発症することもあり、全身の確認をしっかり行い、必要に応じて膝以外に対しての治療介入を検討します。
医師の方へ
「膝関節脱臼」を登録すると、新着の情報をお知らせします